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公認心理師監修|テレワーク下でのメンタルヘルス対策を解説します

新型コロナウイルスの蔓延に伴い、社会ではテレワークが浸透していきました。そんなテレワークの長期化や仕事環境の変化からメンタルヘルス不調者が増えています。不調者を出さないために、はたらく人と企業それぞれがメンタルケアに取り組む必要があります。

そこで今回は、はたらく人と組織それぞれがテレワーク下で取り組むことができるメンタルヘルスケアについて解説します。

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監修者プロフィール

小薬 理絵(こぐすり りえ)
ピースマインド株式会社 サービス本部
EAPスーパーバイザー
公認心理師、臨床心理士、国際EAPコンサルタント、シニア産業カウンセラー

博士後期課程在学中より、教育相談所において教育相談に従事。スクールカウンセラーとしても公立小・中学校複数校にて勤務する。
その後、外部EAP機関にて、働く人々へのカウンセリング業務に携わる。
現在、ピースマインド株式会社にて、EAPスーパーバイザーとして臨床、育成に携わる一方、人事担当者及び管理職への個別のコンサルテーションにも従事する。


目次[非表示]

  1. 1.テレワークの社会的影響
    1. 1.1.テレワーク導入の影響
    2. 1.2.テレワークのメリット・デメリット
    3. 1.3.在宅勤務でのメンタルケアの必要性
  2. 2.テレワーク下での悩み
    1. 2.1.在宅勤務で感じる3つの悩みや不安
  3. 3.社員が取り組むメンタルヘルス対策
    1. 3.1.生活リズム・環境を整える
    2. 3.2.生活リズムを記録する
    3. 3.3.運動をおこなう
    4. 3.4.簡単にできるストレス対策法
  4. 4.組織が取り組むテレワークに合わせたメンタルヘルス対策
    1. 4.1.テレワーク下でのコミュニケーションづくり
    2. 4.2.心理的安全性を固める職場づくり
    3. 4.3.メンタルヘルス教育
    4. 4.4.外部と連携する
  5. 5.まとめ
  6. 6.出典・参考文献


テレワークの社会的影響

テレワーク導入の影響

2020年より世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルスの感染防止策として、多くの企業が導入をはじめたテレワークですが、現在では恒常的にテレワークを取り入れる企業も増えつつあり、with/afterコロナの新しい働き方として定着してきています。

総務省の調査によると、令和2年3月以降のテレワーク導入率は17.6%から56.4%へと増加し、現在では半数以上の企業がテレワークでの就労をしています(※1)。テレワークが社会で定着していく中で、注目が集まっているのがメンタルヘルスとの関係です。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査では、在宅勤務者はメンタルヘルスの不調を抱えている可能性が高い傾向がみられています(※2)。また、「はたらく人」の心の問題を専門とするピースマインドの調査でも、特に女性や20代の若手社員を中心に心理的ストレス反応が悪い傾向がみられます(※3)。調査が示す通り、テレワーク下ではメンタル不調を抱える可能性が示唆されるため、社員に対するメンタルヘルスケアをしっかりと行う必要性があります。


テレワークのメリット・デメリット

感染防止策として導入され始めたテレワークですが、その他にも多方面ではたらく人と企業双方にとってメリットがあります。一般的に、企業においては、定型的業務の生産性の向上や人件費や印刷代といったコストの削減となり、はたらく人においては、通勤時間の短縮や柔軟に時間が使えるようになったことによるワーク・ライフ・バランスの向上といったメリットがあります。実際、総務省「テレワークの動向と課題について」では、テレワークを利用することで約半数の人が家族と過ごす時間や育児の時間が1時間以上増加したと回答しており、テレワークの導入はプラスの効果も大きいのも事実です(※4)

テレワークにはメリットがある反面、デメリットとなる部分もあります。企業によっては完全にテレワーク化することが困難で、在宅勤務者と出勤者間のコミュニケーションに齟齬が生じてしまうケースがあります。また、在宅勤務の中では社員のモチベーションを維持することが難しく、マネジメントに課題を抱えているという場合も多い状況です。社員にとっても、上司や同僚とのコミュニケーション不足や仕事のオン・オフの切り分けが難しいといった部分で不安を感じることも多いでしょう。


