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【今の時代のビジネスパーソンに必要な自分自身への向き合い方】セルフコンパッション(自分自身への思いやり)

「職場内のコミュニケーションがうまくいかない」
「管理職がマネジメントで疲弊している」
ということはありませんか?

あなたの会社で起きているその問題、「セルフコンパッション」を取り入れることで変化が起こるかもしれません。

本記事では心身を整える管理職のためのセルフマネジメントのツールであるセルフコンパッションとは何か、自分も他者も心から大事にすることで組織に良い影響をもたらすのはなぜかについて、紹介します。


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目次[非表示]

  1. 1.セルフコンパッションとは?
    1. 1.1.セルフコンパッションという考え方
    2. 1.2.セルフコンパッションの3要素
    3. 1.3.自尊感情とはどう違う?甘やかしではないのか?
  2. 2.今管理職に勧めたいセルフコンパッション
    1. 2.1.なぜ今注目されているのか
    2. 2.2.セルフコンパッションは特に管理職に有効
    3. 2.3.管理職の現状とその影響
    4. 2.4.管理職はなぜ弱みを見せられないのか?
  3. 3.セルフコンパッションがもたらすメリットとは
    1. 3.1.従業員にとってのメリット
    2. 3.2.組織にとってのメリット
  4. 4.ピースマインドのセルフコンパッション研修がもたらすメリット
  5. 5.まとめ
  6. 6.ピースマインドの提供する「はたらくをよくする® 」サービス



セルフコンパッションとは?


セルフコンパッションは、2003年にアメリカの心理学者Nelfによって定義された概念です。苦痛や心配を経験したときに、自分自身に対して思いやりを持ち、否定的経験人間なら誰もが共有するものとして認識し、心のバランス保つこと指します

セルフコンパッションという考え方

ここで、セルフコンパッションの考え方を例を挙げてみてみましょう。
例えば、みなさんの大切な友人が大変な状況に陥り、苦しんでいるとします。そのとき、みなさんはおそらく、まずはじっくりと相手の話を聴く、そして心配して優しい言葉をかけたり、「次に活かせるよ」などと肯定的な励ましをするのではないでしょうか。

では、同じような状況が自分自身に起こったとき、みなさんはどのように対処するでしょうか

多くの人は、上手く対処できない自分を責めたり、「自分なんてダメだ」と自己否定的な気持ちを抱くかもしれません。また「で、次どうする?」と解決を焦ったりするかもしれません。その結果、気分はさらに落ち込み、他のことも上手くいかなくなり、ストレスがどんどん溜まってしまうことがあります。

このように、他人には優しく接することができても、自分自身は厳しくしてしまう人少なくありません。特に、管理職の方々に多い傾向です。


そんな時こそ役立つのがセルフコンパッションです。

セルフコンパッションとは


成果の有無や目標の達成度にかかわらず、自己をできる限り客観視し、「自分を大切に扱う」こと。

例えばの例として、あなたの親友だったらあなたにどう接するか?孫であるあなたにあなたの祖父母だったらどう接するか?と想像いただくのもよいかもしれません。
困難に直面した時に自分に対して思いやりをもち、自身の人間性を尊重し自分を大切にすること(※1)がセルフコンパッションの核心です。

セルフコンパッションの3要素


セルフコンパッションには、3つの要素があります。それぞれ簡単にご紹介します。

セルフコンパッションの3要素


マインドフルネス
あるがままの状態に気づく、という意味で、「つらい・苦しい」と思ったときに、それを無かったことにしたり、逆に誇張したりするのではなく、「今自分はつらいんだ」とそのまま受け入れることです。

誰しも経験する事(共通の人間性)
誰もが似たような経験をしている、誰しも欠点があり、困難にあたるものだという考え方です。

自分への優しさ
苦しみに対して自分に優しい言葉をかけることで、セルフコンパッションの中核となります。

つまり、セルフコンパッションとは、失敗や挫折の経験の際に、
傷ついた自分自身の感情を受け入れ(マインドフルネス)
そうした経験は誰にでもあることだと気づき(誰しも経験する事)
自分が必要としている優しい気持ちや言葉を自分自身に向けてあげる(自分への優しさ)

ことだと言えます。

自尊感情とはどう違う?甘やかしではないのか?

