ニュースリリース

【調査分析】日本における外資系企業のメンタルヘルスサービス利用調査 ~「ハラスメント」相談は、日系に比べて3倍以上も~

企業向けに「はたらくをよくする®」支援事業を展開するピースマインド株式会社(本社:東京都中央区、社長:荻原英人、以下「ピースマインド」)は、外資系企業の従業員がどのようなストレスや悩みを抱えているかの実態を明らかにするため、「日本における外資系企業のメンタルヘルスサービス利用調査」を実施し、相談窓口に寄せられる相談傾向を分析しました。

 


「日本における外資系企業のメンタルヘルスサービス利用調査」実施の背景

コロナ禍を経て、テレワークは、日本国内でも急速に進み、定着への一途をたどっていますが、外資系企業、とりわけ多国籍企業においては、上司がシンガポールや中国、香港等の日本国外に常駐している等、テレワークが慣習として先駆けて行われてきました。

これまで当社に寄せられた相談内容を概観すると、外資系企業では、上司・部下の関係においても日本法人を越えて地域をまたぎ、リモートでのやり取りがメインであること、さらに管理職業務の概念が異なる外国人上司に対して、現場で起こる問題への理解を求める難しさ、といった職場のコミュニケーションにおける課題が見られています。また、コロナ禍の影響による業績不振、日本法人内やチーム内で起こる人間関係などの課題を上司に露呈させることで、PIP(Performance Improvement Plan:業務改善)を経て退職勧奨につながるのではないか、といった恐れのあまり、相談すらできないといった状況もあります。
 

これらの背景には、英語をはじめとした外国語でのコミュニケーションの難しさ、上司の管理職としてのスキル不足、日本の労働基準への知識のなさ、部下のアサーション力不足が相まっていることが想定されます。また、従業員の心身への影響が及ぶ際であっても、言葉の壁、文化の壁が介入を難しくしているとも考えられます。
 

このように課題は散見しているものの、外資系企業で働く常勤労働者数は、日本の全労働人口の数1%に満たないという経済産業省の外資系企業動向調査(※1)が示す通り、その母数の少なさから日本における外資系企業の従業員がどのようなストレスや悩みを抱えているかは調査・研究対象になりにくく、既出のステレオタイプの実態報告では、その内実があまり語られていません。
 

そこでピースマインドでは、日系・外資系いずれの企業からも多くの相談を受けるメンタルヘルスの専門企業として、これまで掘り下げられてこなかった外資系企業のストレス動向を明らかにすることを目的として、「日本における外資系企業のメンタルヘルスサービス利用調査」を実施しました。
 



外資系企業は、「プライベート」に関する相談が多い

はじめに、外資系企業と日系企業の相談傾向について統計的な分析を行った結果、外資系企業における相談は、「プライベート」に関する相談が半数以上を占め、日系企業に比べて、割合が多いことがわかりました(図1)。
 

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【図1】外資系企業と日系企業の相談内容割合

 

¹)「職場」に関する相談:「休職・復職問題」、「職場のストレス、仕事の質や量といった仕事の問題」「雇用や組織全体に関する組織の問題」、「職場の対人関係」、「キャリア・人材開発」、「ハラスメント」、「クライシスマネジメント=労災・事故、仕事上での離別・死別体験といったクライシスマネジメント」

²) 「プライベート」に関する相談:「『プライベートの対人関係』=職場以外におけるセクハラ、パワハラ、いじめ、いやがらせ、家族・パートナーへの暴力・虐待等など」、「『生活問題』=法律、金銭、介護、子どもの教育、仕事と家庭の両立、育児相談、住環境、海外生活、本人の学業・進路・就職など」、「『健康問題』=自身や家族・パートナーの身体的健康・メンタルヘルスなど」


 

外資系企業においては「家族」に関する相談が多く、仕事への影響を及ぼす可能性も

さらに「プライベート」の具体的な相談内容を掘り下げるため、KHコーダーを用いたテキストマイニング(※2)による分析を実施した結果、「生活」に関する問題が、日系企業に比べて約1.8倍多いことがわかりました(図2)。「生活」の中分類は、法律に関る問題、金銭問題、介護問題、子どもの教育問題、仕事と家庭の両立、育児相談、住環境、海外生活、本人の学業・進路・就職など、多岐にわたる問題が含まれますが、テキストマイニングによるさらなる深堀り分析をした結果、家族の関係性が詳細に語られていることが明らかになりました。こうしたことから、外資系社員にとって「プライベートの悩み」では、「配偶者、家族関係について」が多く、プライベートでの人間関係がストレスに影響を及ぼしていることがわかりました。

