
EAPのROIはどう考える? メンタルヘルス投資の費用対効果を生産性から読む
EAPのROI(投資対効果)を考えるうえで重要なのは、相談件数や利用率だけを見るのではなく、メンタルヘルス不調によって生じる見えにくい損失「サイレントコスト」をどれだけ防げたかを捉えることです。
欠勤によるアブセンティズム、出勤していても生産性が下がるプレゼンティズム、休職・離職、管理職の対応負荷などは、財務諸表に直接表れにくいものの、企業収益に影響します。
EAPは単なる福利厚生ではなく、早期相談・早期介入を通じて生産性低下を防ぎ、人的資本投資の成果を守る仕組みです。本記事では、EAP ROIの考え方、効果測定の指標、メンタルヘルス投資の費用対効果を高める運用設計を解説します。
目次[非表示]
- 1.なぜ今、人事戦略にROI(投資対効果)が求められるのか
- 2.人事ROIの死角となる「見えにくい損失」とは
- 2.1.採用・育成投資の効果を損なうメンタルヘルス不調
- 2.2.アブセンティズム(欠勤)がもたらす損失
- 2.3.プレゼンティズム(出勤しているが生産性が低い状態)の影響
- 2.4.財務諸表には表れにくい「サイレントコスト」
- 3.メンタルヘルス投資のROIはなぜ重要なのか
- 4.EAPはなぜROI向上につながるのか
- 5.EAPのROIはどのように測定するのか
- 6.EAPへの投資がもたらす経営インパクト
- 6.1.休職・離職コストの削減効果
- 6.2.生産性向上によるリターンの考え方
- 6.3.人的資本開示や健康経営への波及効果
- 7.EAPのROIを高めるために企業が取り組むべきこと
- 7.1.相談しやすい環境づくり
- 7.2.管理職と人事の連携強化
- 7.3.ストレスチェックや組織分析との連動EAPは、ストレスチェックや組織分析と連動させることで効果が高まります。厚生労働省は、ストレスチェック制度について、メンタルヘルス不調の未然防止を主な目的とし、集団分析を職場環境改善に活用する考え方を示しています。(※10)
- 7.4.EAPを単独施策で終わらせない運用設計
- 8.よくある質問
- 8.1.Q1. EAPのROIは単純に計算できますか?
- 8.2.Q2. EAPの利用率が低い場合、効果がないと考えるべきですか?
- 8.3.Q3. メンタルヘルス投資の費用対効果はどこに表れますか?
- 8.4.Q4. EAPは健康経営や人的資本開示に活用できますか?
- 8.5.Q5. EAPのROIを高める最初の一歩は何ですか?
- 9.まとめ
なぜ今、人事戦略にROI(投資対効果)が求められるのか
人的資本経営は「開示」から「成果創出」の時代へ
人的資本経営が広がるなかで、人事施策には「実施したか」だけでなく、「どのような成果につながったか」を説明することが求められています。人的資本の開示は、単に従業員数や研修時間を並べるだけでは十分ではありません。経営戦略と人材戦略がどのように結びつき、企業価値の向上にどう貢献しているのかを示すことが重要になります。
内閣官房・金融庁・経済産業省が公表した人的資本可視化指針でも、人的資本投資や人材戦略を企業価値向上と結びつけて考える視点が示されています。(※1 )
この流れを踏まえると、人事部門は「従業員のためによい施策だから実施する」という説明だけでなく、「その施策が何の損失を防ぎ、どのような成果を支えるのか」を説明する必要があります。
EAP(従業員支援プログラム)も同様です。相談窓口を設置したこと自体がゴールではなく、従業員の不調の早期発見、休職・離職の予防、生産性低下の抑制、管理職支援、職場改善につながっているかを確認することが、EAPのROIを考える出発点になります。(※2)
人材関連コストを「投資」として捉える企業が増えている
採用費、教育研修費、エンゲージメント施策、健康経営、メンタルヘルス対策など、人材に関わる費用は従来「コスト」として捉えられがちでした。しかし、人的資本経営の文脈では、これらは従業員の能力発揮と組織成果を支える「投資」として捉え直されています。
ただし、投資として捉える以上、その投資が何を生み出すのかを説明する必要があります。EAPであれば、相談件数や利用率だけでなく、「不調の深刻化を防げたか」「欠勤や休職を抑えられたか」「管理職が問題を抱え込まずに対応できたか」「職場環境改善につながったか」といった効果が重要です。
人材関連施策のROIは、売上や利益のように単純に計算できるものばかりではありません。だからこそ、金額換算できる指標と、組織の健全性を示す非財務指標を組み合わせて捉える必要があります。
限られた人材・予算の中で求められる人事の説明責任
多くの企業では、人事部門の人員や予算は限られています。その中で、採用、育成、労務、健康経営、エンゲージメント、ダイバーシティ、ハラスメント対策など、取り組むべきテーマは増え続けています。だからこそ、どの施策にどれだけ投資するかを判断するために、ROIの視点が欠かせません。
