
変わる働き方、問われる産業保健体制 ー企業が取るべき次の行動
近年、社会状況や産業構造の変化が急速に進んでいます。それに伴い、産業保健の課題も複雑化しています。こうした変化に対して、これまでの産業保健体制では、十分に対応できない問題が数多く顕在化しています。
「企業は、こうした状況下で、どのような対策を講じるべきなのか。」
本記事では、日本における産業保健の成り立ちと現状を整理したうえで、企業が今後取り組むべき具体的な対策について詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.産業保健の歩み
- 1.1.労働安全衛生法の施行
- 1.2.働き方改革
- 2.産業保健の現状
- 2.1.法律だけでは補えない産業保健体制
- 2.2.多様化する労働者
- 2.3.産業医を取り巻く需要と供給
- 3.今後必要とされる産業保健体制
- 3.1.法規制では対処できない問題への対応力
- 3.2.健康経営を戦略的に推進していく
- 3.3.自社に合った産業医の選任
- 4.まとめ
- 5.ピースマインドの産業保健支援サービス
産業保健の歩み

労働安全衛生法の施行
現在の産業保健の中心となる法律が労働安全衛生法です。1972年に施行され、その背景には、当時頻発していた労働災害があります。
当時の日本は、高度経済成長期であり、第2次産業を中心に技術革新や設備投資の設置が進み、生産性が飛躍的に向上しました。
しかし、この頃は労働安全衛生法が未整備であったため、長時間労働や危険作業が常態化し多くの労働災害が発生しました。
そこで厚生労働省は、労働者の安全と健康を確保し、快適な作業環境を形成する目的として、労働安全衛生法を制定しました。具体的な内容は、事業場内における安全衛生責任体制の明確化や健康診断の義務化、安全衛生組織の整備(総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医、作業主任者の選任義務)などでした。
つまり、労働安全衛生法は、第2次産業における労災防止を目的に制定されました。
働き方改革
その後、バブル崩壊を経て、第3次産業が発展しました。それに伴い、新たなタイプの労災が増加し、労働安全衛生法の法改正が繰り返されました。
1990年代には、過労死事件が社会的問題化し、労働による心理的負担対策が注目されるようになりました。そのため、2000年代以降も心理面に関する内容を含めた改正が続いています。
さらに、少子高齢化による労働力不足や働き方の多様化を背景に、政府は2019年から労働環境改善し、多様な働き方を可能とすることを目的とした働き方改革関連法案を制定しました。
働き方改革関連法の中には「産業医・産業保健機能」と「長時間労働に対する面接指導等」の強化が組み込まれ、産業医の独立性・権限強化、過重労働者への面接指導徹底などが義務化されました。
このように、労働安全衛生法の制定から社会状況や産業構造の変化により、様々な労災が発生し、その都度、法改正が行われてきました。また、この変化の中で、産業保健体制は、常に焦点が当てられました。
産業保健の現状
これまで産業の発展に伴い様々な法改正や法律の制定がされました。しかし、労災認定者数やストレスを感じる従業員数など数々の指標が増加しています。その原因としては、以下のことが考えられます。
法律だけでは補えない産業保健体制
現在、労働安全衛生法が施行され、50年以上が経過しました。労働安全衛生法の一部改正が、定期的に行われたものの、働き方が大きく変わった現代においても、第2次産業向けに作られたポイントが色濃くあります。そのため、現代の働き方に十分対応できていません。
例えば、リモートワークや業務委託先の管理は法律の想定外であり、企業が最低限の法律遵守にとどまり、従業員の健康管理が不十分なケースがあります。
多様化する労働者
現代の日本は、様々な価値観を持った労働者がいます。
具体的には、労働人口の減少、企業の人手不足、経済的困窮など様々な要因から高齢の従業員の割合が増加しています。また、女性の労働者が増加し、共働き世帯の割合は、40年前から約2倍に増加しました(※1)。そのため、労働と育児の両立支援をおこなうニーズが高まりました。さらに、労働力不足や政策の後押しもあり、先進国の中では働きやすい日本で働く外国人労働者が増加しました。
このように、働く人の多様化により、必要とされる産業保健体制が変化し、これまでの産業保健体制では、支援が行き届かない可能性があります。
産業医を取り巻く需要と供給
また、産業保健体制の軸となる産業医の現状においても多くの問題があります。
現在、従業員が50人以上いる事業場では、産業医の選任が義務付けられていますが、産業医数は十分とは言えない状況にあります。日本医師会のデータによると、2022年10月27日時点での有効産業医数は70,208人と示されています(※2)。ただし、有効産業医のうち活動している産業医は34,166名と、約半数にとどまっています。

