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臨床心理士監修 | メンタルヘルスとは?定義や具体的な対策を解説

新型コロナウイルスの影響を受けて生活スタイルが変化する中で、最近耳にすることが増えているメンタルヘルス。改めて、メンタルヘルスとはどのようなものなのか、メンタルヘルスのトレンドの変遷から、実際に何をするのかまで、お伝えします。

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<監修者プロフィール>

渋谷 英雄
ピースマインド株式会社 ウェルビーイングラボ 所長
公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会 臨床心理士、公認心理師、国際EAP協会認定 国際EAPコンサルタント、日本スポーツ協会「公認スポーツ指導者」コーチ


目次[非表示]

  1. 1.メンタルヘルスとは?
    1. 1.1.メンタルヘルスの定義
    2. 1.2.欧米発祥の職場のメンタルヘルス
    3. 1.3.日本における企業のメンタルヘルス対策の変遷
  2. 2.メンタルヘルス対策において重要なケアの種類
    1. 2.1.1. セルフケア
    2. 2.2.2. ラインケア
    3. 2.3.3. 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
    4. 2.4.4. 事業場外資源によるケア
  3. 3.メンタルヘルス対策支援サービスの具体的な利用方法
    1. 3.1.EAP(従業員支援プログラム)の活用
    2. 3.2.【一次予防】メンタル不調を未然に防ぐ
    3. 3.3.【二次予防】早期発見と対処
    4. 3.4.【三次予防】メンタル不調者の職場復帰支援
  4. 4.まとめ
  5. 5.ピースマインドがご提供するソリューション
    1. 5.1.ピースマインドがご提供するサービス
  6. 6.【参考】メンタルヘルスに関する情報
    1. 6.1.参考資料


メンタルヘルスとは?

メンタルヘルスの定義

メンタルヘルスとは、精神面における健康のことを指します。従来は、心の不調を治療し、再発を防ぐための対策が主だったこともあり、精神疾患からの回復に注目が集まっていました。

しかし近年では、社会・職場・家庭等の環境に適応できているか、いきいきと仕事ができているかといった、よりポジティブな意味で用いられることも増えてきました。また、主観的幸福感やワークエンゲージメントという言葉に象徴されるようなウェルビーイング「より良く生きる」上でのポジティブなメンタルヘルスへの関心も高まりを見せています。(※1)


欧米発祥の職場のメンタルヘルス

心理療法は精神疾患を治療するための方法であったため、19世紀から20世紀初頭の心理学では精神疾患からの回復が主なテーマとして扱われてきました。

その後アメリカを中心に、1950年代に第二次世界大戦で心的外傷を負った帰還兵士たちの心のケアや、ベトナム戦争後の不況に伴うアルコール依存症や薬物依存、うつ病などに陥る経営者・労働者のケアという形でEAP(従業員支援プログラム)が普及します。

EAP導入による生産性の向上が確認されたことで、次第に、人間関係やうつ病、適応障害などへと領域を拡大してきました。現在は、日本でも多くの企業にEAPが導入され、メンタルヘルスを維持向上させるための役割を果たしています。

また最近では、メンタルヘルスの向上に関する研究が多くなされています。研究によってメンタルヘルスと労働生産性の関係が明らかになってきたことで、世間一般でもワーク・エンゲージメントや幸福度の向上を目指すためのプログラムが注目されています。(※1)


日本における企業のメンタルヘルス対策の変遷

日本では、1955年ごろ結核療養者の激減をきっかけに、職場における健康管理の重点が、結核から、成人病と精神障害に移行しました。しかし、当時の日本では、精神障害に対する偏見が根強く、問題を個人化する風潮があったことで、メンタルヘルスの重要性は浸透していない状況でした。

1978年、過労死という言葉が提唱される頃になると、ストレスとメンタルヘルスの関係性に注目が集まるようになり、社会の問題として認知されるようになりました。1991年のバブル崩壊後、1998年に日本の自殺者数が初めて3万人を超えると、2000年8月には厚生労働省が、労働者のメンタルヘルス対策を推進するため、「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を策定し、その周知徹底を図り、多くの企業でメンタルヘルス対策が行われるようになりました。