EAPのようなメンタルヘルス支援は、効果が見えにくいと判断されやすい施策です。しかし実際には、メンタルヘルス不調は欠勤、休職、離職、パフォーマンス低下、管理職負荷、職場トラブルなどに波及します。これらを可視化しないまま「EAPは利用率が低いから効果が薄い」と判断すると、企業は大きな損失を見落とす可能性があります。
人事としては、限られた予算を、どの損失の予防に使い、どの成果を守るのかを経営に伝えることが必要です。
人事ROIの死角となる「見えにくい損失」とは

採用・育成投資の効果を損なうメンタルヘルス不調
企業は採用や育成に大きな投資をしています。しかし、従業員がメンタルヘルス不調によって本来の力を発揮できなければ、その投資効果は十分に回収できません。例えば、せっかく採用・育成した人材が早期離職する、管理職候補が休職する、専門人材が高ストレス状態で判断力を落とす、といった状況は、目に見える費用以上の損失を生みます。
メンタルヘルス不調は、突然表面化するように見えて、実際には小さなサインが積み重なっていることがあります。睡眠不調、集中力低下、欠勤の増加、ミス、周囲との関係悪化、相談の減少などです。EAPは、こうした段階で早めに相談できる入口として機能することで、採用・育成投資の成果を守る役割を持ちます。
アブセンティズム(欠勤)がもたらす損失
アブセンティズムとは、病気や不調によって欠勤することによる生産性損失を指します。欠勤が増えると、本人の業務が止まるだけでなく、周囲の代替対応、納期遅延、顧客対応の遅れ、管理職の調整負荷などが発生します。
欠勤の損失は比較的把握しやすい指標です。欠勤日数に賃金や業務価値を掛け合わせることで、一定の金額換算ができます。ただし実際には、単純な人件費だけではなく、周囲へのしわ寄せや顧客対応の遅れも含めて考える必要があります。
EAPのROIを考える際には、EAP利用後に欠勤日数がどう変化したか、休職に関連する費用や負担がどれだけ抑えられたか、復職後の再休職率の改善といった指標が参考になります。
プレゼンティズム(出勤しているが生産性が低い状態)の影響
プレゼンティズムとは、出勤しているものの、心身の不調によって本来のパフォーマンスを発揮できない状態を指します。メンタルヘルス不調では、欠勤よりもプレゼンティズムの方が見えにくく、損失が大きくなることがあります。
WHOは、うつ病と不安症により、世界で年間約120億日分の労働が失われ、失われる生産性コストは年間1兆米ドルに上ると説明しています。(※3)
また、日本を対象とした研究でも、メンタルヘルス関連のプレゼンティズムによる生産性損失が、アブセンティズムより大きい可能性が示されています。(※4)
この点は、EAP効果測定において非常に重要です。EAPの効果は、休職者数の減少だけでは見えません。出勤している従業員が、相談を通じて状況を整理し、業務への集中や対人関係、意思決定の質を回復できるかを見る必要があります。(※5)
財務諸表には表れにくい「サイレントコスト」
メンタルヘルス不調に伴う損失の多くは、財務諸表に直接表れません。欠勤や休職は比較的見えやすい一方で、プレゼンティズム、管理職の対応時間、チームの士気低下、離職予備群の増加、採用ブランディングへの影響などは、数字として把握されにくいものです。
こうした損失を「サイレントコスト」として捉えると、EAPの意味が見えやすくなります。EAPは、発生した問題を解決するだけでなく、問題が大きくなる前に相談を受け、損失の拡大を防ぐ仕組みです。つまり、EAPのROIは「どれだけ相談があったか」だけでなく、「どれだけの損失を未然に防いだか」という視点で検討する必要があります。
メンタルヘルス投資のROIはなぜ重要なのか
従業員のコンディションと生産性の関係
企業の生産性は、従業員の知識やスキルだけで決まりません。集中力、判断力、対人関係、睡眠、心理的安全性、上司・同僚からの支援など、日々のコンディションが大きく影響します。
メンタルヘルス不調があると、業務スピードが落ちる、ミスが増える、報連相が遅れる、顧客対応が不安定になる、会議で発言できなくなるといった形で、生産性に影響します。
メンタルヘルス投資のROIを考えることで、従業員が安定して力を発揮できる状態をつくることが、企業の収益やサービス品質を支えていることを明らかにできるといえるでしょう。
離職・休職が企業収益に与える影響
離職や休職は、企業に大きなコストをもたらします。離職すれば採用費、教育費、引き継ぎコスト、欠員期間の生産性低下が発生します。休職では、代替要員の確保、業務再配分、復職支援、再休職予防などの負荷が生じます。
特に専門性の高い人材や管理職の離職・休職は、チーム全体の成果に影響します。本人の業務が止まることで、周囲の業務量が増え、連鎖的に不調が広がることもあります。
