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主治医の診断書だけではダメ?産業医面談を行うべき理由とポイントを解説!

「復職に関して主治医と産業医の意見が異なっていて、どうしたら良いのか分からず困っている」
「診断書をもとに復職させたが、再び休職してしまったりパフォーマンスが上がらない」
といったお悩みをお持ちではないでしょうか?

本記事では従業員が復職するにあたって、産業医の復職対応への関わり方と連携する際のポイントをご紹介いたします。

<この記事を読むと分かること>
・復職する際に産業医面談を行うメリット
・産業医と連携して復職対応をする際のポイント

目次[非表示]

  1. 1.復職における産業医の関わり方
  2. 2.復職の困りごとと対応のポイント
    1. 2.1.Q1:主治医と産業医の見解が異なり、復職判断が上手くいかない
    2. 2.2.Q2:復職後もパフォーマンスが上がらず、再休職してしまう
    3. 2.3.対応のポイント
  3. 3.まとめ
  4. 4.ピースマインドの提供する産業医業務受託サービス



復職における産業医の関わり方

休職していた従業員が復職するにあたって、産業医は管理監督者や人事労務担当者の働きを専門的立場から支援し、助言・指導を行います。具体的にはどのように関わるのでしょうか。
下のフローを使いながら解説していきます。


従業員 復職 フロー


①主治医による職場復帰可能の判断
不調が回復してきたら、まずは主治医の診察を受けにいきます。そこで主治医が職場復帰が可能であると判断した場合、復職可能であるという診断書をもらいます。診断書には、就業上の配慮に関する主治医の意見を記載してもらいます。


②職場復帰の可否の判断
従業員が復職の意思を示し、主治医から復職可能であるという診断書を得た後に、産業医と復職が可能かどうか検討する面談行います。
この復職面談では以下のことを確認します。

・復職意思
・生活リズム
・出勤出来るか
・業務遂行能力の回復度
・再発防止のための取組み

産業医はこれらについて確認をとった後、企業が復職の可否を判定出来るように情報を提供します。その際には、プライバシーに配慮出来るよう「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」(※)を用いるなどの方法で情報交換を行うことが重要です。

職場復帰支援に関する情報提供依頼書様式例(厚生労働省 こころの耳)


③職場復帰支援プランの策定
当該社員への復職の意思の確認、主治医への意見聴取、産業医による従業員の状態や職場環境の評価の結果、企業が復職可能であると判断した場合、最終的な復職決定に向けて職場復帰支援プランを策定します。

​​​​​​​具体的には、職場復帰日をいつに設定するのか、勤務時間や業務量など就業上で配慮すべき点(制限事項)は何なのか、配置転換や異動など人事労務的視点から行うことはあるのか、フォローアップはどのように行うのか、などを検討します。

産業医は、診断書の内容だけでは不十分な場合、従業員の同意を得た上で、必要な内容について主治医からの情報や意見を収集します。また職場復帰支援プランの作成にあたっては、医学的観点から事業場の安全配慮義務に関する助言を行ったり、職場復帰支援に関して意見を述べます。

これらの結果は「職場復帰支援に関する面談記録票」(※)に記録しておき、産業保健スタッフや管理監督者と共有出来るようにしておくと良いでしょう。

職場復帰支援に関する面談記録票様式例(厚生労働省 こころの耳)

④最終的な職場復帰の決定
従業員の不調が再発していないかの確認の結果や、産業医による「職場復帰に関する意見書」を踏まえ、企業による最終的な職場復帰決定が行われます。合わせて、就業上の配慮についても従業員に通知します。

最終的な職場復帰の決定の前に、試し出勤制度を用いることも有効です。

<試し出勤制度>
いきなりフルタイムで復帰するのではなく段階的に復帰していく制度のことです。例えば、はじめは勤務時間と同じ時間帯になんらかの活動を行う、慣れてきたら職場まで来てみる、より進めそうならば時短勤務してみる、といったステップが考えられます。試し出勤制度を用いることで、従業員が自分の状態を確認しながら自分のペースで職場に復帰出来るようになります。


⑤職場復帰のフォローアップ
従業員が職場復帰した後は、管理監督者による観察・支援のほか、産業医などの産業保健スタッフによるフォローアップを実施し、必要であれば職場復帰支援プランの見直しを行います。
フォローアップにおいて確認するポイントとして以下のようなものが挙げられます。

・症状の再発、新しい問題の発生等の有無
・勤務状況や業務遂行能力
・職場復帰支援プランの実施状況の確認
・治療状況の確認
・職場復帰支援プランの評価と見直し
・職場環境等の改善(作業環境や労働時間など)
・管理監督者、同僚などの配慮

産業医は事業場における産業保健スタッフの中心として、管理監督者や人事労務担当者とだけでなく、主治医とも綿密に連携していくことが望ましいでしょう。


復職の困りごとと対応のポイント

復職にあたって産業医面談を既に実施しているものの、対応が難しいケースがあるなど、お困りの方もいるのではないでしょうか。ピースマインドに寄せられるご相談を取り上げます。


Q1:主治医と産業医の見解が異なり、復職判断が上手くいかない

「主治医からは復職可能の診断書をもらったけど、産業医面談をしてみたら復職は難しい様子だった」といったことはしばしば見られます。このような場合、どう対応したら良いのでしょうか。
この場合、以下の2点に注意して対応する必要があります。