2008年のリーマンショック後には、うつ病患者が増加したことで、不調に気づくのための心理教育や復職支援といった新たなニーズが生れ、メンタルヘルス支援を拡充する動きが高まりました。また、2015年12月にはストレスチェック実施が義務化されました。

更に2020年の新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、現在では、環境不適応を乗り越えるためのプログラムやマインドフルネスといった、日常的なメンタルヘルスケアが注目されています。このことからは、メンタル面での問題の有無に関わらず、より良い精神状態を生み出すことへの関心の高さが伺えます。

このように、近年我々にとってより身近となってきたメンタルヘルスですが、具体的にどのようなことを行うのか、厚生労働省の定めた『労働者の心の健康の保持増進のための指針』を参考に、必要とされている取り組みについて見ていきたいと思います。(※2)


メンタルヘルス対策において重要なケアの種類

国は『労働者の心の健康の保持増進のための指針』の中で、メンタルヘルス対策について4つのケアを行うことが大切だとしています。

4つのケア


1. セルフケア

私たちが自分自身で行うことのできるケアです。働く人が自らのストレスに気付き、予防対処し、また事業者はそれを支援します。セルフケアではストレスについての理解や自分自身の心身の不調にいち早く気づくこと、日常的なストレスへの対処がポイントになります。

Rest(休息、休養、睡眠)Recreation(運動、旅行のような趣味娯楽や気晴らし)Relax(ストレッチ、音楽などのリラクゼーション)の3Rを上手に組み合わせて、ストレスと上手く付き合っていくことが大切です。(※3)

職業性ストレスモデル


2. ラインケア

管理監督者が行うケアです。日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行うことなどが含まれます。「部下の健康状態を把握する」上で大切なのは、管理監督者が「いつもと違う」部下に早く気が付くことです。部下とのコミュニケーションを積極的に取ることで、部下の異変に早く気が付くことができます。日頃の挨拶やちょっとした会話や1on1ミーティングなど、部下とのコミュニケーションを大切に しましょう。(※4)


3. 事業場内産業保健スタッフ等によるケア

企業の産業医、保健師や人事労務管理スタッフが行うケアです。労働者や管理監督者等の支援や、具体的なメンタルヘルス対策の企画立案を行います。事業場内メンタルヘルス推進担当者は、必ずしも病気に関する個別の相談対応を行う必要はありません。産業医等の助言・指導や事業場外資源を用いて実務を担当します。(※5)


4. 事業場外資源によるケア

会社以外の専門的な機関や専門家を活用し、ケアを受けることです。Employee Assistance Program:EAP(従業員支援プログラム)もここに含まれます。職場が抱える問題や求めるサービスに応じて、専門的な知識を有する各種事業場外資源を活用する場合や、働く人々が相談内容等を事業場に知られることを望まない場合、事業場外資源を活用することは効果的です。(※5)


メンタルヘルス対策支援サービスの具体的な利用方法

EAP(従業員支援プログラム)の活用

外部EAPとの連携

メンタルヘルス対策は効果測定が難しく、調子を崩して仕事を休むこととなると、復職までの道のりには相当な時間やコスト、労力を必要とします。従って、従業員全体の健康管理全般を担う社内健康管理スタッフだけではカバーしきれない面が残ります。

その点、外部EAPを活用することは、企業の健康管理全般の質を落とさず、充実した支援体制を整備することを可能にします。また、メンタルヘルスに特化した専門家の視点から助言を受けることが、健康管理スタッフの支援につながる場合もあります。


3つの予防

またEAPでは、一次予防から三次予防までそのフェーズに応じた対応、外部の専門医療機関などのネットワーク紹介など多様なプログラムが用意されています。企業側が「外部EAPをどのように活用して社内のメンタルヘルス体制に組み込むか」を検討し、外部EAPとの定期的な会議により方向性を共有していくことで、自社のニーズに合ったEAPを導入することが出来ます。(※6)

