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組織レジリエンスはどう可視化する? 変化に強いチームの指標を考える

組織レジリエンスは「危機に強い会社」という抽象論で語られがちですが、実務では変化や想定外の出来事で業務や人の状態が揺らいだときに、パフォーマンス・意思決定・連携といった組織の機能を立て直し、元の水準に戻す力を含めて捉えます。つまり、組織レジリエンスとは「変化の中で成果を維持し、回復し、学習して次に活かす力」といえるでしょう。

本記事では、レジリエンスが高い組織の特徴、レジリエンスが見えにくい理由から可視化のための設計、レジリエンスを高めるためのポイントをお伝えします。

目次[非表示]

  1. 1.レジリエンスが高い組織の特徴
    1. 1.1.変化への適応力と意思決定のスピード
    2. 1.2.心理的安全性が支える「対話」と「学習」のレジリエンス
  2. 2.なぜレジリエンスは見えにくいのか
    1. 2.1.成果指標だけでは捉えきれない理由
  3. 3.組織レジリエンスを可視化するための考え方
    1. 3.1.個人・チーム・組織の3階層で捉える
    2. 3.2.結果ではなくプロセスに着目する
    3. 3.3.定量と定性を組み合わせる視点
  4. 4.既存指標との違い(ウェルビーイング・エンゲージメントとの関係)
    1. 4.1.補完関係としてどう活用するか
    2. 4.2.ウェルビーイング指標との違い
    3. 4.3.エンゲージメント指標との違い
  5. 5.組織レジリエンスを高めるための実務ポイント
    1. 5.1.管理職の関わり方(対話と支援)
    2. 5.2.心理的安全性の醸成
    3. 5.3.振り返りと学習の仕組みづくり
  6. 6.よくある質問
    1. 6.1.Q1. 組織レジリエンスは本当に数値化できますか?
    2. 6.2.Q2. どの指標から始めるのが現実的ですか?
    3. 6.3.Q3. ウェルビーイングやエンゲージメントと重複しませんか?
    4. 6.4.Q4. 数値化すると現場が萎縮しませんか?
    5. 6.5.Q5. レジリエンスを高める最初の一手は?
  7. 7.まとめ|シビリティが支える働きやすい職場

レジリエンスが高い組織の特徴

変化への適応力と意思決定のスピード

レジリエンスが高い組織は、通常業務が揺らぐほどの想定外の出来事が起きたときの立て直しが早いという特徴があります。具体的には、まず状況と論点を手早く共有し、次に「今最優先とすること」を決め、役割やリソースを組み替えて対応することで実現されます。このようなリカバリーの速さは、仕組み+自律性がもたらす効果であることが明らかになっています。

組織レジリエンスの国際規格であるISO 22316では、組織レジリエンスを「
不確実な状況でも、組織が目的を見失わずに動き続ける力」として定義しています。具体的には、変化が起きた際、迷いを最小限に、それぞれが役割のもと自律的に行動し、結果として組織として必要な対応ができていることと言えるでしょう。

要素としては、「誰が判断するかが明確」「何を優先するかが共有されている」「状況を事実・データで把握して意思決定できる」といった運用が整っていることが一つです。(※1)

それに加えて、通常時から緊急時に必要となるスキルセットを用いた業務遂行が行われているからこそ、いざという時に力を発揮することができるといえます。

つまり、組織レジリエンスは「運用が整っているだけ」で成立するのではなく、
仕組みを回し続ける設計と、人がそれを使いこなせるように育てる継続的な取り組みによって機能する力だ、という点がポイントです。

心理的安全性が支える「対話」と「学習」のレジリエンス

変化に強い組織は、難しい局面であるほど「対話の量と質」を維持することができます。日常的に、心理的安全性が担保された環境で、メンバーが違和感や問題の兆しを共有し、組織としてそれらの課題に向き合い早期に軌道修正することで培われるスキルです。その結果、組織全体で経験する「情報共有 ➔ 判断 ➔ リカバリー ➔ 学習」のサイクル自体の数が多くなり、組織としてのレジリエンス強化へとつながります。(※2)

同時に、レジリエンスが高い組織では、上記サイクルから学んだ失敗を「次の改善」へと繋げることができます。ここでも鍵となるのが心理的安全性です。責任追及が先行する職場では失敗が隠蔽され、組織の学びになりません。一方で、心理的安全性がある職場では、発生した事象を「個人の資質」ではなく「仕組みの不備」として捉え、建設的な改善策に落とし込みやすくなります。