セルフコンパッションは、自分のポジティブな側面に注目するという部分で、自尊感情と混同されることがあります。自尊感情との違いは、どこにあるのでしょうか。

自尊感情を高く保とうとすれば、有能であったり社会的承認を得る必要があり、絶え間ない努力が求められます。

一方で、セルフコンパッションは、自己のポジティブな側面だけでなく、ネガティブな側面にも温かい気づきを向けて受けとめるという点で、自尊感情とは本質的に異なります。

セルフコンパッションと自尊感情の違い


また、失敗したときに自分に優しい気持ちを向けるため、甘やかしではないかと誤解されることもあります。セルフコンパッションと甘やかしの違いは、なんでしょうか。

甘やかしは、自分の失敗を人のせいにしたり、ストレス発散のために暴飲暴食をすることも「まあいいよ」と許してしまうことです。

しかし、セルフコンパッションでは、温かい気持ちで受容するだけでなく、自分自身が本当にやりたいことができるように取り組むべきこと・やめるべきことを考え、行動に移すことを促すため、甘やかしとは根本的に異なるといえます。

セルフコンパッションと甘やかしの違い




今管理職に勧めたいセルフコンパッション

なぜ今注目されているのか

現代は、大きな予想もしない変化が起き、ストレスや不安が多い時代です。
また、社会の動きとして「多様性を受けとめる」流れが大きくあります。

「予想もしない変化が起きて戸惑う」
「特定できないストレスを感じ、対応が難しいと感じる」
「前よりコミュニケーションがし辛くなった」
という声が多く聞かれます。

また、2020 年以降の新型コロナウイルスの流行に伴う様々な社会の変化をきっかけに、はたらく人のメンタルヘルスケアの重要性はより高まったといえるでしょう。厚生労働省は、労働者自身がセルフケアの技術を習得し、日常的なストレス事態に対処することを推奨しています。

そのような中で、セルフコンパッションは、いつも一番そばにいる自分自身との向き合い方を見直すヒントになるとして、注目されています。

セルフコンパッションは特に管理職に有効


現代の管理職は、以前に比べて注意を向けるべきことが増え、マネジメントによって疲弊しているという現状があります。また、若手との価値観の違いから、コミュニケーション課題も顕在化しています。

ここで、セルフコンパッションの出番です。

これまでは、管理職自身に対するサポートは重視されていませんでしたが、これからは、会社をあげて管理職が自身のセルフケアに取り組むことできるようなサポートに取り組むことが必要です。

セルフコンパッションを実践することにより、管理職自身が自分の弱みにも目を向け、受け入れることに繋がります。自身の弱みを知ることで、チームメンバーの多様性も受け入れることができるようになり、最終的には会社全体多様性を受け入れる風土が生まれ、利益もたらすこと見込まれるでしょう。次の章では、管理職の現状と影響についてより詳しく解説します。

管理職の現状とその影響


「管理職だから弱みを見せられない」という葛藤を抱えている管理職は少なくありません。弱みを見せられないことによって、強い心理的負担を感じたり、パフォーマンスが下がるといった課題に繋がるケースも少なくありません。

データから見る はたらく人のストレス状況と影響
令和5年度の労働安全衛生調査(※3)では、仕事に関することで、強い不安、悩みストレスを感じている方は8割を超えており、ストレスの原因を4割の方が「仕事失敗や責任発生等」を挙げています。

ストレスを抱えるはたらく人の存在は職場や社会にさまざまな影響をもたらします。
例えば、労働者が職場で強いストレスを受けると、精神的・身体的な不調につながり労働生産性が低下します。実際に、メンタルヘルス不調を抱える労働者は退職や*アブセンティズムにいたる傾向が高いこと、また労働時間を減らすことなどを示す研究があります(※4)。
*アブセンティズム:心身の体調不良が原因による遅刻や早退、就労が困難な欠勤、休職など、業務自体が行えない状態

以上のことから、はたらく人の中でも、特に責任が重くのしかかる管理職は不安やストレスを感じやすいと考えられます。しかし、周りに相談できない、弱みをみせられない人が多く、精神的・身体的な不調に繋がっています。では、なぜ弱みを見せられないのでしょうか。


管理職はなぜ弱みを見せられないのか?