在宅勤務でのメンタルケアの必要性

テレワークのデメリットは、はたらく人のメンタルヘルスに影響を与えています。コミュニケーション不足や生活リズムの乱れによってストレスを抱えてしまい、最終的にメンタルヘルス不調者となってしまうこともあります。そのままにしておくと休職や離職につながりかねません。テレワーク下においては、メンタルヘルス不調防止のために、より一層メンタルヘルスケアに注力していくことが非常に重要となってきます。


テレワーク下での悩み

テレワーク下では、オフィス勤務の際にはなかった悩みがストレッサーとなることがあります。ここではストレッサーとなる悩みとその解決方法をご紹介します。テレワーク下でどんな悩みがストレッサーになるかを理解しておくことで、より適切なメンタルケア対策に取り組めます。

在宅勤務で感じる3つの悩みや不安

テレワークでの悩み(デメリット)についてたくさんの調査が行われていますが、総じて多い悩みは以下の3つです。長期化するテレワークの中で社員が抱えやすい悩みや不安を理解し、メンタルヘルス不調を未然に防ぎましょう。

テレワーク下での悩みとして一番多いのが仕事のオン・オフの切り替えが難しいということです。在宅勤務では自宅とオフィスという環境の変化で仕事のスイッチを切り替えることができなくなってしまったり、自分の部屋の中にある誘惑に負けてしまうこともあります。勤務時間中の作業効率が落ちることで、遅れを取り戻すために勤務時間外の残業を行い、結果的には長時間労働をしてしまうケースもみられます。また、在宅での勤務により仕事とプライベートの切り替えが上手くできず、休日中も仕事のことが頭から離れない、気になって仕方がないといったことも起こりえます。

仕事環境を整えるため、会社側はデスクトップパソコンの貸し出しや在宅勤務の人には補助を出すなど、社員が自宅でも集中できる環境づくりの手助けをしましょう。また、朝礼を設け生活リズムが乱れないようにすることもよいでしょう。

次に多い悩みが、上司や同僚とのコミュニケーションが上手にとれないということです。わからないことをすぐ聞けなかったり、画面上でのやり取りのために適切なフィードバックがもらえていない気がするといったことから、特に入社したばかりの新入社員を中心に不安を抱える傾向にあります。また、家族以外とのコミュニケーションの場がなくなり、1日を通して家族以外と会話をしない日が何日も続くこともあります。こうしたコミュニケーション不足による不安・孤立感はメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性があります。

朝のちょっとした雑談会やオンラインツールを利用したランチタイムなどで仕事だけでなく、プライベートの会話をすることで信頼関係が築きやすくなります。また、1on1のMTGを定期的に設け、業務での悩みを相談しやすい関係を築くことも効果的です。

テレワーク下においては、運動不足も上記の2つと同じくらい多い悩みです。通勤や会議室への移動、同僚とのランチなどといった普段は意識していなかった運動の機会がオフィスワークではありました。しかし、テレワークでは会議や疑問点なども電話やオンラインツール上で行い、ランチも家の中であるもので済ませるなど行動範囲も狭くなり運動不足が深刻となっています。日常的な生活行動のリズムが崩れ、長時間同じ姿勢で業務に取り組んでいることで、なんとなく不調を感じることもあるのではないでしょうか。運動不足の解決には意識的に軽い運動に取り組むことや、スタンディングデスクを取り入れるなど仕事の環境を見直してみるとよいでしょう。


社員が取り組むメンタルヘルス対策

メンタルケアは会社側が適切な情報を共有し、社員自ら取り組んでもらうことも大切です。企業はセミナーや研修などの機会を通して、社員へのセルフケア教育をサポートすることが求められます。


生活リズム・環境を整える

仕事環境を整える

仕事をする環境を整えることで、仕事と私生活のオン・オフの切り替えをはっきりさせることができます。また、椅子やパソコンなど物理的なものからのストレスも軽減できるため、まず最初に行えるメンタルヘルス対策です。推奨されるテレワークの作業環境については、厚生労働省が以下のように示しています(※5)



