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ストレスチェック制度とは?法改正の動向と企業に求められる対応を解説

ストレスチェック制度は、メンタルヘルス不調の「一次予防」を目的に、労働安全衛生法に基づいて運用される仕組みです。これまで実施義務は「常時50人以上の労働者を使用する事業場」に限られ、50人未満は当分の間努力義務でしたが、厚生労働省は2025年5月公布の改正労働安全衛生法により50人未満にも義務化されました。

本記事では、ストレスチェック義務化の範囲、実施フロー、罰則と未実施リスク、制度見直しの議論、実務ポイント、形骸化を防ぐ改善サイクルまでを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.ストレスチェック制度とは何か
    1. 1.1.制度の目的と背景 -労働安全衛生法における位置づけ-
    2. 1.2.なぜストレスチェックが求められているのか
  2. 2.ストレスチェック制度の概要と実施義務
    1. 2.1.対象企業と義務化の範囲
    2. 2.2.実施の基本フロー「実施・分析・対応」
    3. 2.3.未実施や形骸化のリスク
  3. 3.最新の法改正と制度見直しの動向
    1. 3.1.2025年改正法の全体像:何が、いつ変わるのか
    2. 3.2.法改正の背景:なぜ「受検」から「職場改善(活用)」へ軸足が移るのか
    3. 3.3.企業に求められる今後の対応
  4. 4.ストレスチェックの実施方法と実務ポイント
    1. 4.1.【準備・実施】受検率を左右する「調査票の選定」と「環境整備」
    2. 4.2.【選定・対応】最大の壁「面接指導の申し出が出ない」を防ぐ導線設計
    3. 4.3.【情報管理】トラブルを未然に防ぐ「個人情報保護」の厳格な運用
  5. 5.ストレスチェックを機能させるためのポイント
    1. 5.1.心理的安全性を担保した実施運用
    2. 5.2.相談体制(EAP・産業医)の整備
    3. 5.3.継続的な改善サイクルの構築
  6. 6.よくある質問
    1. 6.1.Q1. ストレスチェック義務化はいつから始まりましたか?
    2. 6.2.Q2. 50人未満の事業場は本当に義務化されたのですか?
    3. 6.3.Q3. 受検しない従業員がいても問題になりますか?
    4. 6.4.Q4. 高ストレス者の面接指導が形骸化しがちなのはなぜ?
    5. 6.5.Q5. 集団分析は必須ですか?
  7. 7.まとめ
  8. 8.ピースマインドのストレスチェックサービス

ストレスチェック制度とは何か

制度の目的と背景 -労働安全衛生法における位置づけ-

ストレスチェック制度は、働く人の心理的負担の程度を把握し、本人の気づきを促し、必要な面接指導や就業上の措置につなげることで、メンタルヘルス不調を未然に防ぐこと(一次予防)を目的とした制度です。単なるアンケートではなく、労働安全衛生法に基づく「健康確保の仕組み」として、個人情報の扱い、実施者の範囲、結果提供の同意などが厳密に定められています。

なぜストレスチェックが求められているのか

ストレスチェックが求められる背景には、メンタルヘルス不調の増加と、職場要因が複雑化している現状があります。過重労働だけでなく、役割の曖昧さ、在宅勤務の孤立、対人摩擦、顧客対応の複雑化など、ストレス要因が多層化しています。

制度の意義は、「不調になった人を見つける」だけではありません。ストレスチェックは、個人の状態に加えて、集団分析で「職場のどこに改善余地があるか」を可視化できる点が強みです。言い換えると、ストレスチェックは健康管理だけでなく、組織の改善活動(業務配分、管理職支援、相談体制整備など)に接続できる経営資源でもあります。さらに、「健康経営」を推進するうえでも、課題をデータで把握し、改善サイクルを回すための基盤として重要です。

健康経営にストレスチェックを活かす方法については以下記事をご覧ください。

ストレスチェック制度の概要と実施義務

対象企業と義務化の範囲

ストレスチェックは2015年から、労働者数50人以上の事業場で実施義務として運用され、50人未満は当分の間努力義務とされてきました。これについて厚生労働省の検討会「中間とりまとめ」では、50人未満への義務化の検討とセットで「集団分析・職場環境改善」を制度の柱として位置づけ、現状は集団分析・職場環境改善が努力義務である一方、義務化の是非も含めて議論されていることが示されています。(※1)

