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企業が取り組むべき女性のメンタルヘルス対策とは?女性特有の症状と対応について解説

メンタルヘルスとは、心の健康を指す言葉です。メンタルヘルスは身体の健康とも大きく関係しています。


メンタルヘルス不調については男性よりも女性の方が抱えやすい傾向にあるといわれています。ジェンダーに関係なく誰もが働きやすい環境をつくるために、女性のメンタルヘルス不調に関する基礎知識や対策方法について、今一度確認しておきたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。


本記事では

・女性特有のメンタルヘルス不調の要因

・企業や個人で取り組める女性のメンタルヘルス不調への対応

について解説していきます。


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目次[非表示]

  1. 1.女性のメンタルヘルスの現状
    1. 1.1.女性のメンタルヘルスの傾向とは
    2. 1.2.女性のストレスの現状
    3. 1.3.ストレスの解消は女性の方が上手?
  2. 2.女性特有のメンタルヘルス不調を理解する
    1. 2.1.①月経前症候群(PMS)
    2. 2.2.②月経前不快気分障害(PMDD)
    3. 2.3.③更年期障害
  3. 3.女性の「はたらくをよくする®︎」ために企業ができる対策とは
    1. 3.1.女性が相談しやすい窓口を設置する
    2. 3.2.マネジメント研修を実施する
    3. 3.3.男性を含めた女性向けセミナーを開催する
    4. 3.4.男女問わず育休等の制度がとりやすい雰囲気づくり
  4. 4.個人でできるケアとしてのマインドフルネス
    1. 4.1.マインドフルネスとは
    2. 4.2.通勤中のマインドフルネス瞑想で考え方の癖を直す
    3. 4.3.食べる瞑想に寝そべる瞑想…自分に合った方法で日常に取り入れる
    4. 4.4.マインドフル・イーティング(食べる)
    5. 4.5.ボディスキャン
  5. 5.まとめ
    1. 5.1.ピースマインドのEAP(従業員支援プログラム)
    2. 5.2.参考文献


女性のメンタルヘルスの現状

女性のメンタルヘルスの傾向とは

メンタルヘルス不調者の増加について、最近ではニュースなどにも取り上げられるようになりました。2021年のOECD(経済協力開発機構)の調査において、日本でのコロナウイルスのパンデミック前と2020年度のうつ病の有病率を比較をすると大幅に有病率が増加していることが示されています(※1)。


女性のメンタルヘルスに焦点を当ててみると、平成29年度に行われた厚生労働省の患者調査(※2)では、躁うつ病などを含む気分(感情)障がいの総患者数は127.6万人であり、そのうち男性が49.5万人(約39%)、女性が78.1万人(約61%)という結果になりました。


女性のメンタルヘルス不調の要因については、女性ホルモンの変化によるもの、ライフイベント(結婚、妊娠・出産、育児等)による環境や社会的役割の変化の大きさ、ジェンダー・ハラスメントなど、女性特有のものも考えられます。


これから解説する女性特有のメンタルヘルス不調の要因を確認し、ジェンダーに関係なく誰もが活躍できる環境を整えていきましょう。

女性のストレスの現状

①仕事のストレス

令和2年度の労働安全衛生調査によると、働いている女性のうち49%(男性は58.4%)が「仕事でストレスとなっていると感じる事柄がある」と回答しています(※3)。


その理由のうち、主な3つとして仕事の量や質についてが51.6%、「仕事の失敗・責任の発生等」が33.4%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」についてが30.5%あげられています。

円グラフ_女性活躍データ

近年では女性活躍推進に取り組む企業も増えており、管理職に起用される方も少なくありません。その中で「プレッシャーに耐えられない」「どうしたらいいかわからない」といった精神的負担に適応できずメンタルヘルス不調に陥るケースもみられます。

②環境などの要因

仕事だけでなく、日常のライフサイクルの変化もストレス要因となりえます。例えば、妊娠・出産の際のマタニティー・ブルーや産後うつといった女性特有の大きな変化が考えられます。


加えて、家族の介護によりストレスを抱えるなど、様々なライフスタイルの変化によってメンタルヘルス不調は発生することがあります。


また、そうしたライフサイクルの変化に関する育児休業や介護休業の取りにくさも、少なからずストレスに影響しています。


③ジェンダーハラスメント

ジェンダーハラスメントとは、「男のくせに…」「女なんだから…」といったように性別により社会的な役割が異なるという固定概念にもとづく嫌がらせのことです。


「女性なのに管理職か」「女性なら仕事より家事や子育てを優先するべき」など、もしかしたら無意識のうちに発言してしまっている可能性もあります。


セクシャルハラスメントと比べ認知度は低いですが、女性がストレスを抱える原因の一つとなる可能性があるため注意が必要です。


ストレスの解消は女性の方が上手?

