
ストレスチェック後の集団分析の種類と活用方法を事例とともに徹底解説!
ストレスチェックを実施した後は、集団分析を行うことが推奨されていますが、
「どの分析方法を用いるべきか分からない」
「分析結果からアプローチを考えることが難しい」
といったお悩みを持つご担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、ストレスチェック実施後の集団分析の活用方法について、
事例を交えながらご紹介します。
集団分析の実施が、課題の要因の知る手がかりとなる
2015年の労働安全衛生法の改正により、従業員が50人以上いる事業所に対して、ストレスチェックを実施することが義務付けられています。
ストレスチェックの実施は、従業員が自身のストレスの状況を知り、さらに事業者が職場改善活動を行うことで、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防止することを目的としています(※1)。さらに、個人のストレスチェックの結果から集団分析を行うことで、事業場や部署単位でストレス度の特徴や要因を把握することができます。
集団分析と職場改善活動は努力義務とされているため、実行しなくても罰則はありません。しかし、ストレスチェックの実施だけでは、組織に潜むストレス要因を的確に把握し、対応することは難しいでしょう。

ピースマインドが2020年に行なった調査から、ストレスチェックの結果より高ストレス者と判定された方のおよそ半数が、前年のストレスチェックでも高ストレスの判定を受けていたことがわかりました(※2)。
このことから、多くの高ストレス者が適切なサポートが受けられず、ストレスを抱えたままである可能性があります。
このような状況を改善するためには、個人へのアプローチだけでなく、組織へのアプローチとして職場改善活動が必要になります。
今回ご紹介する「集団分析」は、具体的にどのような職場改善活動を行うのかを検討するための分析にあたる工程です。
集団分析の実施までの流れと注意点

ただし、その場合はストレスチェック受験者のうち、分析を行う単位の人数が10人以上であることが条件になります。分析結果によって個人が特定されることを防ぐため、分析の単位が10人未満の場合、分析の対象となる従業員全員の同意を得なければ、事業所に分析結果を提出することができません。
※後に解説します「仕事のストレス判定図」を分析に使用する場合は、従業員の同意なく事業所に結果を提出することが可能です。あまりにも分析の対象人数が少ない場合は、個人が特定されるおそれがあるため、実施の際は慎重に取り扱いましょう。
また、分析に用いる集団の単位は、企業全体だけでなく部署やプロジェクトチームなど、状況に応じて単位の構成を変えることができます。そのため、分析結果によって改善策を講じるべき組織の優先順位を把握することができます。
これからは、具体的な集団分析方法を活用した取り組みを事例を交えながら解説していきます。
効果的な分析方法は問題意識によって変わる
集団分析にはさまざまな方法があります。課題ごとに適切な分析方法を採用することが望ましいですが、課題によっては、どのような分析方法を採用するべきか判断することが難しい場合もあるでしょう。
そこで本記事では、集団分析から職場改善活動までの流れの例と、3つの事例をご紹介し、それぞれに対応する分析方法を解説します。
※実際にピースマインドでお受けした相談内容をもとに、プライバシーに配慮し修正を加えてまとめています。
集団の健康リスクのレベルが知りたい -ストレス判定図-
「職場のストレス度が一般レベルよりも高いのかどうかわからない」
「ストレスチェックを行なったけど、職場改善のための策を考えるべきなのだろうか」
このように職場改善活動を実施するべきかどうかわからない場合は、「仕事のストレス判定図」を用いることが効果的です。

組織のストレス要因の程度や健康問題の起こりやすさ(健康リスク)の程度を全国平均と比べて把握することができるため、自組織に対して、早急にアプローチするべきかどうかがわかりやすくなります。
それでは、「仕事のストレス判定図」を用いた、職場改善活動の検討の流れの例について見ていきましょう。
上記の例のように、「仕事ストレス判定図」を用いることで、組織の健康リスクを一目で把握することができます。ただし、全国平均と比べた偏差値だけしかわからない状態では、具体的な改善策の道筋を立てることが難しいため、より具体的な結果がわかる分析方法を組み合わせるとよいでしょう。
属性ごとの結果が知りたい -クロス集計-
「組織や役職、全体としての結果は良好だが、なぜかメンタル不調者が増えている」「ストレスチェックの結果は良好だが、社内で聞く話と一致しないところがある」
このように会社や部署全体の数値は良いが不調者の数が減らない場合は、クロス集計を用いることが効果的です。

