
なぜ増える?長期休職・再休職の理由 と影響、産業医と進める正しい復職支援
長期休職や再休職についてこんなお悩みはありませんか?
「休職が長引く背景には何がある?」
「メンタルヘルス不調による再休職をしている従業員が復職を希望する場合、どのような支援が適切?」
「復職した従業員は、元の部署に戻すべき?本人の状態が分からず、以前と同様に仕事をまかせて良いのか、どのような配慮が必要か分からない。」
「長期休職や再休職への対応が複雑で、時間もかかる。どのように支援するのが良いのか」
「職場に長期休職や再休職の従業員がいる際、産業医とどのように連携して支援を進めればよい?」
本記事では、長期休職および再休職に至る理由、それらがもたらす影響、長期休職と再休職を減らすために産業医と協働して行う復職支援についてご紹介します。
目次[非表示]
長期休職の理由
労働者が長期間(一般的に1ヶ月以上)にわたり仕事を休止する背景には、健康上の問題が深く関わっています。これらの問題には、「身体的な病気やケガの治療」と「メンタルヘルス不調」の主に2つがあります。
身体的な病気治療・ケガ(身体疾患)
かつては「病気=退職」となるケースも少なくありませんでしたが、近年は、病気を抱えながらも就労を希望する人が92.5%といわれています(※1)。近年の医療技術の進歩や「治療と仕事の両立支援」に関する公的なガイドラインの整備により、休職期間を設けて治療に専念できるように企業の取り組みも求められています。
詳しくは下記をご参照ください。
【相談事例あり】治療と仕事の両立を支援するために企業ができること | ピースマインド株式会社
従来より、仕事と両立しての治療が可能になった一方、治療方針の変更に伴い、当初の予定より治療期間が長期になるケースもあります。
メンタルヘルス不調(精神疾患)
近年、長期休職の理由としてうつ病や適応障害などのメンタルヘルス不調が注目されています。厚生労働省による「令和6年労働安全衛生調査(※2)」によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休職、または退職した労働者がいた事業所の割合は12.8%であることが分かっています。令和3年度以降10%を超えています。これらは、職場の人間関係、業務量の過重、役割の過度なプレッシャーといった環境要因に、個人のストレス対処や状況変化などが複合的に影響して発症すると考えられており、再発率も高いといわれています。
メンタルヘルス不調によって再休職に至る背景
再休職に至る主な理由
「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究(※3)」では、メンタルヘルス不調によって休職し、復職後の累積再病休率について、復職日から6ヶ月で19.3%、12ヶ月で 28.3%、24ヶ月で 37.7%、5年で 47.1%と示されています。また、復職後1年の再病休の発生割合は57.4%といわれています。再休職が起こる背景には、疾患そのものの性質に加え、復職後の心理的変化や環境とのミスマッチなど、複合的な要因が存在します。
詳しくは下記をご参照ください。

1.疾患の特性による再発(医学的要因)
メンタルヘルス不調は、症状が一時的に回復したように見えても、再発するリスクが比較的高い疾患であるとされています。主治医から就業可能の診断を受けて復職した場合でも、脳の機能やストレスへの耐性が完全に元の状態まで回復しきっていないケースがあります。この段階で、以前と同じ水準の負荷がかかると、症状が再燃し、結果として再度休職を余儀なくされてしまいます。
2.復職後のモチベーション低下と心理的葛藤(心理的要因)
