導入事例
住友重機械工業株式会社様

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相互に配慮できるリスペクトのマインドを企業文化として醸成し、
多様なメンバーがいきいきと働き続けられる環境づくりを推進

住友重機械工業株式会社様

住友重機械工業株式会社 名古屋製造所 様
人事課 主事 水野 太輔 様
住友重機械工業株式会社 名古屋製造所様は、雇用形態によらず同じ職場で働く仲間同士が平等に、いきいきと働き続けることができる環境を維持したいという強い信念をお持ちです。2022年より、組織風土をよりよいものに進化させていくためのポジティブアプローチとして「リスペクト・トレーニング」を製造現場全体(約800名)に導入し、積極的な職場改善施策を推進しておられます。詳しいお話を、人事課 主事の水野太輔様にピースマインド代表取締役社長の荻原英人と研修部 部長の田中秀憲が伺いました。


職場の多様性がもたらすコミュニケーションギャップを埋めるためには、
NGをインプットする研修より風土改革に繋がる施策が必要だと感じていた

荻原 まず、貴所でリスペクト・トレーニングを導入された背景をお聞かせください。
水野様 住友重機械工業 名古屋製造所には、正社員、契約社員、海外の子会社からの技能実習生、請負業者様の社員など、さまざまな属性の方々が就業しています。雇用形態の違いにより、働き方や適用される規則等も異なることから、コミュニケーションにおける多様な課題が発生します。

一方、私達としては、雇用形態によらず名古屋製造所で働くメンバーが同じ職場で働く仲間として平等に扱われ、いきいきと働き続けることができる環境を維持したいという強い思いを持っています。

その思いを実現するためには、働きやすい環境を会社側が整えることと、一緒に働く仲間同士が「他者への配慮」や「相手の立場に立った言動」をそれぞれ意識して接していくことが重要だと考えています。

形式的な施策だけでは、参加者に腹落ちさせられていないと感じていた折に、メディアの記事を読んで、私たちの考えを実践するための前向きな手法として、リスペクト・トレーニングに興味を持ちました。
荻原 一般的に、契約形態の違い、職位による上下関係、世代間等、職場のコミュニケーションギャップの原因は多様ですが、貴所におけるコミュニケーションの難しさは、働き方の多様性から生まれていることが多いとお考えですか?
水野様 かつて名古屋製造所の製造現場は、「男性・日本人・正社員」により構成される組織でした。事業の拡大や時代の変化と共に、女性、外国人などこれまでとは属性が異なるメンバーが増え、雇用形態も、正社員のみならず契約社員、派遣社員の方々など多様化していきました。その変化があまりにも急激だったため、対応に戸惑い、結果としてコミュニケーションギャップに繋がっているという側面はあると思います。

また、雇用形態によって任せられる仕事の範囲も様々なので、どのようにマネジメントしたらいいのか?どう接したらいいのか?現場の管理者も戸惑いながら日々働いています。お互いに口にしなくても、「あなたは社員だから」「わたしは派遣社員だから」などの潜在意識があって、「社員が派遣社員にどこまで要求できるのだろう?」という遠慮があったり、海外からきている技能実習生であれば言葉がハードルになってしまい、職場での問題が十分に解決されない場面もあります。適切な接し方のバランスや熱量がわからないことがコミュニケーションの課題の根底にあると思います。
荻原 リスペクト・トレーニングを製造現場全体で実施されたことは、とても先進的なお取り組みです。導入するためにはご苦労もあったかと思いますが、実際のところいかがですか?
水野様 製造現場全体で集合研修を実施するとなると、その時間工場の稼働を止めたり、会場確保などの問題が発生するので、事前に部門との十分なすり合わせが必要です。今回は、事業部門や製造部門のトップとも、先ほどお話した問題意識をしっかり共有できていたため、実施にあたって否定的な反応は一切なかったですね。結果的に、正社員のみならず、契約社員、派遣社員もあわせた約800名を対象とし、かつてない規模での製造部門向け教育研修となりました。弊社内でも、ここまで大規模な施策はなかなかないので社内でも注目される取り組みとなりました。

画期的な取り組みだったので、製造部門以外の方からの関心も高かったです。アンケートにおいても肯定的な声が多く挙がりました。リスペクトの文化を醸成する意図から、今後製造部門に対して継続的に実施することに加えて、間接部門への拡大実施も決めました。
荻原 ハラスメントに関する知識をインプットすることは勿論大事ですが、ハラスメントの課題を本質的に改善していくためには、当事者意識を醸成することが不可欠です。「リスペクト・トレーニング」は、目の前にある課題について、立ち止まって考える習慣を身に着けるための第一歩として有効なトレーニングなので、貴所が感じておられた課題にマッチしてると思います。
水野様 先程お伝えしたように、製造現場では、様々な雇用形態の方々が就業されているため、正社員だけはなく、契約社員や派遣社員などを含む全勤務者に対する取り組みへと拡大させる必要があり、その観点でリスペクト・トレーニングは有効だと考えていました。
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雇用形態の垣根を越えて実施したリスペクト・トレーニングが、
会社全体の変化の大きな一歩に