50人未満の小規模事業場で最大のボトルネックになるのは、コストと実施者(医師・保健師等)の確保です。産業医の選任義務がない事業場も多いため、外部の医師や専門機関の活用を前提に体制設計するのが現実的になります。国が提供するインフラとして、労働者数50人未満の事業場を対象に産業保健サービスを無料で提供する地域産業保健センター(地産保)があります。まずは、医師による面接指導などの具体的な対応も含めて、実務の進め方を相談・依頼するとよいでしょう。(※2)

また、費用面では、団体等を通じて産業保健サービス提供費用の一部を助成する団体経由産業保健活動推進助成金など、国の助成制度を活用することも重要です。

実施の基本フロー「実施・分析・対応」

実務の流れは、大きく「実施」「分析」「対応」の3段階に分かれます。

まず実施では、調査票を用いて年1回以上定期的に受検機会を提供し、結果を本人へ通知します。業務時間内に短時間で受けられるよう、業務時間内の受検時間確保、端末の準備、紙・Webの使い分けといった工夫をすることで受検率を高め、より正確な実態把握に繋げることができます。

後工程では、個人へのアプローチと組織へのアプローチに分けて考えます。

まず個人へのアプローチとしては、高ストレス者が面接指導を申し出た場合に医師面接指導を行い、必要に応じて就業上の措置(業務量の調整、配置の見直し、休養の確保など)につなげる必要があります。

一方で組織へのアプローチとして、集団分析によって部署・職種ごとの傾向を把握し、職場課題の仮説を立てたうえで職場環境改善(業務配分やコミュニケーション設計、管理職支援など)を実行します。

つまり、面接指導は「個人のケア」、集団分析・職場改善は「組織の予防と改善」を担うものとして、両輪で運用することが重要です。 制度を“実施して終わり”にしないためには、集団分析→職場改善→検証のサイクルまで含めて「年度計画」に組み込むことが鍵になります。

未実施や形骸化のリスク

ストレスチェック制度では、実施した後に「労働基準監督署への報告」が求められています。労働者数50人以上の事業場では、ストレスチェックの実施状況を所定の様式で報告する義務があり、報告を怠った場合は労働安全衛生法に基づく罰則の対象となり得ます

また、たとえ実施していたとしても、形骸化している場合には、組織にとってのリスクとなることに注意する必要があります。受検者からの「やっても意味がない」「何も変わらない」といった、制度への不信の声が高まることで、受検率や高ストレス者の面接指導申出率の低下に繋がります。結果として、不調が深刻化してから休職・離職として顕在化するなど、組織課題への対応が遅れることがあります。特に「高ストレス者の申出率が低い」「面接指導が形骸化している」場合は、制度が“回っているようで回っていない”サインとして、運用の見直しが必要です。

最新の法改正と制度見直しの動向

2025年改正法の全体像:何が、いつ変わるのか

2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、①ストレスチェックは「50人未満の事業場」まで実施義務が拡大しました。遅くとも2028年5月までには施行されるため、義務化に向けて小規模事業場向けマニュアル整備などの準備が進んでいます。(※3)

また、検討会の中間とりまとめでは、50人未満への拡大とセットで、②50人以上事業場における「集団分析の位置づけの強化(義務化の是非を含む)」や、職場環境改善を進める枠組みが大きな柱として整理されています。

法改正の背景:なぜ「受検」から「職場改善(活用)」へ軸足が移るのか

国が強調しているのは、「ただ受けるだけ」の形骸化を減らし、結果を職場環境改善につなげることの重要性です。ストレスチェックは本来、個人の気づきだけでなく、集団分析を通じて職場の課題を見える化し、改善サイクルを回すための制度として設計されています。

実際に検討会の中間とりまとめでも、制度を受検で止めず、集団分析・職場改善に結びつける方向性が主要論点として整理されています。

背景には、メンタル不調の要因が多層化している現実があります。業務量だけでなく、役割の曖昧さ、対人摩擦、リモートワークの孤立、顧客対応の過度な要求などが重なり、個人対応だけでは限界が出やすい状況だからこそ、ストレスチェックを「健康管理の施策」ではなく、組織改善のインフラとして捉え直す必要があります。

企業に求められる今後の対応

施行に向けて、担当者が押さえておく必要のあるトピックを事業場規模毎にご紹介します。

50人未満(小規模事業場)

まずはできるところから始めることになりますが、社内での実施運用が難しい場合には、外部委託先を検討するとよいでしょう。その際には、国の無料インフラである地域産業保健センター(地産保)に相談することで、どのような資源を活用することができるのか整理することが可能です。

費用面では、団体等を通じて産業保健サービス提供費用の一部を助成する制度があり、「医師、保健師等によるストレスチェックの実施及び集団分析(50人未満のみ対象)」が助成対象として明記されています。該当する団体所属の有無も含めて早めに確認しておくと、導入の現実性が上がります。