人的資本経営におけるウェルビーイング投資の位置づけ
人的資本経営では、従業員の健康やウェルビーイングは、単なる福利厚生ではなく、企業価値を支える基盤として捉えられます。健康経営優良法人認定制度でも、従業員や求職者、関係企業、金融機関などから社会的評価を受けられる環境を整備する目的が示されています。(※6)
EAPはなぜROI向上につながるのか

EAP(従業員支援プログラム)の基本的な役割
EAP(Employee Assistance Program:従業員支援プログラム)とは、従業員が抱えるメンタルヘルスや職場・家庭・生活上の悩みに対して、専門的な相談支援を提供する仕組みです。厚生労働省の「こころの耳」では、EAPは事業場外資源によるケアの一つとして位置づけられるメンタルヘルス支援サービスで、カウンセリング等を提供するものと説明されています。(※7)
EAPの価値は、従業員本人への相談支援だけではありません。管理職が部下対応に悩んだときの助言、人事と産業保健スタッフの連携、休職・復職支援、職場環境改善への示唆など、組織全体のメンタルヘルス対策を支える役割があります。(※8)
EAPは「福利厚生」ではなく生産性を守る仕組み
ROIの観点ではEAPを「生産性を守る仕組み」として捉えることが重要です。従業員が不調を抱えたまま働き続ければ、プレゼンティズムが増え、ミスや対人摩擦、判断の遅れにつながる可能性があります。
EAPによって、従業員が早めに相談し、必要な対応を取れるようになれば、不調の長期化や深刻化を防ぎやすくなります。結果として、欠勤・休職・離職の予防だけでなく、日常業務のパフォーマンス維持にもつながります。
早期相談・早期介入による損失防止効果
EAPの価値の本質は、早期相談・早期介入による損失防止にあります。例えば、ある従業員が強いストレスを抱えていても、早い段階で相談できれば、業務調整、睡眠改善、対人関係の整理、医療機関への接続などによって、休職に至る前に回復できる可能性があります。
また、管理職が部下対応に迷った際にEAPへ相談できれば、対応の遅れや不適切な声かけを防ぎやすくなります。これは、ハラスメント、チーム内対立、離職、長期休職といった二次的な損失を防ぐ意味でも重要です。
EAPの効果は、相談直後に売上として表れるわけではありません。しかし、欠勤・休職・離職・プレゼンティズム・管理職負荷といった損失を抑えることで、結果的に人材投資のROIを支えると考えられます。
EAPのROIはどのように測定するのか
EAP効果測定で見るべき主要指標
効果測定では、複数の指標を組み合わせることが重要です。代表的な指標には、EAPの利用率、相談件数、相談テーマ、再相談率、満足度、相談後の状態変化、欠勤日数、休職件数、復職後の定着、離職率、ストレスチェック結果、エンゲージメント、管理職相談件数などがあります。
EAPのROIを金額で考える場合は、EAP導入・運用費用に対して、欠勤削減、休職抑制、離職防止、プレゼンティズム改善による生産性損失の低減を推計します。ただし、すべてを厳密に金額換算しようとすると、かえって実務で使いにくくなります。まずは「損失を防いだ可能性がある指標」を継続的に見ることが現実的です。
利用率だけでは判断できない理由
EAPの効果を利用率だけで判断するのは危険です。利用率が高い場合、相談しやすい環境があるとも読めますが、職場に不調やトラブルが多い可能性もあります。反対に、利用率が低い場合でも、従業員が困っていないとは限りません。守秘義務への不安、相談窓口の認知不足、利用方法の分かりにくさ、相談への心理的抵抗により悩みはあるが利用されていない可能性があります。
重要なのは、利用率を「結果」ではなく「入口指標」として扱うことです。利用率に加えて、相談テーマ、相談後の行動変化、休職・離職との関係、ストレスチェックの傾向、管理職からの相談件数を見ることで、EAPが本当に機能しているかを判断することができます。
プレゼンティズム・アブセンティズム改善効果の考え方
アブセンティズムは欠勤日数として把握しやすい一方、プレゼンティズムは見えにくいため、アンケートや簡易指標を活用することが有効です。
例えば、相談前後で「仕事への集中度」「業務遂行のしやすさ」「睡眠」「心理的負荷」「上司・同僚との関係」などを確認します。数値化が難しい場合でも、相談者の主観的な改善、管理職から見た変化、欠勤・遅刻の変化を組み合わせることで、効果の輪郭が見えてきます。
海外のEAPに関するROI研究では、EAPの財務的効果を推計するモデルとして、欠勤、プレゼンティズム、離職、医療費等を組み合わせて評価する考え方が示されています。(※9)
離職率やエンゲージメントとの関連
離職率やエンゲージメントとの関連も見逃せません。従業員が不調や悩みを抱えているとき、社内に相談できる場所があるかどうかは、組織への信頼に影響します。