一方で女性は、ストレスフルな出来事を家族や友人に話すなどストレスを上手に和らげている様子も見てとれます。

令和2年度の労働安全衛生調査(※3)によると、「仕事や職業生活でのストレスについて相談できる人の有無」について92.5%の女性が「いる」と回答し、そのうち「家族・友人に相談する」と答えた人が83.6%でした。実際に相談した割合についても、女性は77.1%と男性よりも高くなっており、しっかり話を聴いてもらいストレスを和らげている可能性があることがうかがえます。


また、警視庁による令和2年度自殺者の状況(※4)では男性14,055人、女性7,026人と、女性の自殺者は男性のおよそ半分になっています。


女性の自殺者が少ない理由のひとつとして、男性は独りで悩みを抱え込みがちな傾向がある一方、女性は積極的に他者に相談したり話したりすることでストレスを和らげている可能性があります。


一方で、「上司や産業医など、職場の事業場外資源を含めた相談先に相談できる相手がいる」と回答している割合は、男性に比べ低くなっています(※3)。より良い職場を目指していくためには、誰もが利用しやすい相談環境を整えていくことが大切です。


女性特有のメンタルヘルス不調を理解する

女性特有の要因としてはライフスタイルの変化だけではなく、ホルモンバランスの変化があります。女性のホルモンバランスは、思春期、妊娠・出産、更年期といった年齢によっても大きく変化し、1ヶ月という短いサイクルでも月経周期に合わせて急激にバランスが変化します。


ホルモンバランスはメンタルヘルスにも大きな関係があるため、しっかり理解をしておきましょう。以下では、女性特有の不調を3つご紹介します。

①月経前症候群(PMS)

月経前症候群(PMS)は、月経前に3〜10日間続く精神的または身体的症状で、月経開始とともに症状が軽くなったり、消失するものをいいます。具体的な原因はわかっていませんが、女性ホルモンの変動が影響しているといわれています。


具体的な症状は、腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどの身体的症状と、イライラや気分の落ち込み、不安感、集中力の低下、睡眠障害のような精神的症状があげられます。


毎月、月経前に繰り返し症状が出たり、日常生活に支障がある場合にはPMSの可能性が高いと考えられます。症状がひどい場合は早急に医療機関を受診しましょう。

②月経前不快気分障害(PMDD)

PMSのなかでも「イライラ」や「気分の落ち込み」「不安」といった精神症状が特に重い場合には、月経前不快気分障害(PMDD)とよばれます。


PMS、PMDDも基本的には月経が始まると症状が軽くなってくる症状ですが、月経後も症状がなくならない状態が毎月続くなら、うつ病や不安障がいなどメンタルヘルス不調が潜んでいる可能性もあるため注意が必要です。


本人が心理的に大変なのはもちろんですが、日常生活にも大きな支障をおよぼすため、無理に我慢はせず適切なケアをしていきましょう。

図_PMSとPMDDの違い

③更年期障害

更年期とは、閉経前後の5年を合わせた10年間のことで、一般的に45〜55歳が多いとされています。ホルモンバランスが大きく変化しながら徐々に女性ホルモンが減少するため、さまざまな不調を起こしやすくなります。


ホットフラッシュと呼ばれる突然の発汗やほてり、肩こりや頭痛などの身体症状、気分の落ち込み や焦燥感(イライラ)などの精神症状が主な症状になります。


また更年期は、介護や子どもの就職などによる家族生活の変化と重なることも多いため、心理的・社会的ストレスを受けやすい時期といわれています。日常の運動習慣など日頃からのセルフケアをしっかり行い、ストレスとうまく付き合っていくことも大切です。


女性の「はたらくをよくする®︎」ために企業ができる対策とは

女性が相談しやすい窓口を設置する

2019年6月より大企業を対象として施行されているパワハラ防止法(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)ですが、2022年4月からは中小企業に対しても全面的に施行されました。


