社会福祉法人 聖隷福祉事業団様

聖隷福祉事業団インタビュー

「人材を育てない限り事業は発展しない」
働きやすい環境をたゆまず追求

社会福祉法人 聖隷福祉事業団様

社会福祉法人 聖隷福祉事業団 理事 常務執行役員 鎌田 裕子 様
聖隷福祉事業団様は、今年で創立90周年を迎えた伝統ある社会福祉法人です。静岡県を中心に全国161施設で1万5000人を超す方々が、保健・医療・福祉・介護サービスを提供されています。当社の従業員支援プログラムやストレスチェックサービス等を採用されるなど、「はたらくをよくする®」ことに早くから着手されました。2017年に「聖隷健康経営宣言」を出されて取り組みを加速させ、経産省の健康経営優良法人に認定されています。詳しいお話を、常務執行役員の鎌田裕子様にピースマインド代表取締役社長の荻原英人が伺いました。

※対談は10月中旬にリモートで行われました。

現場、経営、両者の視点で、「人づくり」を推進

荻原 今年5月で創立90周年を迎えられましたね。おめでとうございます。 貴事業団理事長の経営理念を拝見すると、「人づくり組織へ」と掲げられています。どのような思いが込められているのでしょうか。
鎌田様 当事業団は90年前、数名の若者たちによる結核に苦しむ貧しい人々のお世話を原点に始まり、現在は1万5000人の組織に拡大いたしました。ただ、経営実績を追うだけでは組織は大きくなりません。いい人材を育て、いいサービスを提供してこそ、多くの人に認められる組織になる。つまり、いい人材を育てることが聖隷の事業を発展させると私どもは考えています。
荻原 なるほど。まさに「人づくり」を通じて事業を発展して来られたのですね。
鎌田様 その思いのもと、以前より人材の育成に取り組んでまいりましたが、近年は特に、人材確保の点で課題が多く浮上しています。中でも介護人材の不足は大きな経営課題です。解決策として外国人や高齢者、中途採用者など、多様な人材を積極的に雇用していますが、サービスの質を保ったまま彼女彼らに活躍してもらうには、教育が必要になります。そこで「人づくり組織」への挑戦という形で、検討と実践を続けているわけです。
荻原 良いサービスを維持するために、人材育成に注力され続けていらっしゃるのですね。 具体的にはどのような施策をされていますか。
鎌田様 2016年から人事制度を見直し、2018年に新人事制度を発表しました。策定にあたっては、現場と経営の両方の視点で、本当に必要な人事制度とは何かを洗い出し、骨子を作って進めました。骨子は大きく5つの柱があります。地元で長く働き続けられること、ライフステージに応じた働き方ができること、そして人件費の最適化、処遇格差の是正、がんばっている人が認められるような評価制度をつくることです。
荻原 特に好評な人事制度やキャリア支援策をお教えいただけますか。
鎌田様 1つに研修の充実があります。当事業団は専門職の集団ですが、「専門職・組織人としての育成」をバランスよく実施する必要があります。そこで、職種ごと、年代ごとに研修を用意し、専門職としてステップアップし続ける道筋と経営・管理職を目指す道筋をキャリアパスとして見える化しています。これは採用面でも高い評価を得ています。

女性、男性、障がい者、外国人…。すべての人が安心して活躍できる職場に

荻原 女性活躍も積極的に推進されていますね。「えるぼし認定」の最高ランクを取得されています。
鎌田様 当事業団の事業領域である看護、保健、介護などは女性の多い業種です。専門職の女性職員に長く力を発揮してもらうために、3年間の育児休暇制度や、正職員の身分を継続したまま短時間勤務や週3~4日の勤務を可能にする制度など、ワークシェアできる環境を整えています。また、女性管理職のロールモデルをつくり、職種を問わず役職を目指すことができるような仕組みもつくりました。 職員は患者様の命や利用者様のお世話に向き合っています。職員が不安を抱えることは、仕事面でリスクを背負うことに通じます。安心して働ける仕組みを整えることは、非常に大事です。
荻原 現在、年間育休取得者は720人に上るとか。素晴らしい数です。 制度を整えても、カルチャーとして根付かせるのは難しいものですが、その点はどうされているのですか。
鎌田様 大事なのは職場長の理解だと思います。職場長が職員の抱えている問題を理解し、解決に寄与する制度を提示できたら、職員も安心して制度を利用できます。そこで2019年に「両立支援ハンドブック」をまとめ、職員全員に配布しています。
荻原 一方で、外国人の受け入れや障がい者の雇用などにも積極的ですね。
鎌田様 はい。女性だけでなく、男性も、障がい者も、外国人もすべての人に活躍してもらいたいと考えています。外国人に関しては、経済連携協定(EPA)に基づき、看護・介護人材を受け入れてきました。患者様や利用者様ときちんとコミュニケーションをとりながら仕事をしてもらえるよう、職員として迎え入れ、介護福祉士国家試験合格を目指した学習スキームを用意しています。受入施設と連携し日本語や介護の専門知識を習得できる体制を整備した結果、介護福祉士国家試験合格率は72%となっています。 2017年以降、毎年2桁の人員を介護人材として受け入れています。外国人を迎えることで、仕事を教える日本人職員側も自分たちの仕事を見直せます。また文化や価値観の違う相手を理解する姿勢もできる。これは今後も多様な人材と一緒に働く上で役立ちます。
荻原 多様な人を受け入れることでさらに受け皿が整う。好循環になっているのですね。では障がい者雇用はいかがでしょうか。
鎌田様 各施設の障がい者の雇用を一元化し調整しています。中には人員や業務内容の関係で雇用できない施設もあります。その場合はほかの施設がカバーする。このように事業団全体で雇用を増やし、また雇用できる仕事をつくり出して、現在は障害者雇用率2.4%を達成しています。
荻原 まさに「すべての人」に活躍する場を整備されていることがうかがえます。
聖隷福祉事業団様_両立支援ハンドブック