管理職の方々は、そもそもハイパフォーマーであることが評価され、役職に就かれていることが多いのではないでしょうか。それはこれまでの自分自身の努力や経験によるものです。役職が上がるにつれて、プレッシャーや周囲への相談が難しくなるなど、弱みを見せられない状況になってしまいます。

そのような経験をしてきた管理職は、以下のような考えが生まれてしまうこともあります。

・自分自身に対して厳しく、結果が出せない自分には価値がない、成果こそが重要だ
・大きな役割を任され、責任が重く、全部自分一人でなんとかしなければいけない
弱みを見せたり、愚痴を言ったりすることができない
・部下も上司である私の言う通りにやれば成果が出るはずだから、私の指示を聞いていればいい。

そして、これらのような考えから、以下のような問題に繋がっていきます。

成果が出なくて、苦しくてしんどいけれど、弱みを見せたり愚痴を言ったりすることができない
➡パフォーマンスの波が激しい
➡体調を崩す、心の余裕がなくなる
➡管理職の言動は影響力があるため、職場の雰囲気が悪くなったり、士気が下がったりする

部下意見を聴かない
➡部下との信頼関係が築かれない
➡心理的安全性の低い職場になる


管理職の現状とその影響


職場で特にストレスを抱えやすく、影響力が大きい管理職がセルフコンパッションを取り入れることによって、職場環境の改善、労働生産性の回復、向上などが期待できます。管理職が抱えている問題を打破するためには、不完全である自分を等身大に観察し、自分自身が自分優しく、励ます存在目指すセルフコンパッション必要なのです。


セルフコンパッションがもたらすメリットとは

従業員にとってのメリット

セルフコンパッションを高めることで、メンタルヘルスやフィジカルも含めたウェルビーイングにプラスの影響を与えることが、学術的な研究でも示されています。
例えば、セルフコンパッションのプログラムを 5~10 週程度継続して実践することで、ウェルビーイングが期待できると言われています(※2)。

反対に、セルフコンパッションが低い人は、自分自身をねぎらうことなく、常に自分を厳しい目で批判的に見続けてしまいやすくなります。特に管理職の場合、部下のことであれば落ち着いて受容的に考えられる人も、自分のことになると厳しく捉えてしまい、知らず知らずのうちに自分を追い込んでしまう場合があります。

そこで、セルフコンパッションを取り入れることによって、以下のような多くのメリットが考えられます。

  • 不安や抑うつを低下させる
  • ストレス状況にうまく対処できるため、病気やけがによる消耗が少なくなる
  • 高いQOL(Quality of life、生活の質)が期待できる
  • 失敗しても自分を責めることがないために失敗を恐れることがなくなり、新しいことにチャレンジできるようになる

組織にとってのメリット

管理職と部下の関係性や職場内の雰囲気を改善するために、セルフコンパッションを取り入れることによって、組織が徐々に変わっていくことが期待されています。ここでは、どのような変化がもたらされるのかについて、ご紹介します。

職場全体の環境改善につながる
セルフコンパッションがもたらす「自分の全てを受け入れる」ということは、懐の広さに通ずるとも言えるでしょう。懐の広さは、今まで「それは違う」と頭ごなしに否定したり無視していた場面でも、相手が一生懸命考えて発言したことや思いの丈を受け止める余裕を生むでしょう。今まで否定していたような場面でも、「面白いね、その意見」と言えることが増えてきます。

また、チームのメンバーを受け入れる余裕が生まれると、心理的安全性が高まることが期待されます。心理的安全性の程度は、上司として「接しやすい」立場にいることや、ミスを受け入れる環境づくりによって高めることができるからです。

心理的安全性について詳しくは、こちらをご覧ください。
【臨床心理士が解説】組織の心理的安全性を高める方法とは?