EAPがあることで「困ったときに支援を受けられる」という感覚が生まれれば、離職予防やエンゲージメント維持につながる可能性があります。特に若手や新任管理職などの適応課題を抱えやすい状況にある従業員や、育児・介護などライフイベントとの両立をしている従業員にとって、相談先の有無は働き続けるかの判断に影響することがあります。
EAPへの投資がもたらす経営インパクト
休職・離職コストの削減効果
休職・離職は、企業に直接的・間接的なコストをもたらします。休職では、代替要員、業務分担、復職支援、再休職予防の対応が必要です。離職では、採用費、教育費、引き継ぎコスト、欠員による生産性低下が発生します。
EAPは、従業員が不調の早い段階で相談できる仕組みとして、休職・離職リスクの低減に寄与します。もちろん、すべての休職や離職を防げるわけではありません。しかし、早期相談によって「急な離脱」を減らし、本人・職場・人事が準備しながら対応できるようになることは、経営上の大きな価値といえるでしょう。
生産性向上によるリターンの考え方
EAP投資のリターンは、生産性向上という形でも考えられます。例えば、悩みや不調によって集中力が50%まで落ちていた従業員が、相談を通じて70%、80%まで回復すれば、その差分は企業にとってリターンになります。
ここで重要なのは、EAPの効果を「相談した人だけ」に閉じないことです。相談者の状態が改善すれば、上司や同僚の負担が下がり、チームの連携も改善しやすくなります。管理職がEAPに相談して適切な対応を取れれば、部下本人だけでなく、チーム全体の混乱を防げます。
つまり、EAPのROIは、個人の生産性改善だけでなく、チーム全体の損失防止として捉えることが重要です。
人的資本開示や健康経営への波及効果
EAPの効果測定は、人的資本開示や健康経営にも活用できます。例えば、相談体制の整備、メンタルヘルス研修、ストレスチェック結果の改善、職場環境改善、休職・復職支援、健康経営優良法人への取り組みなどは、企業が従業員の健康と生産性を重視していることを示す材料になります。
経済産業省は健康経営優良法人認定制度について、優良な健康経営を実践する法人を見える化し、従業員や求職者、関係企業、金融機関などから社会的評価を受けられる環境を整備するものと説明しています。 EAPは、そのような健康経営の取り組みを支える相談インフラとしても位置づけることができます。
EAPのROIを高めるために企業が取り組むべきこと
EAPのROIを高めるには、まず相談しやすい環境をつくる必要があります。どれだけ質の高いEAPを導入しても、従業員が存在を知らない、守秘義務に不安がある、利用方法が分からない状態では効果は出ません。
相談しやすい環境づくり
人事は、EAPの利用方法、相談できる内容、守秘義務、会社に共有される情報の範囲、緊急時の例外対応を分かりやすく伝える必要があります。また、入社時、ストレスチェック後、管理職研修、社内ポータル、休職・復職面談など、複数の接点で繰り返し案内することが重要です。
管理職と人事の連携強化
EAPを機能させるには、管理職と人事の連携が欠かせません。部下の不調サインに最初に気づくのは、現場の管理職であることが多いためです。しかし管理職が一人で抱え込むと、対応が遅れたり、不適切な声かけにつながったりすることがあります。
管理職が「部下をどう支えればよいか」をEAPに相談できるルートを設けることで、早期対応がしやすくなります。人事は、EAPは部下本人だけでなく、マネジメント支援にも使えることを管理職に対して周知する必要があります。
ストレスチェックや組織分析との連動
EAPは、ストレスチェックや組織分析と連動させることで効果が高まります。厚生労働省は、ストレスチェック制度について、メンタルヘルス不調の未然防止を主な目的とし、集団分析を職場環境改善に活用する考え方を示しています。(※10)
ストレスチェックで高ストレス部署が見えた場合、EAP相談のテーマ傾向や管理職支援の状況と組み合わせることで、職場課題の仮説を立てやすくなります。例えば、特定部署で「上司との関係」「業務量」「キャリア不安」に関する相談が増えている場合、個人相談だけで終わらせず、職場環境改善や管理職支援につなげることが重要です。
EAPを単独施策で終わらせない運用設計
EAPを単独施策として置くだけでなく、ストレスチェック、産業医、健康経営、管理職研修、ハラスメント相談、休職・復職支援、人事制度、組織開発と連動させることで、効果が最大化されます。
EAPは、従業員が困ったときの相談先であると同時に、組織の不調サインを拾うセンサーでもあります。個人情報と守秘義務を守りながら、匿名化された相談傾向を人事施策に活かすことで、EAPは「相談窓口」から「人的資本投資の効果を支える仕組み」へと進化します。
よくある質問
Q1. EAPのROIは単純に計算できますか?