荻原 リスペクト・トレーニングを始めるにあたって、社員のみなさまの反応はいかがでしたか?
水野様 最初は、「リスペクト・トレーニングって何?」という感じで、正直なところピンときていない人もいました。また、現場で働いている全ての人に実施するトレーニングというのは今回が初めてだったので、興味はあるけれど「具体的に何をするんだろう?」という反応も多かったです。一方で、現場の管理者は「何かしなければいけない」という意識が強かったため積極的でした。
荻原 実際のリスペクト・トレーニングの参加者の方々の様子はいかがでしたか?
水野様 全18回実施したのですが、私は全ての回に参加しました。全体を振り返ってみると、回ごとに多少の差はあるのですが、予想していたよりも受け身な人が少なくて、概ね反応が良かったですね。

過去にこういった教育研修を受講したことがない方も多かったので、グループディスカッションの開始直後は消極的で、周りの様子をうかがっているような方も多数いて、緊張しているように見えました。それが、講師の田中さんのトークに引き寄せられ、「ハラハラ(※1)ってあるんだ!そんな言葉初めて聞いた!」と盛り上がる場面もあったり、後半は発言が積極的になっていく回が多かったです。ある回では、勇気を振り絞って過去のハラスメント体験を語ってくれた方もいました。


荻原 効果を生み出すために、ファシリテーターとして工夫したことはありますか?


田中 名古屋製造所様に限らず、製造業のラインに入っておられる方々は、人と話す事に慣れている営業職などとは異なり、業務中は集中して作業をされているため、洒脱に話すのが苦手な方も一定数いらっしゃいます。できるだけ話しやすい雰囲気づくりのために、序盤にペアワークを入れるなど参加者同士が気軽に話し合えるような工夫をしました。水野様と相談させていただきながら、ファシリテーションを工夫した結果、参加者のみなさまの積極性を生み出せて赤裸々に語ってくださる方も出てきたことは非常に印象深かったです。


水野様 どんな場でも物おじしないで発言できるメンバーを初めに指名して話してもらい、その後のメンバーの発言の突破口になったケースもありました。今回ファシリテーターを務めてくれた田中さんは、積極的に話してくれる方の雰囲気を察知して、場を回してくださった感覚があります。


田中 私はファシリテーターとして名古屋製造所様のリスペクト・トレーニングを全18回実施させていただきましたが、全社で取り組んでいくんだという強い思いを感じました。名古屋製造所様におけるリスペクト・トレーニングは、職場毎に行なったので、毎回その職場の上長が、「何故このトレーニングを実施するのか」について、しっかりメッセージングされていた効果で、参加者のみなさまは総じて実直な姿勢で取り組んでいらっしゃいました。特に30、40代前後の若手の現場管理者の方々の真剣さは印象的でした。


荻原 トレーニングをスタートする時に、職場の上長の方が自ら参加者にトレーニングの意図をご自身の言葉でしっかり語りかけることがポイントですね。リスペクト・トレーニング後、参加者の皆様の反応はいかがでしたか?


水野様 雇用形態の垣根を越えて同じ職場で働く仲間全員に向けて、こういった場を設けられたことは大きな変化への第一歩です。今回、実施後のアンケートで、自由記述欄がとても多かったことからも、受講者の興味関心が高かったことが伺え、手ごたえを感じました。会社が工場の稼働を止めてでも全員でハラスメントやリスペクトについて考える時間を取ったことを前向きに受け止め、変化の兆しを感じて評価してくれた結果だと思います。

アンケートには、「今後、新しく入ってくる人にも受講させてほしい」といった声も寄せられました。名古屋製造所では、様々な雇用形態の新しいメンバーが毎月就業を開始しています。新しいメンバーが増えていくということは、リスペクト・トレーニングを知らない仲間がいることになりますので、一緒に働く者同士の足並みを揃える意味でも、定期的なスパンで継続的に実施し続けることが重要で、そういった積み重ねにより、組織の風土を醸成していくことが大事だと考えています。

また、アンケート結果からハラスメントと指導の境界、いわゆるグレイゾーンへの対応に関する教育の課題も浮かび上がってきました。「リスペクトを持って部下を管理する中でも、業務を行う上では、時に厳しく注意指導をしたり、本人にとって不本意なことを命じたりしなければならない時がある。それが、ハラスメントとなってしまうのではないかと不安がある」といった声です。

この課題については、まずは管理者が正しい知識を身に着けるとともに、自身の役割をしっかり認識した上で、職場のメンバーと向き合うことが重要だと思いますし、職場のメンバーも同等の意識と知識が必要だと考えます。管理者へのフォローはもちろんですが、部下の理解も必要ですから。

したがって、今後の目標としては、リスペクト・トレーニングを1回限りのものではなく、定期的に実施されるものにしていきたいですし、管理者へのフォローアップの充実のため、職場におけるハラスメントについてより知識を深める研修などの実施も検討しています。