クロス集計とは、ストレスチェックの各尺度のストレス度の得点と属性を掛け合わせる分析方法です。
属性ごとのストレス度の特徴や傾向を把握することができるため、課題に対する緩和施策や予防策の対象を選びやすくなります。
事例を用いてどのような流れで分析を実施するのか見ていきましょう。

上記の事例のように、クロス集計を用いることで、従業員のどの層にアプローチするべきかなど対象を絞ることができ、その後の問題に対する的確な施策に活用することが可能になります。
集団の傾向を細かく知りたい -クラスター分析-
「高ストレスの職場の現状を確認すると部署ごとに様子が異なるため、
それぞれの部署に対してどのような施策を展開するべきかわからない」
「高ストレス者の結果が全要素でまんべんなく悪く、予防策が検討しにくい」
このように不調者にどのようなケアが必要なのかわからない場合は、クラスター分析を用いることが効果的です。

クラスター分析とは、ある集団において、ストレスチェックの要素の得点ごとに、パターンが類似している従業員や組織をグルーピングする分析方法です。
ストレスチェックの結果の傾向が類似した従業員をいくつかのパターンとして把握することができるため、それぞれのパターンに対応するアプローチの検討につながり、施策の効果を高めやすくなります。
どのような流れで分析を行うのか、事例を見ていきましょう。

上記の事例のように、クラスター分析を用いることで、課題となっている要素別のグループにいくつか分けることができ、それぞれの課題に特化し、かつ具体的なアプローチを行うことが可能になります。
ストレス度に影響する要因が知りたい -重回帰分析-
「ストレスチェックの結果で特に悪かった要素がいくつかあるが、
どこから手を付ければいいのかわからない」
「職場改善に毎年取り組んでいる部署があるが、なかなか結果が改善されない」
このようにストレス度への要因が多岐に渡り、アプローチの方法が定まらない場合は、重回帰分析が効果的です。

重回帰分析とは、ストレスチェックの各要素がストレス度(結果指標)に与える影響を数値化して可視化する分析方法です。
ストレス度に対して特に強い影響を与える要素を把握することができるため、特定の要素に焦点を当てたアプローチを検討することができます。
こちらも事例を参考に、どのような流れで分析を実施するか見ていきましょう。

上記の事例のように、重回帰分析を用いることで、課題を改善するために着目すべきポイントを把握することができ、有効的、かつ効率的なアプローチを考えることが可能になります。
「やりがい」に関わる要素の分析もできる
また、集団分析は、ストレスチェックで得られるストレス度のデータだけでなく、他の尺度に対して活用することもできます。例えば重回帰分析を用いて、ワークエンゲイジメントに強く影響を与えるポジティブな要素を検討することも可能です。
ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態で、「仕事から活力を得ていきいきとしている(活力)」、「仕事に誇りとやりがいを感じている(熱意)」、「仕事に熱心に取り組んでいる(没頭)」の3つが揃った状態として定義されています(※4)。
どのような要素がワーク・エンゲイジメントに影響するのかを特定することで、社員の活力、熱意、没頭の状態を高めるための施策を考えることも可能になります。
ストレス度だけでなく、このような他の尺度に対しても集団分析を活用していくことで、より働きやすい職場環境を作ることができるでしょう。
まとめ
今回は、問題意識に対応した効果的なストレスチェックの分析方法についてご紹介しました。
集団分析は、職場改善活動を行う上で非常に有効な手段であると考えられます。問題意識ごとに様々な分析方法を試して、より効果的な職場改善ができるよう、集団分析を有効に活用していきましょう。

ピースマインドの「はたらくをよくする®」サービス
ピースマインドでは、「ストレスチェック義務化法案の対策」「組織の健康リスクの計測」「高ストレス者の把握と適切なサポート」「ストレスチェックの活用」等の様々なニーズにお応えして、より包括的なサポートを行っております。
具体的にはストレスチェックの実施と共に、医師面接指導の支援やそのフォローアップを行う高ストレス者ケアプラン、追加の集団分析や組織ごとの課題解決を行う職場課題解決プランをご用意しております。
特に職場課題解決プランでは、今回ご紹介した集団分析を活用して、職場における課題の解決策を提案し、実施していきます。
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参考資料
※2:ピースマインド 2020年度ピースマインドストレスチェック白書