聖隷福祉事業団様の「両立支援ハンドブック」

ストレスチェックの結果を職場改善に生かす

荻原 健康経営についてもお聞かせください。貴事業団は2018年に社会福祉法人としては全国で初めて健康経営優良法人に認定され、以降、現在まで続けて認定されています。
鎌田様 2017年に「聖隷健康経営宣言」を発信し、がん罹患率を下げること、病気離職をなくすこと、メンタル不全を早期発見・対応することなど、宣言に従って1つ1つ継続的に取り組んだ結果の認定です。 メンタル不全については、事業団で統一のガイドラインをつくって、早期受診や再発防止、復職支援を行う体制を整えています。 また、メンタルヘルスの不調の事例を、職場の問題点に気付かせてくれるものととらえ、状況をよく聞き取り、現場の改善に役立てるようにしております。
荻原 これも素晴らしいお取り組みですね。
鎌田様 ピースマインドさんにご協力いただいているストレスチェックで、高ストレスと分かった職員への対応も、組織を上げて実践していますよ。
荻原 ありがとうございます。貴事業団では2016年度から当社のストレスチェックを導入されました。受診率が毎年上昇し、2020年度は95.2%になっています。どのように工夫されているのでしょうか。
鎌田様 なぜストレスチェックが必要なのか、現場に落とし込むことが大切だと思っております。私が委員長をしているメンタルヘルス推進委員会という組織があり、その事務局もがんばって各職場に理解してもらっています。

荻原 ストレスチェックの後には、自ら手を挙げられた事業所で職場改善を行っておられますね。どこの企業様も、こうしたことに興味を持つ部門と持たない部門の温度差にご苦労されています。その点はいかがでしょうか。
鎌田様 興味を持たない事業所を、いかにやる気にさせるかがキーだと私も思っております。そこでメンタルヘルス推進委員会が働きかけ、課題などを提出してもらっています。また問題があれば各関係者が共有し解決に向かい、問題が起こりにくい仕組みづくりをする。このようなディスカッションが、風土の醸成につながると思っています。
荻原 なるほど。ところでストレスチェックの結果として、貴事業団は「働きやすさ」を偏差値で示し、重視しておられますね。
鎌田様 やはり、働きやすさは職員にとって一番大事だと思います。職員は1日のうちの大半を仕事に費やしてくれている。その環境がよくなければ、いい仕事はできないし人材が離れていってしまう。だからこそ、働きやすさを求め続けたいと思います。

100周年に向けて。職員一同、相互理解で「いい仕事」を追及し続ける

荻原 今回のコロナ禍で、保健、医療、福祉、介護分野の最前線の現場では、多くのご苦労やチャレンジがおありだったのではないでしょうか。
鎌田様 そうですね。当事業団にとってもコロナ禍は大きな打撃でした。病院では急性期医療を中断させずにコロナ患者様の病床をどう確保するか、介護施設ではいかにウイルスを現場に持ち込まないか、ハイスピードマネジメントが必要でした。物的資源も不足し、また人間ドックのキャンセル、内視鏡検査の中止などで経営的にも苦しくなりました。医療者が誹謗中傷の対象になったことも現実としてありました。そういう、歯を食いしばっている人たちを支え抜こうと、オール聖隷で走りながら、いまに至っているという状況です。
荻原 大変なご苦労だったと思います。職員の皆様のメンタルを支えるという点では、当社もサポートできましたら幸いです。さて、10年後には創立100周年を迎えられます。今、改めて「はたらくをよくする®」をどうお考えでしょうか。
鎌田様 相互理解と、それを仕組みに落とすことが欠かせないと思います。ただ経営が不安定ではいい仕事ができません。経営基盤の安定も図ってまいります。 組織が大きくなると課題も増えます。でも流されずに、「作業」ではなく「いい仕事」をすることを、職員一同、追求し続けます。
荻原 「人づくり組織」という事業団の経営理念を、本当に丁寧に実践しておられることがよくわかりました。本日はありがとうございました。
鎌田 裕子(かまた ゆうこ)様 プロフィール
社会福祉法人 聖隷福祉事業団 理事 常務執行役員
聖隷三方原病院などで看護師として勤務後、聖隷福祉事業団法人本部で人材開発部長などを歴任。2017年1月から常務執行役員。2019年6月から理事。

社名

社会福祉法人 聖隷福祉事業団

 

事業内容

  • 医療事業(病院・診療所・ホスピスなど)
  • 保健事業(健康増進・健康診断・人間ドック・疾病予防・労働環境測定など)
  • 福祉事業(特別養護老人ホーム・身体障がい者支援施設・救護施設・無料または低額診療・保育事業・有料老人ホーム事業など)
  • 介護サービス事業(介護老人保健施設・通所事業・訪問看護ステーション・在宅訪問事業など)

 

設立

1930年5月

 

従業員数

15,934名(2020年10月現在)

 

URL

http://www.seirei.or.jp/

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