ハラスメント法改正で何が変わった?企業に求められる対応とは

2020年6月、労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)をはじめ、ハラスメント対策に関する複数の法律が改正、施行されました。中小企業における施行も、2022年4月に迫っています。一連の法改正では、パワーハラスメント対策の義務化に加え、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等ハラスメントへの対策強化についても明記されました。

ハラスメント対策に関わる方の中には、各種ハラスメントと法律との対応や、法改正に伴い求められる対応について、いま一度整理したいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、ハラスメント対策に関する法改正の内容や、事業主に求められる対応について解説します。
 

監修者プロフィール
吉野 学
ピースマインド株式会社 事業推進室 室長 兼 組織ソリューション部 コンサルタント/公認心理師・臨床心理士・キャリアコンサルタント
100社を超える顧客に対し、ハラスメント対策などの施策の企画・提案、改善活動支援を行っている。

ハラスメントに関する法改正の流れ

都道府県労働局に寄せられる相談のうち、「いじめ・嫌がらせ」に関するものは年々増加しています。2019年度には8万件を超え、8年連続でトップの相談内容となっています(※1)。こうした状況から、ハラスメントへの対策は喫緊の課題とされてきました。

ハラスメントの増加 民事上の個別労働紛争 主な相談内容別の件数推移
出典:民事上の個別労働紛争相談件数の推移(相談内容別)

そして2019年、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律が成立し、労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法がそれぞれ改正されました。


ハラスメントに関する法改正の内容

職場における3大ハラスメントとして、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント が挙げられます。

※妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントには、妊娠や出産に関するマタハラ(マタニティハラスメント)、育児休業等の利用に関するパタハラ(パタニティハラスメント)などがあたります。

今回の法改正により、事業主にはパワーハラスメント対策の義務化に加え、セクシュアルハラスメントや妊娠・出産・育児休業等ハラスメントへの対策の強化が求められました。

各ハラスメントへの対策の根拠となっている法律と、法改正によって追加された事項は以下の通りです(※2)。

各ハラスメントの対策根拠なっている法律と法改正で追加された事項

ハラスメントに関する法改正により、事業主に求められる対応

今回の法改正に伴い、「事業主が雇用管理上講ずべき措置」が明確に定められました。以下では、事業主に義務付けられている3つの措置(※3)を取り上げ、そのポイントを解説します。

1.ハラスメントに対する事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

各ハラスメントの内容についての啓発や、ハラスメントを行ってはならない旨の周知が義務付けられています。さらに、ハラスメントを行った者への厳正な対処について規定を設け、周知することも必要です。

また、各ハラスメントの内容に関連して、ハラスメント発生の背景となりうる要因が指摘されています。

例えば、パワーハラスメントでは労働者間のコミュニケーションの問題、セクシュアルハラスメントでは性別役割分担意識に基づく言動、妊娠・出産・育児休業等ハラスメントでは妊娠、出産、育児休業等に対する否定的な言動が、要因として挙げられます。

コミュニケーションの問題の例
・否定や批判が多い
・感情的な叱責

性別役割分担意識に基づく言動の例
・「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」などの発言
・酒席で、上司の側に座席を指定したり、お酌等を強要する

妊娠、出産、育児休業等に対する否定的な言動の例
・休業制度の利用を否定、非難するような発言
・不妊治療に対する否定的な発言

コミュニケーションの特徴や普段の言動を変えることは容易ではありませんが、ハラスメントに関する知識を身につけ、自らの言動を振り返ることで、少しずつ改善できると考えられます。

ハラスメントに関する知識向上
まずは、どのような言動がハラスメントに該当するのか、ハラスメントの定義や事例を通して学ぶ必要があります。

自らの言動に対する気づきを得る
自分の言動を振り返り、相手の視点から言動を捉えなおす方法をご紹介します。

・チェックリストなどを用いて、自らの言動を振り返る
ハラスメントに該当する言動をとっていないかチェックします。言動を振り返り、気づきを得る機会になります。

・ロールプレイ型の研修で、相手の立場を体験する
例えば上司・部下役を設定したロールプレイの中で、自分の言動を受ける側の立場を体験します。ハラスメントについて知識レベルだけでなく、体験レベルでの理解が得られる方法です。

2.ハラスメントに関する相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

3大ハラスメントに共通して、ハラスメントにつながりうる言動を含め、幅広く相談の対象とすることが重要とされています。相談への対応に際しては、二次被害を防ぐために、窓口担当者への研修が必要です。窓口の担当者には、適切に相談に応じることが求められます。

相談者と接する際には、まず相談者の気持ちを丁寧に受け止めるようにしましょう。その上で、必要に応じて専門家につなぐことが重要です。

気持ちを受け止める
まずは相談者の気持ちを受け止めることが重要です。事実関係の確認だけではなく、相談者が感じていることへの配慮を心がけましょう。感情を受け止めるための聴き方として、傾聴のスキルが役立ちます。相談者の話に真摯に耳を傾け、気持ちを汲み取ります。「お辛かったのですね」など、汲み取った気持ちに対して共感を示すことで、相談者は安心して話すことができます。

専門家につなぐ
担当者による対応が困難な場合もあると考えられます。その際には、無理せず適切な専門家につなぐことが重要です。

3.職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

3大ハラスメントに共通して、迅速に対応できるように予め対応方法を決めておくことが重要とされます。相談窓口と個別事案に対応する担当部署との連携や、対応の手順など、具体的に定めることで対応の遅れを防ぎます。

当事者に対する適切な措置の実施
ハラッサー、ハラッシーの両者に適切に対応することが求められます。ハラッサーに対しては、自らの言動がなぜハラスメントとされたのか理解してもらうことが重要です。ハラッシーに対しては、被害に伴う不調への対応など、配慮と支援が重要です。

再発防止策の実施
ハラスメント防止に向けた方針を改めて明示し、研修や講習を実施します。ハラスメントに関する相談が寄せられた場合には、たとえ事実関係の把握ができなかったとしても、防止対策を再点検しましょう。

※罰則について
改正法には、法律に違反した場合の罰則は定められていません。ただし、法律の施行に関して必要があると認められた場合には、厚生労働大臣が事業主に対して、助言、指導又は勧告をすることができます。事業主がこの勧告に従わなかった場合には、その旨が公表される可能性もあります。

まとめ

今回の法改正により、パワーハラスメント対策が事業主の義務となりました。さらに、セクシュアルハラスメントや、妊娠・出産・育児休業等ハラスメントへの対策も一層の強化が求められるようになりました。

ハラスメントに関する研修や相談窓口の体制づくりなど、講じるべき措置は多く、社内での対応が難しいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ピースマインドは、ハラスメントの予防から対応まで、トータルで支援するサービスを提供しています。ハラスメント対策に課題をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。

参考資料
1.厚生労働省「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します
2.女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等 の一部を改正する法律(令和元年6月5日公布)の概要
3.職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!

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