また、「家族」の中心性が高く、同時に「上司」との共起ネットワーク上にある「言う」という単語との関連性が示されていることから、プライベートの人間関係の仕事への影響について、上司から理解を得にくいという、特徴的な結果が窺われました(図3)。
 

先行研究で宮原(2019)(※3)は、外資系企業の特徴を「コミュニケーションをとても重要視している」、「コミュニケーションが企業を支える根幹だと考えている節すらある」と、指摘していますが、これらは、業務上のコミュニケーションに重きが置かれています。一方で、仕事に影響を及ぼしうる「家族」への配慮を得ることへの難しさによるワークライフバランスの維持の難しさに課題があると推察されます。
 

しかしながら、個人的な内容にも及ぶ家族の問題に外資系企業が介入するには限界があり、企業としてできることの一つに外部相談機関(EAP:従業員支援プログラム)の情報や利用促進、従業員には、自発的なセルフケアが一層求められているといえます。
 

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【図2】外資系企業と日系企業の「プライベート」に関する相談内容と割合
 

1)健康 : 「自身、もしくは、家族・パートナーの身体的健康・メンタルヘルス」
2)生活 : 「法律に関る問題」、「金銭問題」、「介護問題」、「子どもの教育問題」、「仕事と家庭の両立」、「育児相談」、「住環境」、「海外生活」、「本人の学業・進路・就職など」
3)プライベートの対人関係 : 「家族・パートナー関係」、「その他の対人関係」、「ストーキング」、「脅迫」、「暴力行為」、「職場以外におけるセクハラ」、「家族・パートナーへの暴力・虐待」、「プライベートでの離別・死別体験」、「職場以外のパワハラ」、「いじめ・いやがらせなど」
 

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【図3】外資系社員全体の相談内容 共起ネットワーク図



外資系企業の「職場」に関する相談は「対人関係」「ハラスメント」が多く、「ハラスメント」相談は、日系に比べて3倍以上も
 

「職場」に関する相談内容の割合を比較したところ、外資系、日系両企業共に、「仕事に関する相談」が全体の4割以上、次いで「対人関係」に関する問題が2割以上で大差はなかった一方で、「ハラスメント」に関する相談は、外資系は日系に比べて3倍以上多い結果となりました(図4)。さらに、テキストマイニングでは、「上司」と「関係」「相談」の各単語に関連性が示されたことから、外資系企業においては、上司との関係性や上司との相談の難しさが窺われました。

 

ニューズウィークの実態調査(※4)では、外資系企業の「『ドライ』な人間関係、といったステレオタイプとは裏腹に、『ウエット』な上下関係が存在し、昇進や解雇の決定には、上司との同盟関係が求められる」としています。こうしたことから、たとえば、日系企業の上司に比べて人事裁量や権限を持っているとされる外資系企業の特徴から、上司への根回しや忖度による上司との強固な関係構築が求められるといった、カルチャー的側面が、ハラスメントに影響している可能性が示されました。
 

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 【図4】外資系企業と日系企業の「職場」に関する相談内容と割合


※相談内容の詳細は、以下の通りです。
1)クライシスマネジメント : 「労災・事故」、「仕事上での離別・死別体験など」
2)ハラスメント : 「セクハラ」、「パワハラ・アカハラなど」
3)キャリア・人材開発 : 「キャリア」、「人材開発」
4)職場の対人関係 : 「仕事上の対人関係」、「職場の対立関係など」
5)組織の問題 : 「雇用に関する問題」、「組織自体の問題など」
6)仕事の問題 : 「職場のストレス (仕事の質や量)など」
7)休職・復職問題 : 「休職・復職問題など」