復職後に生じる「意欲の低下」や心理的なギャップも、再休職の大きなトリガーとなります。復職した労働者は、「周囲に遅れをとってしまった」という焦燥感や、「またできなくなってしまうのではないか」という強い不安を抱えがちです。また、再発防止のために業務量や責任を軽減する措置が取られることが一般的ですが、これが長期化すると「自分は組織に貢献できていないのではないか」という無力感に繋がることがあります。このような心理的ストレスから仕事に対するモチベーションが著しく低下し、結果として集中力の欠如や疲労感の増大を招き、再び心身のバランスを崩して休職に至るというケースもあります。
3.職場環境とのミスマッチ(環境的要因)
復職を受け入れる側の体制や、復職前後のコミュニケーション不足が原因となるケースです。休職に至った根本的な原因(過度な業務量や、特定の人間関係など)が解消されないまま元の職場に復帰した場合、同じストレス源に直面することで再発のリスクが極めて高くなります。また、周囲の理解不足から「配慮」と「過少な評価」のバランスが崩れ、孤立感を深めてしまうことも要因の一つです。
長期休職と再休職による影響

1.労働者個人への影響
休職が長期化・反復化することは、キャリアや心理面、ひいては人生設計そのものに大きな影を落とすリスクがあります。
・パフォーマンスやモチベーションの低下
長期間現場を離れることで、業務感覚やスキルの低下が生じます。再休職を経験すると「自分はもう働けないのではないか」という自己効力感の喪失や、仕事に対する著しい意欲の低下を招きやすいと考えられます。
・経済的・社会的損失
休職期間中は傷病手当金などの公的保障が支給されるものの、基本給や賞与の減少により経済的な不安が増大すると考えられます。社会や組織とのつながりが絶たれることで、特有の孤立感や焦燥感が生じていきます。
2.企業(組織)への影響
従業員の長期休職や再休職は、経営や現場のマネジメントにおいて無視できないコストとリスクを生じさせます。
・現場の業務負荷増大と士気の低下
休職者が発生した部署では、残されたメンバーがその業務をカバーせねばならず、一人あたりの業務量が一時的または慢性的に増加します。これが常態化すると、周囲の従業員も疲弊し、職場全体のモチベーション低下や連鎖的な休職につながる恐れがあります。
・人的コストおよび採用・育成コストの損失
企業は、休職期間中も社会保険料の会社負担分を支払い続ける必要があります。さらに、再休職によって最終的に退職に至った場合、それまでにかかった採用・育成コストが損失となるだけでなく、新たな人員を確保するための採用費用や教育コスト(代替コスト)が追加で発生してしまいます。
・組織の生産性低下
業務の属人化が進んでいる職場ほど、特定の労働者が長期離脱した際のダメージは大きく、チームや部門全体のパフォーマンス(生産性)が大きく低下するといえます。
産業医との関わり、活用方法
長期休職や再休職を防ぎ、労働者が円滑に職場復帰を果たすためには、医学的見地から適切な助言を行う「産業医」との連携が不可欠です。この章では、産業医が果たす本来の役割と、メンタルヘルス不調による休職において、企業や労働者がどのように産業医と協働すべきかについて解説します。
産業医が果たす本来の役割と主治医との違い
産業医は、労働者の健康管理や職場の環境改善について、専門的な立場から指導・助言を行う医師です。治療や回復を主目的とする「主治医」と、企業側の「産業医」とでは、果たすべき役割や視点が明確に異なります。

1.目的の違い
主治医が「日常生活の維持や回復」を目指すのに対し、産業医は「労働者が企業の環境下で安全かつ健康に働けるか」を客観的に判断します。