ここからは、3つの予防に沿ったEAPサービスを見ていきましょう。


【一次予防】メンタル不調を未然に防ぐ

一次予防の段階では、職場全体や個人のストレス度を測定し把握するためのストレスチェックなどのサーベイや研修が有効です。




ストレスチェック

4つのケア
2015年12月に施行されたストレスチェック制度では、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行います。ストレスチェックでは、本人にその結果を通知して自らのストレスの状況について気づきを促し、高ストレス者に対して医師面接指導を促す個人に向けたアプローチと、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善につなげる組織に向けたアプローチを行います。EAPサービスを提供する会社では、ストレスチェックの実施から分析・職場改善に至るまでの施策立案をサポートします。



研修
研修を通してメンタルヘルスケアの方法や知識について学ぶことで、一次予防につなげます。またストレスチェックを経て、顕在化した課題に取り組むために必要な研修を行うケースもあります。内容については、階層別やテーマ別というように受講者のニーズに合わせた形で提供されていることも多いです。例えば、メンタルヘルス対策をテーマに役員・人事向けの「経営課題としてのメンタルヘルス対策の進め方」、管理監督者向けの「部下のメンタルヘルスマネジメント研修」、一般職向けの「ストレスマネジメント研修」といったようにカスタマイズされた研修などがあります。


【二次予防】早期発見と対処

メンタル不調の早期発見には、セルフケアやラインケアの他にも、「誰かに相談したい」という時に、気軽に相談することが出来る窓口の設置が有効です。


外部EAPと契約している場合、お勤め先から告知されている窓口からご希望のチャネルを選択し、ご利用することができます。日本語以外でのご相談やより専門性の高い場合にも対応できる窓口などサービスによって様々な特徴がありますが、相談方法としては、予約相談とホットラインの大きく2つに分けられます。



予約相談
予約相談では、事前予約を経て、相談内容に基づく適切なカウンセラーが対応します。目標やテーマの設定の上、短期解決を目標に進めていくものです。対面のカウンセリング以外にも、オンライン対面カウンセリングや電話カウンセリング、メールでのカウンセリングなど様々な形式があります。



ホットライン
ホットラインが設置されている場合には、その場ですぐに相談することが可能です。オンスポットで対応が可能な相談員、専門家が待機しています。今すぐ相談したい時に適しています。


【三次予防】メンタル不調者の職場復帰支援

三次予防では、休復職者の支援・再休職防止のための環境作りなど、専門家の力が必要となる場面が多々見られます。また、労働災害や天災の発生といった非常事態にも対応する必要があります。



休職・復職者支援
休職前から復職後の再発防止まで各段階に応じて専門家がサポートします。個別社員の職場復職プラン立案、管理職に対して復帰後の社員へのフォローの仕方をアドバイスによって再休職を防ぎます。


 
クライシスマネジメント
EAPでは、災害や職場の事故等、予想外の事故・惨事発生時からの従業員と組織のパフォーマンス早期回復についての支援も行います。予防策としての危機管理に関する研修、発生後の対策としての緊急ケアというように、個別ケアとグループケア両方の形式で、従業員と組織のパフォーマンスの早期回復をサポートします。


まとめ

企業が提供するメンタルヘルス対策は、働く人個人のメンタルヘルスケアのために活用することができる最も身近な手段だと言えます。ご自身や組織内に不安や悩み、課題がある時、またメンタルヘルスやウェルビーイングに関する知識やアドバイスが欲しい時など、様々な場面でご活用をご検討ください。


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EAP | 従業員支援プログラム
ストレスチェック -「職場とココロのいきいき調査®」
研修


【参考】メンタルヘルスに関する情報

厚生労働省のe-ヘルスネットやこころの耳では、メンタルヘルスをはじめとした健康情報や用語がわかりやすく解説されています。
e-ヘルスネット(厚生労働省)
こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト


参考資料


※1:e-ヘルスネット
※2:荻野 達史『産業精神保健の歴史(1)― 1950年代~1970年代を中心に ―』
※2:荻野 達史『産業精神保健の歴史(2)― 1980年代から1990年代前半まで ―』
※2:荻野 達史『産業精神保健の歴史(3)―1990年代後半から現在まで―』
※3:e-ラーニングで学ぶ 15分でわかるセルフケア
※4:e-ラーニングで学ぶ 15分でわかるラインによるケア
※5:e-ラーニングで学ぶ 15分でわかる 事業場内産業保健スタッフ等によるケア
※6:心の健康づくり事業例

注目の資料


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