パワハラ防止法の義務内容の中には、苦情などに対する相談体制(相談窓口など)の整備について言及されています。形式的なものではなく、社員が必要と感じたタイミングで適切な対応を行ってくれる窓口の設置が必要です。


例えば、はたらく女性が相談しやすい窓口の設置があります。相談内容によっては女性社員は相談員が女性のほうが相談しやすいという場合もあるため、女性の相談員を選べるようにしたり、対面だけでなくメールや電話など様々なチャネルを通じて匿名で相談ができることが望ましいと言えます。


場合によっては専門家や外部の機関につなげる必要があるため、日頃からきちんと連携をとれる体制を整えておくことも大切です。

マネジメント研修を実施する

ダイバーシティ&インクルージョンの広まりや政府による女性活躍の推進によって女性管理職の方も増えつつあります。マネジメント研修を行うことで、女性管理職の方の悩みや不安の解消につながります。


また、ひとくちに管理職研修と言っても、実践を交えたものやコーチングスキルを学ぶ研修サービスなどさまざまなものがあります。自社の現状や課題を踏まえ、「とりあえず」「なんとなく」ではなく「適切な」研修サービスを実施しましょう。


男性を含めた女性向けセミナーを開催する

女性の「はたらくをよくする®︎」ためには、女性向けのメンタルヘルス研修や健康セミナーを行うことも有効です。しかし、ここで工夫していただきたいのは参加者・対象者を女性だけにせず、ジェンダーに関係なく誰でも参加できるようにすることです。


誰でもセミナーに参加してもらえることで、女性特有の症状による不調について理解を促すことができ、管理職の方や同僚などからの支援も得やすくなります。


また、セミナーを行えない場合でも社内報などを通じて、情報を発信していくことで同じような効果を得ることが期待できます

男女問わず育休等の制度がとりやすい雰囲気づくり

ライフサイクルの変化は女性のメンタルヘルスに大きく影響を与えるため、企業は育児休業や介護休業制度等の制度を整えています。


男性の育児休暇取得率が低いことが問題になっていますが、令和2年度の雇用均等基本調査(※5)によると女性の取得率は81.0%と8割を超えています。


一方で介護休業制度については、介護の問題を抱えている社員がいるにもかかわらず、男女ともに取得率が低いことが課題として挙げられています。特に女性は、介護離職が多いといわれています。


こうした制度を利用し、社員の離職や負担を減らすためには管理職の方が積極的に制度を利用する姿勢を見せたり、社内報での情報共有をしっかりするなど工夫が大事になってきます。


介護については、NPO法人となりのかいご代表の川内氏とピースマインド代表 荻原の「仕事と介護の両立」ついての対談記事もご覧ください。

\クリックして記事を確認する/

サムネイル

個人でできるケアとしてのマインドフルネス

マインドフルネスとは

マインドフルネスとは、過去の経験や先入観といった雑念にとらわれずに、いま現在の自分の心や体といった、その瞬間の自分に意識を向ける状態を指す言葉です。


Google、Facebook、Apple、マッキンゼーといったグローバル企業でも取り入れられているマインドフルネスは、ストレスの軽減や感情の安定、集中力の向上などの効果があるとされ、いくつかの研究でも効果が確認されています。


マインドフルネス瞑想をはじめとした簡単に取り組めるものが多いので、セルフケアとして日頃行うことでメンタルヘルス不調を予防できます。

通勤中のマインドフルネス瞑想で考え方の癖を直す

『ネガティブなこと』『改善点』ばかりに注意が向く思考のクセが私たちにはありますが、そうしたクセを改善するためにもマインドフルネスは非常に有効な方法です。


「マインドフルネス瞑想」のやり方はとてもシンプルです。床または椅子に姿勢を正して座り、自然な呼吸のペースで意識を呼吸に向けるだけです。途中に雑念がわいてきても無理に消そうとはせず、ゆっくりと再び呼吸に意識を戻してください


ポイントは、最初は無理のない5分程度から始め、毎日続けることです。瞑想の効果はすぐに表れるわけではなく、継続することで徐々に表れてくるものなので、最初は5分程度からはじめ、慣れてきたら徐々に時間を長くするのが望ましいです。


また、通勤中の電車内で吊革につかまった状態でも、目を閉じ呼吸に集中すればマインドフルネス瞑想は実施できます。スマホを見る時間を減らして瞑想をしてみるなど、積極的にマインドフルネスを日常に取り入れていきましょう。