2.情報源の違い
主治医の判断は主に社員本人からの自己申告によるため、職場の詳しい業務内容や負荷までは把握しきれないケースが少なくありません。一方、産業医は人事や現場の上司と連携し、現場でのパフォーマンス、困りごとなどを総合的に踏まえることができます。
3.産業医の主な役割・業務
・休職時や復職時における面談の実施
・本人の健康状態と職場の実態に基づいた「就業判定」(復職の可否、勤務制限の必要性などの意見書作成)
・職場巡視や過重労働者への面談を通じた、現場の労働環境の改善提案
産業医の「できること・できないこと」と認識ギャップの解消
実務においてしばしば課題となるのが、「産業医ができること(職務範囲)」に対する、人事や現場との認識のギャップです。人事や管理職側からすると「産業医の先生なら、もっと踏み込んだ対応をしてくれるはず」「復職プランの細かい実務調整まで全てお任せしたい」と考えがちですが、産業医の役割はあくまで医学的見地からの「助言・指導」であり、最終的な就業上の決定(配置転換や、社内ルールの適用、現場の業務割り振りなど)を行う権限(決定権)は、事業主(人事や経営層)にあります。このように産業医ができることとできないことの範囲があるため、人事だけで抱え込んだり、産業医1人に依存したりすると、特定の担当者に大きな皺寄せが行く原因になると考えられます。
産業保健スタッフや外部EAPの活用による連携強化
この認識ギャップを埋め、実務を円滑に回すためには、産業保健スタッフや外部のEAP(従業員支援プログラム)、専門機関を間に介在させることが極めて効果的です。
1.産業保健スタッフの役割
産業医が提示した「段階的な復職プラン」のベースを基に、人事や現場の管理職との細かな実務調整、本人への丁寧なヒアリングなど、実務の橋渡しを行うことで、産業医と人事の負担を軽減します。
2.外部EAP・専門機関の役割
特に小さな職場や、がん・メンタル不調といった個別性の高いケースの対応に不慣れな場合、外部のEAPや行政の相談窓口(地域産業保健センター等)
を入れることで、情報の整理や会社への伝え方のサポートを受けられ、適切な連携体制の構築をスムーズにします。
一般的な休職とは異なるケースにおける産業医との協働
骨折や急性の身体疾患といった「一般的な休職」では、治癒のプロセスが明確であり、復職判断も比較的容易です。しかし、がん、脳卒中、そしてメンタルヘルス不調などの「目に見えにくい症状」や「再発しやすい休職」においては、産業医を含めた多角的な協働が不可欠となります。
以下に、産業医との協働例を紹介します。
1.三者間(主治医・産業医・人事労務)の架け橋としての活用
メンタルヘルス不調などの復職時によく起こるのが、主治医の「日常生活が送れるので復職可能」という診断と、企業側の「休職前と同じ業務(残業や出張など)をこなせるか」という期待のギャップです。
〈具体的な協働方法〉
企業側は「就業可能」の一言が書かれた診断書のみを見るのではなく、厚生労働省の様式などを用いた「勤務情報提供書(チェックリスト等)」を活用し、具体的な業務内容や負荷(外出頻度、残業時間、通勤状況など)を主治医に定量的に提示します。その上で得られた主治医の意見をベースに、産業医がビジネスの現場に即した形(例:「残業免除、時差出勤であれば就業可能」など)に言い換え、企業と労働者の双方が納得できる現実的な配慮事項を考えていきます。
例えば…
メンタルヘルス不調や脳卒中から回復後の復職では、現場の管理職がどこまで仕事を任せていいのか迷い、過剰に配慮して孤立させたり、逆に焦って初手から負荷をかけすぎたりするリスクがあります。
このようなリスクに対して、三者はどのように協働すると良いでしょうか?
