
ラインケアとは?社員のメンタルを守るために「人事・上司の方が」出来ること
近年、働く人々のメンタルヘルス問題は深刻化しています。厚生労働省の「令和6年労働安全衛生調査」によると、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業、又は退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%に上り、1,000人以上の事業所では91.6%に達しています。また、「令和7年度過労死等の労災補償状況」では、精神障害の労災補償請求件数は4,958件と過去最多を更新しており、その要因としてパワーハラスメントや過労、長時間の残業などの強い心理的負荷が指摘されています。(※1)
企業には従業員が安全で健康に働けるよう配慮する「安全配慮義務」があり、メンタルヘルス対策は個人の問題ではなく、企業全体で取り組むべき重要な経営課題です。その中でも、現場の管理監督者(上司)が行う「ラインケア」は、不調の予防と早期発見において極めて重要な役割を担います。
本記事では、ラインケアの基礎知識や具体的な実践アクション、そして人事担当者が取り組むべき体制づくりについて解説します。
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企業におけるメンタルヘルス対策「4つのケア」の全体像

厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、職場のメンタルヘルス対策として以下の「4つのケア」を継続的かつ計画的に実施することが重要であると定めています。(※2)
セルフケア:従業員自身が自らのストレスに気づき、予防・軽減・対処すること。
ラインによるケア(ラインケア):管理監督者が、職場環境の把握と改善、従業員からの相談対応を行うこと。
事業場内産業保健スタッフ等によるケア:産業医や衛生管理者などが、具体的な対策の企画立案や、セルフケア・ラインケアの支援を行うこと。
事業場外資源によるケア:EAP(従業員支援プログラム)などの外部の専門機関や専門窓口を活用し、支援や助言を受けること(※2)
ラインケアは、これら4つのケアの中で「現場の最前線」を担う中核的な取り組みに位置づけられます。これが機能せず対応が遅れると、部下の休職・退職(個人のリスク)を招くだけでなく、周囲の負担増による生産性低下や、安全配慮義務違反による損害賠償(会社のリスク)といった重大な損失に直結します。

【実践】管理職が行うラインケアの具体的な3つのアクション
では、管理職は現場で具体的にどう動けばよいのでしょうか。厚生労働省の指針に基づき、実践すべき3つの手順を解説します。(※2)

部下の異変(いつもと違うサイン)に気づく
ラインケアの第一歩は、部下の「いつもと違う」変化にいち早く気づくことです。日常的に部下に関心を持ち、以下のようなサインがないか観察しましょう。
・遅刻、早退、無断欠勤が増える
・仕事の能率が低下し、ミスが増加する
・残業や休日出勤が不釣り合いに増えている
・表情に活気がなく、動作に元気がない、または不自然な言動が目立つ
・報告や相談、職場での会話が極端に減る
これらの変化を見逃さず、早期に対応することがメンタルヘルス不調の重症化を防ぐ鍵となります。
実際に、英国の精神医学専門誌『The Lancet Psychiatry』に掲載された厳密な研究(Milligan-Saville et al., 2017)では、管理職へわずか4時間のメンタルヘルス研修を実施したことで、部下のメンタル不調による休職日数が約60%も減少したことが実証されています。上司が部下の異変にいち早く気付き、早期に介入することは、部下のキャリアを守る上で極めて確実な効果をもたらします。
傾聴の姿勢で相談対応・声かけを行う
部下の異変に気づいたとき、あるいは部下から直接相談を受けたときは、上司としての意見を押し付けるのではなく、部下の話を積極的に「傾聴(話を聴く)」する姿勢が重要です。
「最近疲れているようだけど、何か困っていることはない?」と声をかけ、相手の状況や悩みを否定せずに受け止めましょう。ただし、病気かどうかの判断は医師の役割であり、管理職が判断すべきではありません。過度に私生活に踏み込んだり、自分だけで解決しようとしたりせず、必要に応じて産業医や人事、社内外の相談窓口へ受診や相談を促すことが適切なラインケアです。
職場環境の把握と改善
個人のケアだけでなく、ストレスの根本原因となる職場環境を改善することもラインケアの重要な役割です。 労働時間や業務量の極端な偏りがないか、ハラスメントなどの人間関係のトラブルが起きていないかを把握し、改善を図りましょう。ストレスチェックの集団分析結果を活用し、チーム全体での業務分担の見直しやコミュニケーションの活性化に取り組むことも有効です。(※2)
また、メンタルヘルス不調により休職した部下がスムーズに職場復帰できるよう、段階的な業務復帰プランの作成や復帰後の継続的なフォローアップといった「復職時のサポート(職場復帰支援)」を行うことも、ラインケアの重要な一環です。 ※復職時の具体的な関わり方やサポートプロセスについて詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご参照ください。
現場の管理職や産業医だけでは限界も。外部支援(EAP)活用の重要性
このようにラインケアは不可欠ですが、現場の管理職だけで部下のケアを全て抱え込むには限界があります。