50人以上(既に義務対象)

「実施して終わり」から脱し、集団分析・職場改善を回す前提で運用を点検します。まず衛生委員会で、集団分析の実施方法、結果の取り扱い、改善アクションの決め方(責任者・期限・検証方法)を規程・年間計画に落とし込み、必要に応じて外部支援(分析・職場改善支援)も組み合わせるのが現実的です。

ストレスチェックの実施方法と実務ポイント

この章では具体的な実務ポイントをご紹介します。より詳しい内容については、以下資料をダウンロードしてご活用ください。

【準備・実施】受検率を左右する「調査票の選定」と「環境整備」

調査票は、法令上求められる3領域(①仕事のストレス要因、②心身のストレス反応、③周囲の支援)をカバーしている必要があります。運用実績と比較可能性の観点からは、職業性ストレス簡易調査票(57項目)が標準的に用いられ、初めての導入でも設計しやすい選択肢です。

実施方法(Web/紙)は、受検率と運用負荷で選びます。多拠点・シフト勤務が多い場合はWebが便利ですが、端末環境が十分でない現場では紙の方が回るケースもあります。重要なのは、「業務時間内に受検時間を確保する」ことを明確にアナウンスし、受検が“自己都合”にならない設計にすることです。受検の場づくり(短時間で受けられる導線、周知、リマインド)を整えることで、受検率は安定しやすくなります。(※4)

【選定・対応】最大の壁「面接指導の申し出が出ない」を防ぐ導線設計

高ストレス者の選定基準は、衛生委員会等で調査審議し、社内ルールとして明確化します。面接指導は、本人の申出があって初めて実施される仕組みであり、申出を理由に不利益取扱いをしてはならない点は必ず押さえる必要があります。

実務上の最大の壁は「申し出が出ない」ことです。ここを突破する鍵は、面接指導を“治療”や“ペナルティ”ではなく、状況整理と就業調整のための安全な相談の場として伝えることにあります。申出導線を簡単にし(誰に/どう申請するかを最短で)、面接後にどんな支援につながるのか(業務調整、相談先提示など)を見える化すると、心理的ハードルが下がりやすくなります。(※5)

【情報管理】トラブルを未然に防ぐ「個人情報保護」の厳格な運用

ストレスチェックは健康情報を扱うため、個人情報保護が最重要です。法令上の原則として、結果は本人に通知され、本人の同意なく事業者に提供できません。したがって、人事や管理職が個票を“勝手に見られない”仕組み(アクセス権限、保管場所、実施事務従事者の範囲設定)を運用で担保する必要があります。外部委託する場合は、秘密保持・保管・廃棄・再委託可否などを契約で明確にし、情報漏えいリスクを潰します。

また、今後「集団分析」の位置づけがより強まる流れの中では、集団分析を行う際も、個人が特定されない集計単位・扱い方を規程で定め、結果を「評価」ではなく「改善」に使うことを明示することが、受検率や信頼を守るポイントになります。(※6)

ストレスチェックを機能させるためのポイント

心理的安全性を担保した実施運用

ストレスチェックを機能させるには、「結果を責める材料」にしないことが前提です。結果の共有が吊し上げや反省会になると、翌年から受検が形骸化します。

改善が進む職場では、結果を「事実」として扱い、次に「小さく試す改善」を1〜2個に絞り、短いサイクルで検証します。

相談体制(EAP・産業医)の整備

高ストレス者面接指導の導線に加え、日常の相談導線を整えると、早期の手当てがしやすくなります。特に個人結果が通知されるタイミングでは、自身の状態への関心が向きやすくなります。ここで重要なのは「相談先がある」ではなく「迷わず使える」ことです。例えば、高ストレス者ではないが、相談しておきたい事がある場合に、産業医との面談よりも低いハードルで利用できる窓口があることで早期対処に繋がりやすくなります。

具体的には、上司・人事・産業医・EAPなど複数の入口を用意し、相談内容に応じて適切に分岐できるようにします。例えば、休暇・就業ルールといった制度相談は人事、体調相談は産業医、職場で打ち明けづらい悩みはEAP、といった使い分けです。

継続的な改善サイクルの構築

ストレスチェックを改善サイクルとして運用していくためには、次の流れを年度運用として組み込むことがおすすめです。

まず、集団分析結果を「職場課題の仮説」に照らし合わせ、改善アクションを策定します。現場と協力して改善施策を回し、結果を検証することで次年度のストレスチェックに繋げます。

このサイクルが回るほど、ストレスチェックは「義務対応」から「職場改善のインフラ」に変わります。義務化の拡大は負担増に見えますが、運用を整えれば、早期に課題を拾い、深刻化を防ぐための先行投資として機能します。

詳細は以下資料でご覧いただけます。

よくある質問

Q1. ストレスチェック義務化はいつから始まりましたか?