①復職前:業務内容について
管理職は、復職者が行う予定の具体的なタスクリスト(例:デスクワークのみ、定型業務、1日4時間勤務など)を産業医に提示します。それにより、産業医は医学的見地から「この作業は認知負荷が高いので、復職2ヶ月目からにしましょう」といった具体的なアドバイスができます。
②復職後:定期面談による調整
復職後、管理職は「本人が『大丈夫』と言っているが、夕方になるとミスが増える」「表情が暗い」といった現場でしか見えないサインを産業医にフィードバックします。産業医はそれをもとに復職面談を行い、就業制限の延長や緩和を柔軟に判断します。
2. 段階的な復職プラン(両立支援プラン)の協働策定
復職直後に過度な負荷をかけたり、逆に過少な業務による無力感からモチベーション低下を招いたりすることは、再休職の大きな引き金となります。
〈具体的な協働方法〉
産業医・人事・本人の三者および産業保健スタッフで、「段階的復職プラン」を策定します。例えば、メンタルヘルス不調であれば「試し出勤・通勤訓練」を取り入れたり、「最初は週3日・半日勤務から始め、1ヶ月ごとに負荷を戻していく」といった具体的なステップについて、事前に合意します。現場が実現可能な配慮をあらかじめ産業医にインプットしておくことで、より精緻で現実的な計画が作成できるといえます。
3.復職後の定期面談による「予兆」の早期発見とフォローアップ
復職はゴールではなくスタートであり、再休職を防ぐためには復職後の事後フォローが重要です。
〈具体的な協働方法〉
復職後も3ヶ月〜半年間は、月に1回程度のペースで定期的に産業医面談を設定しましょう。本人や現場の上司が「問題ない」と判断していても、産業医が客観的に診ることで、睡眠不足や疲労の蓄積、判断力の波、焦りといった「再発のサイン・予兆」を早期に察知することができます。これにより、業務量の再調整や、万が一安全上の懸念が大きい場合の「再休職」といった選択肢も含め、先手を打った適切な対応が可能となります。
企業に求められる役割のコントロール
長期休職や再休職への対応は、当事者である労働者の問題、あるいは現場の管理職や人事担当者個人の問題として片付けるものではありません。一部の部署やキーパーソンに負担が集中してしまうと、職場全体の疲弊や、連鎖的な休職といった新たなリスクを招くことになります。重要なのは、「主治医」「産業医」「人事労務」「現場の管理職(キーパーソン)」、そして「外部EAPや産業保健スタッフ」のそれぞれの役割を、企業(組織)が適切にコントロールし、チームとして機能させることです。両立支援や復職支援を「マネジメントの一種」として捉え、組織全体で適切な役割分担と検討プロセスを踏む社内体制を整えることこそ、リスクを抑え、持続的な組織の成長と従業員のエンゲージメント向上へとつながるといえます。
まとめ
近年増加傾向にある長期休職の主因が、身体疾患やメンタルヘルス不調であり、そして復職後の環境のミスマッチや焦燥感から「再休職」に至るリスクがあります。休職・再休職は個人と企業の双方に大きな損失をもたらします。長期休職や再休職を防ぎ、労働者の円滑な職場復帰を実現するためには、企業が産業医や人事、管理職、産業保健スタッフの役割を正しく認識し、1つの職種に負担が集中しないようにコントロールした上で、協働することが大切であるといえます。
ピースマインドの産業保健支援サービス
ピースマインドでは、産業医とEAP(従業員支援プログラム)の連携によってメンタルヘルス対策の強化や産業医をはじめとする産業保健活動の効率化の実現などをサポートする様々なサービスを提供しております。
「産業医との連携をどのようにしたらよいのか分からない」「メンタルヘルス不調者や休職・復職者に対する支援を拡充したいが、現状の産業保健体制では対応する余力がない」といった課題はないでしょうか。
当社の提供するサービスでは、限られたリソースでは対応が難しかった課題に対して、メンタルヘルスに精通した経験豊富な産業医と、企業の人事や産業医との豊富な連携実績がある心理専門職であるEAPコンサルタントがチームとなってご支援いたします。
メンタルヘルスや健康経営への関心は高まっていても、産業医の選任から課題への対応までを自社のみで行うことは難しいと思われます。当社の専門職ネットワークから経験のある産業医と、数多くの実績を持つ当社のEAPコンサルタントが、職場の状況や課題に合わせた最適な産業医の選任から、ソリューション提供までをワンストップでご支援いたします。ピースマインドの産業保健支援サービスを活用して、働く人と職場の「はたらくをよく」してみませんか。
参考文献
※1平成25年度厚生労働省委託事業 治療と職業生活の両立等の支援対策事業