A. 一定の計算は可能ですが、単純な売上増加のように測るのは難しい領域です。EAPのROIは、欠勤、休職、離職、プレゼンティズム、管理職負荷などの損失をどれだけ防げたかを複数指標で見る必要があります。厳密な金額換算にこだわりすぎず、継続的な効果測定を行うことが現実的です。
Q2. EAPの利用率が低い場合、効果がないと考えるべきですか?
A. 利用率だけで効果を判断するのは適切ではありません。利用率が低い背景には、相談窓口の認知不足、守秘義務への不安、利用方法の分かりにくさがあります。利用率に加えて、相談テーマ、休職・離職、欠勤、ストレスチェック結果、管理職相談件数などを組み合わせて見ることが大切です。
Q3. メンタルヘルス投資の費用対効果はどこに表れますか?
A. 欠勤日数の減少、休職・離職リスクの低下、プレゼンティズム改善、管理職の対応負荷軽減、職場環境改善、エンゲージメント維持などに表れます。財務諸表に直接出にくい効果も多いため、非財務指標と組み合わせて評価する必要があります。
Q4. EAPは健康経営や人的資本開示に活用できますか?
A. 活用できます。EAPは、従業員の健康と働き続けやすさを支える相談体制として、健康経営や人的資本経営の基盤になります。相談件数だけでなく、職場環境改善や休職・復職支援、管理職支援との連動を示すことで、より実態に即した説明ができます。
Q5. EAPのROIを高める最初の一歩は何ですか?
A. まずは、EAPの目的を「相談窓口の設置」ではなく、「生産性損失の予防」として再定義することです。そのうえで、従業員への周知、守秘義務の説明、管理職への活用方法の共有、ストレスチェックや組織分析との連動を進めると、EAPの効果が見えやすくなります。
まとめ
EAPのROIを考えるうえで重要なのは、単に相談件数や利用率を見ることではありません。メンタルヘルス不調によって生じるアブセンティズム、プレゼンティズム、休職、離職、管理職負荷、職場トラブルといった「サイレントコスト」をどれだけ防げたかを捉えることです。
人的資本経営の時代には、人材関連施策にも成果説明が求められます。EAPは福利厚生にとどまらず、従業員のコンディションを支え、生産性低下を防ぎ、採用・育成投資の成果を守る仕組みです。ROIを高めるには、相談しやすい環境づくり、管理職と人事の連携、ストレスチェックや組織分析との連動、匿名化された相談傾向の活用が欠かせません。
EAPを単独の相談窓口で終わらせず、人的資本投資の成果を守るインフラとして運用することが、メンタルヘルス投資の費用対効果を高める鍵になります。
EAPの活用に関してさらに詳しく知りたい方は、以下の資料をご確認ください。
<参考資料>
※1 内閣官房(2026),人的資本可視化指針(改訂版)の公表について
※2 ピースマインド株式会社(2021),〖調査分析〗ストレスの改善は企業業績の向上につながるのか? ~「上場企業のストレスと企業業績」に関する調査結果を公開~
※3 World Health Organization(2024/2026参照),Mental health at work
※5 ピースマインド株式会社(2025),ピースマインド、EAP(従業員支援プログラム)の効果測定を公開開始~国際標準指標「WOS」を活用し、利用前後比較で効果を可視化、半年ごとに継続公開へ~
※8 ピースマインド株式会社(2021),〖調査結果〗従業員支援プログラムの継続導入がストレス軽減に寄与 ~コロナ禍で益々重要な社員のメンタルヘルス対策~