一方で、2024年に従業員50名以上が働く事業場は174,355社あります(※3)。この数字を踏まえると、有効産業医が全員活動した場合でも、1人あたり約2.4事業場を担当する必要があります。加えて、実際に活動している産業医のみで計算すると、1人あたり約4.7事業場を兼務する計算になります。
また、従業員50名以上の事業場は全体の4.7%にとどまります。そのため、50名未満の事業場でも任意で産業医を選任するケースがあり、その場合はさらに産業医の兼務が増える可能性があります。
さらに、産業医として活動する人の多くはベテラン世代で、企業内で若手と呼ばれる世代は少ないのが現状です。

医師会のデータによると、産業医の20〜30代の割合は低く、50〜70代の割合が高いことが示されています。また、活動中の産業医に限って見ると、40代よりも70代以上の割合の方が高いことも分かります(※1)。
そのため、今後さらに産業医の高齢化が進行し、産業医の供給不足に陥る可能性が懸念されます。
これらの産業保健の問題があるため、企業としては、いち早く対策を取ることが重要になります。その結果、他社企業と差をつけることができ、生産性の向上に貢献します。
そこで、次章では、具体的に企業が取るべき対策について解説します。
今後必要とされる産業保健体制

法規制では対処できない問題への対応力
これまで述べたように、労働安全衛生法は第2次産業に伴う労災対策として制定されました。つまり、病気や怪我などマイナスなことが起きないようにする法律と言えるでしょう。しかし、現代の複雑化する産業保健では、法律を遵守するだけですべての問題に対処することは難しいです。
その後も法改正は重ねられてきましたが、働き方や労働者が多様化する現代において、労働安全衛生法は、企業が安全衛生に取り組むための重要な前提条件ではあるものの、それだけで各企業の実情に完全に適合するとは限りません。
そのため、企業は、自社の現状を正しく把握したうえで、自社の課題に合った産業保健体制を構築していくことが求められます。
また、こうした判断を自社のみで行うことが難しい場合には、産業医やEAPなど、第三者の専門的な視点を取り入れることが重要です。
健康経営を戦略的に推進していく
現代では、企業に対して、人を「人材」として管理するのではなく、「人財」として自律的に活躍してもらうことを目指す人的資本経営や健康経営の取り組みが必要とされています。
つまり、企業は、制度や環境、教育などに戦略的に投資をすることで従業員のパフォーマンスを最大限に引き出す努力が重要です。
その中でも、産業医を中心とした産業保健体制は、健康経営の要として、戦略的な施策の実行に深く関わる存在と言えるでしょう。
自社に合った産業医の選任
健康経営を推進するうえで、産業保健体制の中核を担う存在は、産業医です。
しかし、産業医を取り巻く現状として、産業医の人手不足や高齢化があります。そのため、自社に合った産業医を選任することは、以前にも増して難しくなっています。
そのため、今のうちから戦略的に、どのような産業医を選任していくのか、また、どのような業務を産業医に担ってもらうのかを、企業内で整理しておく必要があります。
そして、自社に合った産業医を選任するための手段の一つとして、産業医紹介サービスを提供する企業を活用することも有効であると言えるでしょう。
まとめ
現在も厚生労働省を中心に、様々な産業保健対策が取り組まれています。しかし、複雑化する産業問題に対して、法律などでは対策し切れないところが数多くあります。従業員や会社を守るためにも、自社の問題を適切に把握し、自社で戦略的に対策を推進する必要があります。これらの対策の基盤となるのが産業保健体制であり、産業保健体制の軸となる存在が産業医であります。自社に合った産業医を選任することは、今後ますます難しくなることが考えられるため、今のうちから紹介会社などを活用し、相性の良い産業医を選任することが重要です。
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参考文献