厚生労働省の調査(令和5年)によると、仕事や職業生活に関する強い不安やストレスを抱える労働者は82.7%に上ります。(※3)ここで、「従業員100人の職場」を想像してみましょう。このデータを100人の規模に当てはめると、社内リソースがいかに頼りにくい状況にあるかが浮き彫りになります。ストレスを抱える83人のうち、同僚や家族など「身近な人」に相談する人は多くいますが、社内の専門窓口である「人事労務担当者」に相談できたのはわずか4人、「産業医」にいたってはわずか2人にすぎません。従業員にとっては、「評価への悪影響」や「プライバシーの漏洩」への懸念から、社内では本音を打ち明けづらいのが現実です。だからこそ、企業や管理職だけの力で不調者を漏れなくケアすることには、極めて高いハードルがあるのです。
だからこそ、現場の管理職や産業医だけですべてを担うのではなく、EAP(事業場外資源)といった外部の第三者専門機関との連携が不可欠です。EAPを活用することで、従業員は忖度なく安心して悩みを相談できます。さらに、EAPはメンタルヘルス不調者への支援だけでなく、「部下へどのように声をかければよいか」「どこまで関わるべきか」といった管理職自身の悩みを専門家に相談できる窓口としても活用できるという大きなメリットがあります。

人事担当者が取り組むべき連携と体制づくり
組織全体でメンタルヘルス対策を推進し、効果的なラインケアを実現するために、人事担当者が取り組むべき体制づくりについて解説します。
社内の連携体制づくりとEAPの周知
管理監督者が部下の異変に気づいた後、スムーズに産業保健スタッフやEAPへ繋ぐための社内連携フローを構築しましょう。また、EAPは導入するだけでなく、従業員や管理職が必要なタイミングで活用できるよう、その役割や利用時のプライバシー保護(守秘義務)について社内に継続的に周知することが重要です。
ラインケア研修の企画・導入
管理職がラインケアの重要性を正しく理解し、傾聴スキルや不調者への対応方法を身につけるためには、「ラインケア研修」の継続的な実施が欠かせません。自社の現場の課題に合わせた実践的な教育機会を提供し、組織全体のメンタルヘルスリテラシーを向上させましょう。
まとめ
社員のメンタルヘルスを守るには、現場の上司による「ラインケア」と、人事による体制づくりが不可欠です。しかし、社内リソースだけで全てを抱え込むには限界があります。
だからこそ、高い専門性と客観的な視点を持つ外部の専門機関と連携し、組織全体で対策を進めることが、社員と企業を守る最善の選択肢です。
ピースマインドによる「ラインケア支援」のアプローチ
ピースマインドは、20年以上の実績に基づくEAP(従業員支援プログラム)を通じて、社内だけでは解決が難しいメンタルヘルス課題に寄り添います。 単なるカウンセリング窓口としてではなく、現場のラインケアが自律的に機能するよう、以下のサポート体制を整えます。
「上司の孤立」を防ぐ管理職相談
「部下にどう声をかければいいか分からない」「関わり方に迷う」といった際、管理職自身が専門家にいつでも相談・対処法のアドバイスを受けられます。
プライバシーが厳守された「第三者の相談窓口」
社内には相談しづらいと感じる従業員のために、匿名性を担保した複数の相談チャネル(ホットラインやオンライン面談など)を提供。安心して本音を話せる環境を構築します。
休職から復職までの一貫した連携
不調の早期発見(一次予防)から、復職時のスムーズな職場復帰支援まで、人事担当者や産業医と密に連携した一気通貫のサポートを行います。
EAPは、従業員のためだけのサービスではなく、現場を支える管理職や人事担当者様の「盾」となるインフラです。自社のラインケア体制をより強固にしたい、休職予防を本質的に進めたいという企業様は、どうぞお気軽にご相談ください。