なお、心理的安全性は単なる「優しい職場」と同義ではありません。問題の指摘が歓迎され、必要な対話が徹底される環境であるため、短期的には厳しい議論を生むこともあります。しかし、そのプロセスを経てこそ組織の学習は加速し、結果として迅速な回復と立て直しが可能になります。


なぜレジリエンスは見えにくいのか

成果指標だけでは捉えきれない理由

レジリエンスとは、売上や納期達成率といった「結果そのもの」ではなく、結果が揺らいだ局面において「状況を把握し、判断し、立て直し、学びを次に反映する動き方」に関するスキルです。

例えば、業績好調なA部署と、業績不調なB部署があります。両部署はともに、半年後に「外部環境の大激変」という荒波に直面することになります。

A部署の業績好調は、実力派部長の優れた采配によるものでした。メンバーの中には環境変化の兆候を察知していた人もいましたが、「部長の機嫌を損ねたくない」という心理から、その情報が共有されることはありませんでした。その結果、半年後に環境が変化した途端に意思決定が遅れ、現場の混乱を収束できずに大きな失速を招いてしまったのです。

一方、B部署は業績不調であったものの、組織全体で課題を共有し、忌憚のない議論を交わせる風土がありました。そのため、メンバーから変化の兆候が素早く共有され、優先順位の変更や役割・リソースの再配分に柔軟に対応できました。その結果、半年後には見事な巻き返しを図ることができたのです。

半年前の時点では、A部署の方が「良い組織」に見えたかもしれません。しかし、想定外の事態において真価を発揮したのはB部署でした。この局面を打開する組織力こそが、まさにレジリエンスです。だからこそ、組織レジリエンスを短期的な指標だけで測ることは難しいといえます。

組織レジリエンスを可視化するための考え方

個人・チーム・組織の3階層で捉える

組織レジリエンスを可視化するためには、単に個人のレジリエンスを向上させるだけでなく、チーム、組織として必要なスキルセットを整理し、設計することが求められます。

個人:回復力・ストレス対処スキル(ただし個人責任にしない)

チーム:相互支援・対話・心理的安全性

組織:意思決定・権限設計・資源配分・学習の仕組み

この3階層のどこが弱いかで、打ち手が変わります。

結果ではなくプロセスに着目する

組織の「レジリエンス」数値化で押さえたいのは、離職率・欠勤率などの結果指標だけでは不十分である、という点です。可視化の中心は、次のようなプロセス指標に置きます。

RAG(Resilience Analysis Grid)という指標は、以下の4つの能力でプロセスを整理する枠組みです。(※3)

  1. 兆しを拾えるか(モニタリング)
  2. 先読みできるか(予見)
  3. 動けるか(対応)
  4. 学べるか(学習)

定量と定性を組み合わせる視点

レジリエンスの評価において、定量的なアプローチのみでは形骸化を招きやすく、定性的なアプローチのみでは単なる精神論に終始しがちです。例えば、指標としての「対話頻度」が高くても、その実態が責任追及の場であれば組織にとっては逆効果となります。したがって、定量データによって変化の兆候を捉えつつ、定性的なアプローチによってその「質」を補完する設計が必要です。

例えば、定量的な指標は月次または四半期周期で定点観測を行い、定性的な側面は大型障害、重大なクレーム、組織改編などの重要イベントが発生後に、短期の振り返りを実施して検証するといった方法です。

客観的な数値への落とし込みについては、EAPの人事管理職相談をご活用いただくことで、可視化のプロセスを専門コンサルタントと整理することが可能です。

既存指標との違い(ウェルビーイング・エンゲージメントとの関係)

また、多くの組織では、すでにウェルビーイングやエンゲージメントといった多角的な指標が導入されているのではないでしょうか。ここに「レジリエンス指標」を加える場合には、改めて各指標の定義の違いを理解し、それらを組み合わせた具体的な活用方法について検討する必要があります。

補完関係としてどう活用するか

実務では、ウェルビーイングとエンゲージメントは「平時の状態」を捉え、レジリエンスは「変化局面の動き方」を捉えると補完関係になります。

例えば、ウェルビーイングが下がり、エンゲージメントも下がっているときは、レジリエンス指標(相談行動、意思決定の詰まり、学習の停滞)を見て、どこで詰まっているかを特定し、改善施策につなげる、という使い方ができます。

