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セルフケアで社員のメンタル不調を予防・支援するには?必要性と方法をご紹介

厚生労働省の発表によると、2024年における精神障害の労災認定件数は1,055件と過去最多を記録しました。このデータからもわかるように、職場における心の健康づくりは、企業にとって喫緊の課題となっています。(※1)

メンタル不調によって社員が休職や離職をしてしまうと、残された周囲の社員に業務負担のしわ寄せがいき、連鎖的なメンタル不調やさらなる離職のリスクを高めるという悪循環を招きかねません。この悪循環を防ぐためには、社員一人ひとりの「自律的なセルフケア」と、それを全面的にバックアップする企業の「仕組みや外部サービス(EAP・研修など)の支援」という両輪が不可欠です。

本記事では、社員のセルフケアの必要性と、企業が実践すべき具体的なバックアップ体制について解説します。

「セルフケア」とは?

企業においてメンタル不調者を減らすには、日頃から社員の心身の状態に気を配り、不調を未然に防ぐことが求められます。その土台となるのが社員自身による「セルフケア」です。厚生労働省では、セルフケアを「働く人が自らのストレスに気付き、予防対処し、また事業者はそれを支援すること」と定義しています。(※2)

メンタル不調の初期症状

セルフケアの第一歩は、自分自身の「疲労」やストレスのサインにいち早く気づくことです。(※2)メンタル不調の初期症状には、「原因不明の頭痛や腹痛が続く」「理由もなく不安になる」「イライラしやすくなる」「なかなか眠れない」といったものがあります。こうした初期症状の段階でメンタルの低下に気づき、適切な予防対処を行うことが、重度の不調を防ぐ鍵となります。

だからこそ、日々の「健康管理」や「自己管理」が非常に重要になります。単に病気を防ぐだけでなく、心身の「健康保持」を意識した主体的なケアを習慣づけることが、いきいきと働き続けるためには必要です。(※1)

一方で、厚生労働省の指針にも記載されている通り、職場に存在するストレス要因の中には、労働者自身の力だけでは取り除くことができないものも多くあります。そのため、セルフケアを社員個人の努力や自己責任に帰結させるのではなく、会社側が仕組みを整え、組織として支援していくことが不可欠なのです。(※1)

具体的なセルフケア・リフレッシュ法

不調に適切に対処するには、まず自身のストレス状態を客観的に把握し、気づくことが第一歩です。厚生労働省が提供している「5分でできる職場のストレスセルフチェック」や「疲労蓄積度セルフチェック」などのツールを日常的に活用し、自分の心身の変化に目を向けましょう。

そのうえで、仕事中やプライベートで「疲れた」と感じたとき、自分に合ったストレス解消法やリフレッシュ法を持っておくことは、メンタル不調の予防において非常に効果的です。メンタルヘルスを自身で健康に保つためには、様々なセルフケアの方法があります。ここでは、日常に取り入れやすい具体的なアクションをシーン別にご紹介します。

仕事中に疲れたと感じたときのリフレッシュ法

①今の気持ちを書いてみる(こころのSOSサインに気づく)

頭の中がもやもやして仕事に集中できないときは、今の気持ちを思い切って紙に書き出してみるのもおすすめです。自分の感情を可視化することは、単なる気分転換にとどまらず、「わけもなくイライラする」「気分が沈む」といった自分の見えないストレス(こころのSOSサイン)に気づき、客観的に把握するための有効な手段となります。

②呼吸改善やストレッチ(体を動かす)

長時間同じ姿勢で作業をしたり、仕事量や人間関係のストレスがかかる状況が続いたりすると、無意識のうちに筋肉が緊張してしまいます。席に座ったままできる簡単なストレッチで筋肉の緊張を緩めたり、「腹式呼吸をくりかえす」ことで血行を促し、心身をリラックスさせましょう。

③人との交流と笑い

誰かと話すことで不安やイライラが解消されることも多く、人との交流は大切なリフレッシュ法です。また、「失敗したら笑ってみる」といった心のゆとりを持つことも有効です。笑うことには自律神経のバランスを整え、免疫力を正常化させる効果があります。