A. 2015年から、労働者数50人以上の事業場で義務化されました。

Q2. 50人未満の事業場は本当に義務化されたのですか?

A. 厚生労働省は、2025年5月公布の改正労働安全衛生法により50人未満の事業場にも義務化される旨を案内しています(施行期日は政令で定める日)。

Q3. 受検しない従業員がいても問題になりますか?

A. 事業者に課せられているのは『受検機会を提供する義務』であり、従業員に『受検を義務付ける法律上の規定』はありません。ただし受検率が低い場合、守秘義務が伝わっていない、受ける時間が確保されていない等の運用課題があることが多く、改善のサインとして扱うのが現実的です。

Q4. 高ストレス者の面接指導が形骸化しがちなのはなぜ?

A. 申出の心理的ハードル(会社に知られる不安、面接後の不利益懸念)と、申出導線の複雑さが主因です。守秘義務の説明、申出の簡素化、面接後の支援(業務調整・相談先提示)まで含めて設計することで改善することができます。

Q5. 集団分析は必須ですか?

A. 現状、集団分析の実施は努力義務とされていますが、ストレスチェックを、面接指導だけでなく集団分析と職場環境改善まで含めた「一連の取組」として進める方向が示されています。厚労省の検討会「中間とりまとめ」でも、集団分析・職場環境改善の活用強化が主要論点であり、「受検」から「活用(職場改善)」へ軸足を移す流れが強まっています。

まとめ

ストレスチェック制度は、メンタルヘルス不調の一次予防を目的に、労働安全衛生法に基づいて運用される仕組みです。厚生労働省は、2025年5月公布の改正労働安全衛生法により50人未満の事業場にも実施義務が拡大したことを明記しており、今後は小規模事業場でも実効性ある体制整備が求められます。義務化対応で差がつくのは、実施そのものではなく、個人情報保護、高ストレス者対応、集団分析から職場改善までを一体で回す運用です。制度を「やるだけ」で終わらせず、心理的安全性と相談体制を土台に、改善サイクルを回すことで、ストレスチェックは“義務”から“職場改善のインフラ”へ進化します。

さらに詳しく知りたい方は、こちらのお役立ち資料もご活用ください。

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ピースマインドのストレスチェックサービス

ストレスチェックの実施や結果分析・活用において、外部サービスを活用すると、よりスムーズな実施や有効な活用をすることができます。

ピースマインドでは、「ストレスチェック義務化法案の対策」「組織の健康リスクの計測」「高ストレス者の把握と適切なサポート」「ストレスチェックの活用」等の様々な課題解決をサポートいたします。

ストレスチェック法制化にも対応しており、ストレスチェックの実施と共に、医師面接指導の支援やそのフォローアップを行う高ストレス者ケアプラン、追加の集団分析や組織ごとの課題解決を行う職場課題解決プラン等のプランをご用意しております。

その他にも、階層に応じた研修・プログラム、ビデオ会議ツールを用いたオンライン研修などもご提供しております。

ストレスチェックをより効果的に活用して、はたらく人全員が笑顔でいきいきと働ける職場を目指しませんか?


<参考文献>

※1 厚生労働省(2024),ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ,50人未満への拡大と集団分析・職場環境改善の位置づけ
※2 厚生労働省(2026),
こころの耳:地域産業保健センター(地産保)について,50人未満事業場向けの無料支援
※3 厚生労働省(2026),
ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会,「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月25日)」等
※4 厚生労働省(2026),
ストレスチェック制度に係る関係法令等,「ストレスチェックは3領域を含む検査項目で実施」等
※5 厚生労働省(2026),
ストレスチェック制度に係る関係法令等,「医師による面接指導は申出により実施」「不利益取扱いの禁止」等
※6 厚生労働省(2026),
ストレスチェック制度に係る関係法令等,「本人同意なく事業者に結果提供できない」「実施事務従事者の秘密保持」等


後藤 麻友(ごとう まゆ)
後藤 麻友(ごとう まゆ)
ピースマインド株式会社  社員支援コンサルティング部 部長 EAPスーパーバイザー 公認心理師 臨床心理士 国際EAPコンサルタント(CEAP)  臨床心理学の修士号を取得後、ピースマインド株式会社に入社。EAPコンサルタントとしての臨床業務の傍ら、研究、研修、サービス開発にも従事。現在は、主にコンサルタントのマネジメントや育成支援を行っている。

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