外資系企業の従業員の精神的健康度を維持・向上させるための対策は

エリン・メイヤー(2015)は『異文化理解力』の中で「人間関係が良い意味でドライ、同調や和よりも、ローコンテクスト、物事の決断はトップダウンであることの反映とも言える」と述べ、外資系企業には、日系企業に比べて、ポジティブな側面もあります。たとえば、「仕事」に関しては、外資系企業は日系企業に比して、相談比率が低く、この背景として、職務内容書(Job Description)、標準作業手順書(SOP:Standard Operating Procedures)、業務仕様書(SOW:Statement of Work)が存在し、職責や手順が明確であること、Job型雇用といった雇用形態といった、多側面が推測されます。「職場の人間関係」に関しては、直接的レポーティング(Direct Reportingもしくは Solid line reporting)、間接的レポーティング(Functional reportingもしくは dot reporting)といったように、指揮系統(Reporting Line)が明確化されています。

このように、外資系企業のメリットともいえる一面がある一方で、本調査によって、外資系企業が抱える特徴的な課題があり、外資系企業における従業員の精神健康度を維持・向上させるメンタルヘルス対策の施策は、日系企業のそれとは異なるアプローチが必要であろうことが明らかとなりました。
 

まず、外資系社員の「はたらくをよくする®」ためには、仕事のみならず、プライベートに関することが、就労のストレス度を押し上げる可能性があることが、新たな知見として示されました。プライベートな出来事から生じる心身状態は、従業員自身のリスクのみならず、業務のパフォーマンスにも影響します。しかしながら、企業が手を差し伸べられる範囲には限界があります。こうしたことから、従業員が気軽に安心に相談ができるリソース提供、例えば、EAPの利用促進といった、充分な対策が従業員のパフォーマンス維持・向上に有効でしょう。
 

次に、職場においては、日系企業とは異なる特徴的な人間関係に基づいた「職場の人間関係のサポート」、「ハラスメント対策」が、企業の従業員に対する安全配慮や企業リスクを回避のみならず、従業員全体の精神健康度の維持・向上に役立つことでしょう。
 

EAPの導入によって、そのような企業でカバーできない従業員のプライベートな課題への支援を提供することができ、職場では、上司の部下への接し方、育成、管理に関する相談、部下にとっては、レジリエンス力向上、コミュニケーションスキル、アサーション力の獲得、改善を目的とした、個別カウンセリングや集団向け研修などをはじめとした支援の提供が可能になります。(別紙1に「外資系企業の特徴的な困りごと支援のポイント」、別紙2にEAP(従業員支援プログラム)の活用で相談者の課題解決支援をした事例をご紹介しておりますのでご参照ください。)
 

※1 経済産業省 貿易経済協力局 投資促進課『第53回 令和元年(2019年)調査結果(平成30年度(2018年度)実績)2018年度の我が国外資系企業動向のポイント(第 53 回外資系企業動向調査(2019 年調査)の概況)』https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/gaisikei/result/result_53/pdf/2019gaikyou.pdf(参照 2021-04-14)
※2 テキストマイニングは、テキストデータにおける単語や文節の出現の頻度、共出現の傾向などを解析する手法。
※3 宮原伸生『外資系で自分らしく働ける人に一番大切なこと』(2019年、ダイヤモンド社)
※4 ニューズウィーク日本版編集部『外資系で生き残る処世術(ニューズウィーク日本版e-新書No.6)』(2013、CCCメディアハウス)



【参考情報】
● ピースマインドのEAP(従業員支援プログラム)
https://www.peacemind.co.jp/service/eap
● 外国人社員の相談の約7割はプライベートに関する悩み~「日本ではたらく外国人社員のメンタルヘルスサービス利用調査」
https://www.peacemind.co.jp/newsrelease/archives/237

【調査概要】
● 調査対象期間: 2018年4月~2019年3月
● 調査方法  : 当社EAP(従業員支援プログラム)サービスの利用実績から、今回の調査に適合するものとして抽出した4224件の相談内容を対象に日系企業、外資系企業といった企業形態ごとに分析
● 調査実施者:ピースマインドEAPコンサルタント:黒田隆太、須藤実璃、岩﨑優里

【取材等のお問い合わせ先】
ピースマインド株式会社 事業推進室 ブランドコミュニケーション
電話 03-3541-8660
メール press@peacemind.co.jp
担当 末木
お問合せフォーム https://www.peacemind.co.jp/contact/form


【プレスリリース】20210713_日本における外資系企業のメンタルヘルスサービス利用調査.pdf
【プレスリリース添付資料】別紙1_外資系企業の特徴的な困りごと支援のポイント.pdf
【プレスリリース添付資料】別紙2_EAP(従業員支援プログラム)の活用事例.pdf


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