企業としては、自分を受け入れ、懐の広い管理職を増やすことによって、企業の生産性向上に繋げることができます。管理職のセルフケア支援も、組織を上げての重要な施策と捉え、取り組むことが重要になっていきます。

セルフコンパッションが組織にもたらす変化



ピースマインドのセルフコンパッション研修がもたらすメリット


ピースマインドでは「セルフケア、心身を整えること」を目的とした集合型のセルフコンパッション研修を提供しています。会社としての管理職のセルフケアへの姿勢を示し、実際に取り組みを推進することの足がかりとすることができます。

プログラムの一つとして、研修内での参加者同士の自己開示を行います。

研修では、これまでの仕事の経験から、自分が失敗した事や、苦い思い出などを順番に発表していきます。そうは言っても、プライドがあったり、自分のことをさらけ出すことに恥ずかしさがあったり、自己開示することに抵抗がある人は多いはずです。特に管理職は、弱みを見せることは良くないこと、格好悪いことだと考えている方が大半でしょう。

自己開示では、普段言いたいけど言えていなかった弱音を吐くことができるため、一種の心のマッサージとも言えるでしょう。普段の関係性や仕事の中ではできないことでも、研修の中で自己開示の場を設けることで、それが可能になります。

研修では、以下のようなやり取りが行われます。
Aさん

「実は、今まで色々な失敗を繰り返してきて、今でもなかなか自分のことを認められない部分があるんです。」
Bさん

「Aさんもそんな失敗をしていたんですね。」
Cさん

「私も同じような経験があるな。お互い大変だったけどよく頑張っていますよね。私は最近、部下とのコミュニケーションが上手くいかなくて、皆さんどうしてますか。」

初めは、なかなか発言しづらいということもありますが、少しずつ悩みや弱音を吐き出し、互いに共感しあうことで、大変なのは自分だけではないことや他の人の課題への向き合い方を知ることができます。

このように、お互いに自己開示し、さらけ出すことによって、参加者間の繋がりが生まれ、セルフコンパッションへの認識や取り組みを共有することができます。また、セルフコンパッションの取り組みを通じて、管理職が自身を受け入れることで、他者の多様性や多面性を受け入れる土壌が整い、自ずから言動が変化するようになります。

管理職が自身のケアを行い、整った状態を保つことで、管理職のメンバーへの接し方が変わり、心理的安全性の高い職場環境となることは、企業としても大きなメリットといえるでしょう。


まとめ

セルフコンパッションとは、自分自身への思いやりであり、大事な人に接するように自分自身も接することです。管理職は、役職が上がるにつれて、背負うべき責任が増え、周囲に弱みを見せられなくなっています。その結果、様々な問題が生まれています。

そこで、特に管理職が、セルフコンパッションを通して、自分も受け入れチームメンバーも受け入れるということが浸透していくことによって、最終的には心理的安全性の高い職場環境となります。

企業としては、自分を受け入れ、懐の広い管理職を増やすことによって、企業の生産性に繋げることができます。管理職のセルフケア支援こそ、組織を上げて取り組むことが重要になります。


ピースマインドの提供する「はたらくをよくする® 」サービス

ピースマインドではさまざまな変化に適応できる人材の育成やいきいきとしたチーム・職場づくりを目的としたメンタルヘルス・ハラスメント研修、トレーニングプログラムをご提案しています。ZoomやTeams ・Webexなどのビデオ会議ツールを利用したオンラインツールでの研修も可能です。

メンタルヘルス・ハラスメント研修以外にも「役員・人事向け」「管理監督者向け」「一般職向け」など階層別研修やマインドフルネス、ロジカルシンキング、セルフコンパッションなどのテーマ別研修を最新の心理学や行動科学のエビデンスに基づいたご提供しています。

ピースマインドの研修を活用して、元気に働き続ける人材の育成やメンタルヘルスへの理解を深めて、はたらくをよくしていきましょう。


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参考文献
※1 マインドフル・セルフ・コンパッション(MSC)とは何か: 展望と課題
※2 セルフ・コンパッションに焦点を当てた心理学的介入 とその職場での活用方法
※3 厚生労働省 令和5年度 労働安全衛生調査(実態調査)の概況
※4 職場環境とメンタルヘルス



田中 秀憲(たなか ひでのり)
田中 秀憲(たなか ひでのり)
ピースマインド株式会社 組織支援コンサルティング部  公認心理師  社団法人日本産業カウンセラー協会 産業カウンセラー 1964年生まれ。総合商社にての海外駐在、マネジャーを経て、30代後半で人材育成分野にキャリアチェンジ。法人向け研修のプログラム開発、講師として経験を積む。現在は、経営層・管理職・中堅社員といった幅広いビジネスパーソンに向けて、主にメンタルヘルス、コミュニケーション、ハラスメント防止、リスペクト・トレーニングなどに関する、研修企画・運用などをマネジメントするとともに、研修講師としても活動している。

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