ウェルビーイング指標との違い

ウェルビーイングは、心身の健康や生活の質を含む広い概念で、職場ではストレス反応・睡眠・満足度などが指標になりやすい領域です。一方、レジリエンスは「不確実性の中で機能し続ける能力」に焦点があり、回復と学習のプロセスをより重視します。

つまり、ウェルビーイングは「コンディションの状態」、レジリエンスは「揺らぎに対する動き方」と整理すると違いが明確になります。

エンゲージメント指標との違い

エンゲージメントは、仕事への活力・熱意・没頭などの前向きな関与を測る指標として普及しています。一方、レジリエンスはショックや不確実性の局面で、組織がどれだけ機能を維持し回復できるかに焦点があります。

エンゲージメントが高いからレジリエンスが高いとは限りません。勢いがあるが無理をしている組織では、ショックで崩れやすいことがあります。


組織レジリエンスを高めるための実務ポイント

最後に、組織レジリエンスを高めるためのポイントをお伝えします。当社では、レジリエンス向上を目的とした研修を実施しています。当社のアプローチについて詳細を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

管理職の関わり方(対話と支援)

レジリエンスは、管理職の「問い方」と「支援の設計」で大きく変わります。重要なのは、問題が起きたときに犯人探しをせず、事実と学びに落とすことです。

例えば、トラブル後の1on1や振り返りで「何が起きたのか?」「どこで詰まったのか?」「次は何を変えることができるか?」と整理し、具体的な支援を検討することで、チームの回復力を高めることができます。

心理的安全性の醸成

心理的安全性とは、「罰や拒絶を恐れることなく、懸念や異論を率直に口にできる状態」を指します。

具体的には、会議での質問・反対意見を歓迎する文化、ミスを感情的に責めない姿勢、そして早期相談を評価するマネジメントといった日々の運用が、組織のレジリエンスの強化に繋がります。現場の「違和感」が躊躇なく共有される環境こそが、トラブルが小さいうちに芽を摘み、組織の機能を迅速に立て直すための不可欠な基盤となるといえるでしょう。

振り返りと学習の仕組みづくり

最後は、学習の仕組みです。重大トラブルだけでなく「小さなヒヤリ」でも振り返る簡単なAAR(After Action Review)を回すことで学習のサイクルを多く経験することができます。


よくある質問

Q1. 組織レジリエンスは本当に数値化できますか?

A. 売上のように単一指標で測るのは難しいですが、プロセス(モニタリング・予見・対応・学習)を先行指標として、複数指標のセットで可視化することは可能です。

Q2. どの指標から始めるのが現実的ですか?

A. まずはチームの対話と学習(心理的安全性、振り返り実施、相談行動)から始めると、現場の改善が起きやすいです。数値化が難しい場合は、1〜5の成熟度評価でも構いません。

Q3. ウェルビーイングやエンゲージメントと重複しませんか?

A. 重複は一部ありますが、焦点が違います。ウェルビーイングは状態、エンゲージメントは関与、レジリエンスは変化局面の回復と学習です。補完関係として使うと整理しやすくなります。

Q4. 数値化すると現場が萎縮しませんか?

A. 評価や査定に直結させると萎縮します。目的を「改善の順番を決める」に置き、個人特定を避け、点数の低さを責めない運用にすると機能しやすくなります。

Q5. レジリエンスを高める最初の一手は?

A. 重大トラブルだけでなく、小さな詰まりでも短い振り返りを定例化し、学びを次の運用に落とすことです。学習が回り始めると、他の能力(予見・対応)も強化されます。

まとめ|シビリティが支える働きやすい職場

組織レジリエンスは、成果だけでは見えにくい一方で、プロセスに着目すれば数値化・可視化することが可能です。

具体的には、客観的な数値や事実に基づいて「個人・チーム・組織」の3層の課題を明確化し、組織の強み・弱みを可視化します。これを管理職がしっかりと把握することで、日々のチーム運営に直接役立てることができます。

ポイントは、「モニタリング・予見・対応・学習」の4能力を軸に指標を設計し、定量と定性を組み合わせて改善サイクルを回すことです。ウェルビーイングやエンゲージメントと補完関係で扱い、弱い領域から具体的な施策に落とし込んでいくことで、変化に強いチームづくりへとつながります。


参考文献
※1:ISO(2017),ISO 22316:2017 Security and resilience — Organizational resilience — Principles and attributes
※2:Edmondson, A.(1999),Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams
※3:Resilience Engineering Institute(2017),Resilience Analysis Grid

ピースマインド コンテンツ作成チーム
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