荻原 ハラスメントと指導の違いの認識や、心理的安全性のある職場とぬるま湯の違いというのはよくある課題ですね。甘やかしにならないように、チームワーク、生産性を上げていく適切な指導をしていくための知識を持つことは大切ですよね。


田中 職場におけるコミュニケーションの課題は、ハラスメントかそうでないかの二元論ではないですし、ハラスメントのグレイゾーンも多様化しています。マイクロアグレッション(※2)が嵩むと、普段のコミュニケーションの中でも心がささくれ立ってしまいますよね。日頃から自然な会話ができている状態でないと、いざ指導された時の受け取り方にもバイアスがかかってしまう可能性があります。日々のコミュニケーションが物を言うので、何でも話し合える風通しの良い風土を日頃からつくっていくことやハラスメントについて適切な教育をすることが大事です。
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「言っても変わらない」と諦めず、
継続的な取り組みでリスペクトの文化を醸成することで、
より働きやすい環境をつくる


荻原
 リスペクト・トレーニング実施後、見えてきた新たなチャレンジはありますか?
水野様 リスペクト・トレーニングは、会社としてリスペクトの文化を醸成し、より働きやすい環境づくりに取り組んでいくということを、社員の皆さんに多少なりとも感じ取ってもらった機会となったと思います。それだけに、今回のトレーニングで浮かび上がってきたパワハラのグレイゾーンに対する悩みなど、現場の管理者や職場の皆さんが、働く上で抱えている問題に対するフォローアップをしていかなくてはいけないと感じました。社員の皆さんが会社の前向きな意思を感じ取ってくれている時期だからこそ、単発の取り組みに終わらず、地道にフォローアップを継続していかなければと思っています。
荻原 リスペクト・トレーニング実施後に見えてきた課題解決に向けて、これから取り組まれる施策などがあればお聞かせください
水野様 リスペクト・トレーニング実施直後から、同じく製造部門の現場管理者を対象に、対話による組織開発活動を開始しています。全社的に「Prideプロジェクト」と名付け実施している活動で、職場のメンバーで対話を重ねながら、職場の「ありたい姿」を共有し、実現するためのアクションプランを考えるワークショップです。お互いを尊重し、腹を割って自己開示しながら職場の問題点を洗い出し、5年後、10年後の自分たちがありたい姿をディスカッションしました。現在、そこで作り上げたアクションプランを、各職場で実践していく段階に入っています。

この「Prideプロジェクト」も、リスペクト・トレーニング同様、まずは製造部門の現場管理者に対して行ったという点が、名古屋製造所ならではの特徴かもしれません。今後は間接部門にも広げる予定です。
荻原 最後に、水野様の考える「はたらくをよくする®」とはどのようなことですか?


水野様 
職場が抱える様々な課題を一気に解決するのは容易なことではなく、職場からは時に「言っても変わらない」という諦めの声が挙がることもありますが、そこをなんとかできないかなと考えています。

複雑に絡み過ぎてこんがらがってしまった課題についても、あきらめずに少しずつ紐解いて解決する姿勢が重要だと思います。

聞く側は聴く耳をもって、話す側は相手の事情を的確に捉えた上で自分の要望を訴えるような、相互に配慮できるリスペクトのマインドを企業文化として醸成していくことが「はたらくをよくする®」ことだと思います。


田中 過去に話を聞いてもらえなかった記憶がハードルになったり、連続して課題提議して声を挙げ続けるエネルギーがない等、「言っても変わらない」という諦めの気持ちが湧いてしまう背景にも様々な事情があると思うので、場合分けして分解していくと解決の糸口がみつかる事もあると思います。「言っても変わらない」という自分自身の思い込みを認識することから始まることもあります。手を変え品を変え、変化を促していくことが大事ですね。


荻原
 お話を聴かせていただき、水野様をはじめ貴所のリーダーの皆様がよりよい職場づくりのために本質的な施策を実践されていきたいという一貫した真摯な思いが伝わってきました。今後も貴所の「はたらくをよくする®」活動にお役に立てるご支援ができれば幸いです。
本日はありがとうございました。

※1 ハラスメント・ハラスメント(ハラハラ):他人からの行為や言動に対して、自身が不快に感じたり、嫌悪感を抱いたときに「ハラスメントだ」と過剰に主張する行為。

※2 マイクロアグレッション:意図的か否かにかかわらず、何気ない日常の中で行われる言動に現れる偏見や差別に基づく見下しや侮辱、否定的な態度。
水野 太輔(みずの たいすけ)様 プロフィール

2007年大学卒業後、人材業界、製造業界等にて採用、教育、労務管理等の人事業務全般を経験後、2020年4月に住友重機械工業株式会社に入社。現在はコンプライアンス関連の教育を中心に名古屋製造所の人事業務全般を担当。
社名 住友重機械工業株式会社
事業内容 変減速機、射出成形機などの標準・量産機械から環境プラント、産業機械、建設機械、造船など多岐に渡る事業を展開
設立 1934年11月1日
従業員数 25,211人
URL https://www.shi.co.jp/index.html
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