部屋
・作業等を行うのに十分な空間が確保されている(設備の占める容積を除いて、10m³以上)
・転倒することがないように整理整頓されている




・換気設備や窓を活用し、空気の入れ替えを行う
・ディスプレイに太陽光が入射する場合には、窓にブラインドやカーテンを設ける



照明
・机上は照度300ルクス以上の明るさとした、作業に支障がない十分な明るさにすること



室温・湿度
・室温17℃~28℃ 相対湿度40%~70%を目安としてエアコンなどを利用し、作業に適した温度、湿度に調節をする


ストレスの無い環境作り


机・椅子・PC
・目、肩、腕、腰に負担がかからないように、机や椅子、ディスプレイの位置などを適切に配置し、無理のない姿勢で作業を行うこと。


デスク周辺環境


生活リズムを記録する

生活リズムが狂ってしまうと、睡眠不足や集中力の減退による作業効率の低下などの弊害が生じます。正しい生活リズムにするためには何時に起床したか、何時にご飯を食べたか等1日の生活リズムを記録しましょう。生活リズムを記録することで客観的に自分の生活リズムを把握することができ、意識的に生活リズムの改善へとつなげられます。テレワークになったからといって生活リズムを乱すようなことはせず、オフィスワークと同じ時間に起床し、同じ時間に時間に寝るといった生活リズムを心がけることも大切です。


運動をおこなう

テレワーク下では通勤時間が短縮されるメリットがある反面、普段は意識していなかった通勤での運動の機会を失うというデメリットがあります。運動不足は心身の健康に大きく影響するので、運動不足の場合には意識的に改善することが重要です。

運動不足解消のためには、毎日1回、都合の良いタイミングで、ウォーキングやジョギングなどをしたり、筋肉トレーニングやストレッチなどをしてみましょう。動画配信サイトなどにある、自宅でできるトレーニングやストレッチの動画などを活用するのもよいです。また運動のタイミングについては、朝の始業前に軽い運動を行うことで仕事への切り替えができかつ日光を浴びることで体内時計が整い、生活リズムの改善につながるためおススメです。


簡単にできるストレス対策法

ストレスコーピング
ストレスコーピングとは、ストレスと向き合った際に、そのストレスとうまく付き合うための技術や能力のことです。コーピングには、ストレスの発生源に対して直接働きかける問題焦点コーピングと、問題への「認知」に当たる部分に対して実施する情動焦点コーピングがあります。コーピングを上手に活用することでストレッサーを避けられない場合でも、ストレスを軽減することができます。

ピースマインドの調査では、前向きな思考と気分転換のコーピングの効果が、その他のストレスコーピングよりも相対的にストレス軽減効果が大きいという分析結果が出ています。このデータを用いた分析によると、49%の高ストレス者を削減できるということになっています(※6)。ストレスコーピング技術を向上させ、ストレスと正しく向き合っていきましょう。



マインドフルネス瞑想(メタ認知)
自分の認知行動(思考・理解、感情)をもう一人の自分が「客観的に・冷静に」観察することを「メタ認知」と呼びます。私たちは、意識しないと、つい『ネガティブなこと』『改善点』ばかりに注意が向くクセがありますが、そうしたクセを改善するためにも非常に有効な方法です。

メタ認知の力を育てる方法としては「マインドフルネス瞑想」が代表的です。やり方はとてもシンプルで、床または椅子に姿勢を正して座り、自然な呼吸のペースで意識を呼吸に向けるだけです。ポイントは、最初は無理のない5分程度から始め、毎日続けることです。瞑想の効果はすぐに表れるわけではなく、継続することで徐々に表れてくるものなので最初は5分程度からはじめ、慣れてきたら徐々に時間を長くするのが望ましいです。


マインドフルネス瞑想


組織が取り組むテレワークに合わせたメンタルヘルス対策

テレワーク下でのコミュニケーションづくり

テレワークのようなオンラインが主体となった状況下では、コミュニケーションが希薄化し孤立していると感じる部下がいます。また一方で、上司に常に監視されている感じがする部下もいます。これは直接様子がみえないために、部下のことが心配で頻繁な連絡や報告を求める上司の存在による、上司と部下のすれ違いです。テレワーク下で、お互い気持ちよく仕事をするためにはオフィスワーク時とは異なった点に注意しなければなりません。