図_マインドフルネスの取り組み方

食べる瞑想に寝そべる瞑想…自分に合った方法で日常に取り入れる

マインドフルネスや瞑想と聞くと、お寺に行ったりヨガをするなど、瞑想を実施するための時間やお金を確保する必要があるように思えるかもしれません。


しかし実際には、先述の通り「過去の経験や先入観といった雑念にとらわれずに、いま現在の自分の心や体、その瞬間の自分の経験に集中して意識を向ける状態」にすることがマインドフルネスの本質です。よって、実は食事中や寝る前など、習慣の中に取り入れることも可能なのです。


マインドフル・イーティング(食べる)

マインドフル・イーティングとは「食べること」にだけに集中するというシンプルなものです。毎日の食事にマインドフルネスを取り入れるだけなので瞑想とは違い新しい習慣を身に着けるよりも実践しやすいです。


視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の5感をフルに使って食事をするのがマインドフル・イーティングの実践方法です。具体的には、まず食べ物を触覚・視覚・嗅覚で味わい、その時の湧いた自分の感覚をチェックします。その後噛んで飲み込み、味覚や聴覚などで食事を楽しみます。


ポイントは、急がず、ゆっくり食事を楽しむことです。ストレス軽減だけでなく、ストレスでの食べすぎを防ぐ点でも効果的です。


ボディスキャン

体のパーツに次々と意識を向けながら、緊張をほどいていく瞑想の一種です。座った状態だけでなく、寝そべった状態でも行えます。


<ボディスキャンの方法>

①まず深く呼吸をし、身体がリラックスをしていることを感じます。

②初心者のうちは頭 or 足など大きな部位から焦点を当て、身体の緊張や違和感を感じます。「なんか足が重いな」「かゆいな」という感覚をキャッチしてください。

③頭から始めた場合は足まで、足から始めた場合は頭までというように全身をスキャンしていきます。

④最後は全身を意識しながら深呼吸し、落ち着いたら目を開きます。


慣れるまでは大きくパーツを分けスキャンしていき、慣れてきたら細かいパーツに分けてスキャンをしていくことがポイントです。また途中でいろんな思考が浮かぶと思いますが、マインドフルネス瞑想と同様にゆっくりとまたスキャンに意識を戻すようにしましょう。

図_ボディスキャンの取り組み方

まとめ

女性にうつ病などの精神疾患がみられる原因は単純にメンタルヘルスの問題だけでなく、ホルモンの変動などが心の安定に影響を及ぼすことも関係しています。その違いを理解したうえで、男性・女性の区別なく活躍できる環境づくりを目指しましょう。困ったことがある時は、産業医に相談したり、場合によってはカウンセラーに相談するなど、専門家に相談しながら取り組んでいきましょう。


ピースマインドのEAP(従業員支援プログラム)

EAPとは、はたらく人の「はたらくをよくする®」ために、心理学や行動科学の視点から職場のパフォーマンス向上などに対し解決策を提供するプログラムです。


経営課題、人事課題、組織目標に応じて、最適なプログラムをコンサルタントがデザインします。他にも、職場のクライシスケアや社員のワークライフバランスを実現させたい等の課題にも解決策をご提供しています。


専用ホットライン、予約制カウンセリング(対面・電話・オンライン対面)など様々なチャネルを通じてサポートいたします。職場内やご自身に不安や悩みがある際や、メンタルヘルスに関する知識やアドバイスが欲しい時など、様々な場面でご活用をご検討ください。

参考文献

※1 OECD 調査

※2 厚生労働省 平成29年 患者調査

※3 厚生労働省 令和2年 労働安全衛生調査

※4 警視庁 令和2年度 自殺者の状況

※5 令和2年度雇用均等基本調査 

後藤 麻友(ごとう まゆ)
後藤 麻友(ごとう まゆ)
ピースマインド株式会社  社員支援コンサルティング部 部長 EAPスーパーバイザー 公認心理師 臨床心理士 国際EAPコンサルタント(CEAP)  臨床心理学の修士号を取得後、ピースマインド株式会社に入社。EAPコンサルタントとしての臨床業務の傍ら、研究、研修、サービス開発にも従事。現在は、主にコンサルタントのマネジメントや育成支援を行っている。

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