自宅でできるストレス解消法

①良質な睡眠をとる

メンタルヘルスの基本は、何よりも「良質な睡眠」です。朝起きたときに気持ちが良く、日中に眠くならない状態を保つことが心身の健康には不可欠です。長時間の残業による夜更かしなどを避け、睡眠に悪影響を及ぼさない生活リズムを整えましょう。

②適度な運動をする

適度に体を動かすと、セロトニンやエンドルフィンといった神経伝達物質の分泌が促進されます。これにより、メンタルヘルスの向上や安定に繋がり、ストレス耐性のある心身を作ることができます。

③音楽を聞いたり、歌を歌う

自宅で好きな音楽を聞いたり、歌を歌ったりすることも、手軽で効果的なストレス解消法です。また、「なりたい自分」に目を向ける時間を作るなど、仕事から離れて没頭できる趣味や時間を持つことも心のエネルギー充電に役立ちます。

これらのセルフチェックやリフレッシュ法を日頃から意識的に取り入れることは、ストレスを感じた際に対処する「二次予防」としてだけでなく、メンタル不調そのものを未然に防ぐ「一次予防」にもつながります。一方で、飲酒や喫煙などは心身の健康に悪影響があり、ストレス解消の手段としては推奨されません。社員が正しいセルフケアを習慣化できるような制度作りに、取り組んでいくと良いでしょう。

専門機関の活用と予防

社員個人のセルフケアや、管理職による日々のフォロー(ラインケア)はメンタルヘルス対策の基本ですが、社内のリソースだけで全てを解決しようとすると限界が生じます。「社内の人には評価を気にして本音を言えない」という社員の心理的なハードルや、人事担当者・管理職自身が対応に疲弊してしまうケースも少なくありません。

そこで重要になるのが、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ「一次予防」、不調を早期に発見し適切な対応を行う「二次予防」、そして休職者の円滑な職場復帰や再発防止を支援する「三次予防」のすべての段階において、EAP(従業員支援プログラム)などの外部専門機関を効果的に活用することです。厚生労働省の指針においても、事業場が抱える問題に応じて専門的な知識を有する外部機関(事業場外資源)の支援を活用することが有効であると推奨されています。

現場で実際に寄せられる相談事例と専門家支援の効果

臨床心理士・EAPコンサルタントが対応する支援現場には、人事担当者から日々多くのご相談が寄せられます。実際に専門機関を活用することで不調を未然に防げたケースをご紹介します。

  • 「社内の面談では本音が引き出せない」(二次予防のケース)
    「最近遅刻が増え、ミスが目立つ社員がいる。面談をしても『大丈夫です』としか言わないため対応に困っている」という人事からのご相談。
    EAPの外部相談窓口を案内したところ、その社員は「実は上司とのコミュニケーションに深く悩んでおり、社内では誰にも言えなかった」と社外のカウンセラーには本音を打ち明けることができました。
    結果として、第三者である専門家が介入して状況を整理し、適切な環境調整のアドバイスを行ったことで、休職を未然に防ぐことができました。

  • 「復職の配慮やタイミングがわからない」(三次予防のケース)
    「メンタル不調で休職していた社員が復帰を希望しているが、現場がどう受け入れ、どのような配慮をすればいいか不安」というご相談。
    このケースでは、EAPの専門家が間に入り、主治医や産業医等と連携しながら具体的な復職プログラムの策定をサポートしました。
    同時に、現場の管理職への接し方のアドバイスも行ったことで、再発を防ぎながらスムーズな職場復帰を実現しました。

これらの事例からもわかるように、セルフケアは本人の努力だけで成立するものではありません。不調のサインに気づいたときや対応に迷ったときは、社内だけで抱え込まずに専門機関を頼る仕組みを持っておくことが、問題の深刻化や悪循環を防ぐ鍵となります。