上司として部下が心配なのは当然のことです。しかし、連絡をする際には「監視」ではなく「管理」となるように意識してください。日報などで1日の業務報告を行う、定例MTGを開き進捗状況などを確認するなど現在取り組んでいる業務を確認しつつ、サポートが必要かどうかを確認してください。業務の指示をする際には目的や優先順位といった5W1Hを含め具体的に指示をすることでお互いの齟齬を回避できます。上司としては、ボトムアップでチームを作り上げながら、そのサポート・支援を実現していく形でコミュニケーションを強化していきましょう。


心理的安全性を固める職場づくり

心理的安全性とは、ミスやネガティブな発言を批判・罰せられることを恐れず自由に、自発的に発言することができる状態のことです。テレワーク下でコミュニケーションが希薄化したなかで、心理的安全性を高めることで社員は自発的な意見が出しやすくなり、業務状況の把握や、問題への早期介入などが行えるメリットがあります。

心理的安全性を高めるためにはコミュニケーション作りと同様に、部下の業務サポートに重点を置きましょう。1on1でのMTGを定期的に行うことで直接相談でき、親しみやすい関係を築くことができます。また、業務などはツールを積極的に活用して可視化し共有することで社員の状況などを把握でき、円滑なコミュニケーションにつながります。その他に朝の業務開始時や会議前などに15分程度の雑談タイムなどを設けることもチームの社員同士との信頼感の醸成につながります。


心理的安全性


メンタルヘルス教育

職場におけるメンタルヘルスは業務を左右することもあるため、予防・早期発見することが非常に重要です。セミナーや研修の場を設け、社員への「セルフケア」や管理職に向けた「ラインケア」といった教育を行い、社員全員に正しいメンタルヘルスの知識を共有することもまた大切なメンタルヘルス対策です。健全で・生産性の高い組織を目指すために、こころの健康について正しい知識を身につけましょう。


外部と連携する

社内に相談窓口がある場合でも、メンタルヘルスケアの専門家が在籍する外部の機関やサービスを活用している企業も増えています。

社員が心理的問題を相談するのに抵抗が少ないため、職場内での相談を希望しない社員や職場でのメンタルヘルスに関する悩みを外部の専門的な視点からサポートを受けたい時にとても有効です。外部の機関としては、地域保健機関やクリニックなどの医療機関、従業員支援サービス(以下EAP)がありますが、特に従業員の方に対するカウンセリングに関しては外部EAPが効果的です。企業に向けたメンタルヘルスのセミナーなどを行っているEAPもあるので積極的に活用し、メンタルヘルス不調者だけでなく、サポートを行う周辺の社員にも、ケアに関しての多くの学びが期待できます。


まとめ

テレワーク下では、これまでのオフィスワークとは違った部分に注意をしながらメンタルヘルスについての正しい知識を企業全体で共有していきましょう。適切なメンタルヘルスケアの実施については、自分たちだけで無理して取り組まずに産業医や外部機関と連携するなど、専門家の意見を参考にするとよいでしょう。

ピースマインドでは「はたらくをよくする®」EAPやストレスチェックといったソリューションを提供しています。テレワーク下でのメンタルケア対策でお困りの際はお気軽にお問い合わせください。

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出典・参考文献

※1 総務省 令和3年版 情報通信白書 
※2 自宅勤務者のメンタルヘルスの現況 |三菱UFJリサーチ&コンサルティング
※3 コロナ禍における「はたらく人のウェルビーイング」調査レポートを公開~「女性」「20代」「独居者」「非管理職」のストレス悪化傾向の背後に在宅勤務の長期化も~ | ピースマインド株式会社 
※4 総務省 テレワークの動向と課題について
※5 厚生労働省 自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備
※6 【調査分析】with/afterコロナの働き方で求められるストレス対処法とは? ~「感情的な発散」よりも「前向きな思考」が鍵~ | ピースマインド株式会社 

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