①主治医と産業医では視点が異なるということを理解する
1点目は、主治医と産業医の視点の違いを理解するということです。

主治医にとって従業員は「患者」であり、日常生活に病態がどれほど影響しているかという医学的な観点から理解することになります。つまり、日常生活に支障がない程度まで回復すれば復職も可能である、と判断します。
これに対して産業医は、医学的な観点に加えて業務についての観点も持ち合わせています。したがって、日常生活には影響がない程度まで回復していてもその状態で業務をこなすことが可能かどうかまでを検討することが出来ます。

このような視点の違いを踏まえて、企業として判断をしていかなければなりません。


②人事として産業医に何を確認してもらうべきかを明確にする
2点目は、人事担当者として、産業医に何を確認してもらうべきであるかを明確にするということです。

「職場復帰の可否」の部分では、
 
・復職意思
・生活リズム
・出勤出来るか
・業務遂行能力の回復度
・再発防止のための取組み

 というポイントを産業医が確認しているということをお伝えしました。しかし、人事担当者としてこれ以外にも確認しておきたいポイントがある場合には、産業医と連携して面談の中で聞き取りを行ってもらうことが必要になってきます。復職にあたって懸念点となりうる事項としては、以下のものなどが挙げられます。

・主治医の方針に従って治療に取り組めているか
・回復が不十分であるにも関わらず、焦って復職を希望していないか
・休職するに至った原因、症状が出やすい環境や業務などの条件を本人は把握出来ているか
・通勤することに対してストレスや不安などはないか
・日常生活において、業務上と同様の行為が行えているか
・プライベートの状況は問題ないか

これらの点について産業医の先生と連携して確認を依頼し、復職の判断の際に懸念が残らないようにすることが良いでしょう。


Q2:復職後もパフォーマンスが上がらず、再休職してしまう

「診断書をもとに復職させたけれども、すぐに再び休職してしまった」「以前のようなパフォーマンスを発揮出来ない」という困りごともよく耳にします。

この場合、以下の2つの対応を行う必要があります。

①復職後のフォロー体制を整える
1点目は、復職後のフォロー体制を整えることです。

復職後の一番の目標は再休職防止です。そのためには周囲からのフォローが欠かせません。上司を含めた管理監督者による観察やそれに基づいたサポート、産業医などの産業保健スタッフとの定期的な面談の継続などを行い、必要に応じて職場復帰支援プランの見直しを行っていきます。

フォローにおいて重要なのは、様々な役割を担った人々が連携をとることです。産業医や人事労務担当者、管理監督者といった社内の人間が連携することはもちろん、場合によっては主治医とも連携を行い、より良いフォローを行える体制を作り上げることが求められます。


②対象従業員の業務や職場環境を産業医とともに見直す
2点目は、復職した従業員の業務や職場環境を産業医とともに見直すことです。

主治医の診断書に基づいて復職させたにも関わらず、再度休職してしまったりパフォーマンスが落ちてしまう背景には、業務面での負荷の大きさや職場環境の不適切さが考えられます。

復職して間もないタイミングで、休職前と同じ水準の業務を任せることで、再び業務遂行が難しい状態に戻ってしまうこともあります。主治医が復職出来ると判断したからといって、元通りのパフォーマンスが出来るとは限りません。業務量や労働時間に無理はないか、などについて、医学的観点と業務の双方に理解のある産業医とともに確認や見直しを行うことが必要になってくるでしょう。


対応のポイント

では具体的にどのようなポイントに注意して、復職する従業員への対応を行えば良いでしょうか。以下の2点が主なポイントとなります。

従業員 復職 対応


①主治医と産業医の双方から意見を聞く
1つ目のポイントは、主治医と産業医の双方から意見を聞くことです。

復職にあたって、主治医の診断書だけで判断してしまうことは、再休職や離職のリスクを含みます。なぜなら、主治医の診断書には「従業員がどのような病態で日常生活が送れているか」という情報が含まれますが、人事が復職の判断で欲しいのは「職場に復帰して業務を遂行出来るか」という情報であり、必要な情報が得られていないからです。また、本当は休職を継続した方が良い状況であるのに、従業員が復職を急いでいるので主治医が復職可能という診断書を出してしまうといった事態も見受けられます。

つまり、主治医の意見だけで復職させてしまうと、「日常生活は普通に送れているけれども、勤務になってみたらまだ不調が続いている」ということが起こりうるのです。したがって、病態だけでなく職場環境や業務内容についても理解のある産業医からも意見をもらい、主治医による医学的情報と人事として必要な業務に関する情報をつなぐことが必要になります。
両者と綿密に連携し、意見を擦り合わせていくことで、従業員にとって適切な判断を下すことが出来ます。


②復職後の振り返りを行う
2つ目は、復職後の振り返りを行うことです。

復職の判断を行う際にはなるべく網羅的に情報を得て検討しますが、その判断が必ず正しいとは言えません。復職の判断や、作成した職場復帰支援プラン、その後のフォローアップ、復職を受け入れる職場環境、などが従業員にとって良いものになっていたかをきちんと振り返る必要があります。その際には、人事労務担当者などの社内の人間だけでなく、産業医などの産業保健スタッフと連携する必要があるでしょう。


まとめ

復職するという判断は、従業員にとっても企業にとっても非常に大きな判断になります。そのような判断の時に、医学的観点にも業務にも精通した産業医からもらった意見は大きな材料になるでしょう。今復職して働いている従業員も、これから復職する従業員も、みんなが健康にはたらくことが出来るように、産業医が復職対応に取り組んでくれる体制を作るところから始めてみましょう。


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参考文献
※厚生労働省 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き


監修者プロフィール

ピースマインド株式会社 産業保健推進チーム


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