企業ができるバックアップ体制

社員がいきいきと働き続けられるよう、メンタル不調の予防・支援を行うには、社員個人のセルフケアを促すだけでなく、企業側の積極的なバックアップが不可欠です。ここでは、企業が整備すべき具体的な3つの支援体制をご紹介します。

  • メンタルヘルス教育/研修の実施と「職場風土」の改善

    セルフケアを組織に定着させるためには、社員自身がメンタルヘルスに関する正しい知識やストレスへの対処法を学ぶ機会(研修など)を設けることが第一歩です。

    しかし、どれほど個人がセルフケアのスキルを身につけても、一度の研修だけで即座に習得・実践できるわけではありません。習慣化への継続的な支援が必要であり、将来ラインケア(部下のフォロー)を担う際にも、自己管理はすべての土台となります。そのため企業には、単なる手法の伝達にとどまらず、セルフケアの「考え方」そのものを組織に浸透させる姿勢が求められます(※詳細はこちらの記事で解説)。

    さらに、高めたスキルを安心して発揮できる環境がなければ、本来の効果は得られません。職場内でのちょっとした礼節の欠如(インシビリティ)が蔓延していると、社員は心理的安全性を失い、ストレスを溜め込みやすくなります。
    ピースマインドでは、単なる基礎知識の教育にとどまらず、互いを尊重し合える心理的安全性の高い職場環境をつくるための「インシビリティマネジメント研修」や「リスペクト・トレーニング」を提供しています。こうした職場風土の改善こそが、最大のセルフケア支援となります。

  • ストレスチェックの活用と定期面談

    社員一人ひとりが自身のストレス状態に気づき、客観的に把握するためのツールとして、ストレスチェックの定期的な実施と活用が重要です。
    また、その結果をもとにした定期面談を行うことで、企業側も社員のコンディションの変化をいち早くキャッチし、業務量の調整やケアの提案といった具体的なサポートに繋げることができます。

  • いつでも相談可能な窓口の設置

    セルフケアの有効な手段として「専門機関への相談」がありますが、これを個人任せにするのではなく、会社として制度化することが望ましいです。
    社内の産業医や保健師はもちろんのこと、社員が評価や周囲の目を気にせず安心して本音を話せるよう、EAP(従業員支援プログラム)などの「社外相談窓口」を設置しておくことが、不調の早期発見・早期対応に直結します。

まとめ

メンタル不調の予防においてセルフケアは非常に有効な手段ですが、決して「社員の自己責任」で終わらせてはいけません。不調の悪循環を防ぐためには、社員個人の「自律的なセルフケア」と、それを阻害しない職場風土づくりや専門サービス(EAP・研修など)を提供する「企業のバックアップ体制」の両輪が揃ってはじめて真の効果を発揮します。

社員がいきいきと能力を発揮できる組織づくりの一環として、ぜひこの機会に自社のセルフケア支援体制を見直してみてはいかがでしょうか。

ピースマインドでは、「セルフケア」、マネジメントによる「ラインケア」、社内外の「専門家によるケア」が緊密に連携し三位一体となって、社員の問題解決を支援するEAPサービスを提供しております。また、法制度に沿っており、高ストレス者のケアや職場の課題解決にも繋げていくことができるストレスチェックや、各企業に合わせたカスタマイズが可能でオンライン対応もしているメンタルヘルス研修も行っております。それぞれの企業に合わせたサービスの提供が可能ですので、是非お問い合わせください。

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参考資料

※1 厚生労働省 心の健康づくり2025
※2 厚生労働省 メンタルヘルスの4つのケアってなんだろう?
※3 厚生労働省 こころと体のセルフケア

後藤 麻友(ごとう まゆ)
後藤 麻友(ごとう まゆ)
ピースマインド株式会社  社員支援コンサルティング部 部長 EAPスーパーバイザー 公認心理師 臨床心理士 国際EAPコンサルタント(CEAP)  臨床心理学の修士号を取得後、ピースマインド株式会社に入社。EAPコンサルタントとしての臨床業務の傍ら、研究、研修、サービス開発にも従事。現在は、主にコンサルタントのマネジメントや育成支援を行っている。

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