seminarr_report_7
 
<セミナー概要>

新型コロナウイルスにより、世界中の人々が仕事や暮らしの大きな変化を迫られています。

当社は、約600人のビジネスパーソンを対象にしたアンケート結果、および日々寄せられているご相談事例から、コロナ禍が働く人、働き方にどのような影響を与えたのかを分析しました。

2020年8月31日、その内容を共有し、これからの時代のよりよい働き方を探るウェブセミナーを、エッセイスト・タレントの小島慶子氏をモデレーターに迎え開催しました。小島氏と当社ワーキングベターラボ所長・臨床心理士の渋谷英雄との対談を通し、即実践できるマネジメントのヒントも見えてきました。

 
<セミナー内容>

・新型コロナウイルス流行に伴う変化

・新型コロナによる心理面への影響についての調査結果

・働き方の変化への対応方法のご紹介(事例紹介)

 
在宅勤務になじむ人多数。ただし雑談不足が問題に

小島:コロナ禍により、ビジネスパーソンのメンタル面にはどのような変化が見られたのでしょうか。

渋谷: 6月中旬に、約600人のビジネスパーソンを対象にストレス度などに関するアンケート調査を行いました。その結果、活気、イライラ感、疲労感、不安感、抑うつ感、またワークエンゲイジメント、仕事満足度などほとんどの項目で、毎日、在宅勤務をしている人のほうが、通勤している人よりもよい状態であると分かりました。
不慣れさにご苦労されることもあるものの、意外とうまく在宅勤務というスタイルになじんでいる人が多いとうかがえます。仕事のコントロールのしやすさについても、在宅勤務のほうが良好です。職場での余分なことにとらわれずに仕事に集中できるようになった方が、多いのではないかと推察します。

seminarr_report_7

【図1 在宅勤務頻度ごとの比較】

 

渋谷: 一方、在宅勤務における困りごとに性差があるか調べたところ、特に20代の女性社員が、仕事のストレスや問題を相談したり話したりする機会が減ったことに困っていると分かりました。

seminarr_report_7

【図2性別と年代ごとの結果】

 

小島:若い女性は対面でのコミュニケーションを通し、コミュニティーに受け入れられているかどうかや、自分の仕事に対する反応を細かく見ているということでしょうか。だからその機会がなくなると不安になる、と。

渋谷:そうだと思います。所属意識や仲間意識を非常に大事にする年代であることの表れともいえそうです。

小島:これはいい学びになりますね。「あなたはこの職場に受け入れられているよ」というメッセージをちょっとずつでも伝えると、若い女性は安心しやすく職場への帰属意識を高めやすいと理解できそうですね。

渋谷:はい。ですからオンラインミーティングの持ち方も、メンバーに応じて少し変えるといいですね。話すことが好きな社員の場合は雑談の時間を持つ、雑談が苦手な社員の場合はその時間を省略して事務的に進めるといった調整が有効だと思います。
ところで在宅勤務になったことで、60代管理職層および、意外にも20代の一般社員層が「業務の指示の伝わりにくさ」に困難を感じていることも分かりました。

seminarr_report_7

【図3職位と年代ごとの結果の比較】

 

小島:中間層の30~50代のコミュニケーションに問題があるということでしょうか。

渋谷:伝える仕組みに問題があるのかもしれません。またデジタルネイティブの若い人たちは、デジタルツールを使ったやりとりが得意だというイメージが先行しているものの、そういう世代が使っているツールと、ビジネスで使うツールとは乖離があるのかもしれないですね。今回浮き彫りになった課題です。

 
評価に関する不安も。安心感を与える言葉かけを!

渋谷:次にコロナ禍関連の相談事例を見ていきましょう。
最も多かったのは、「家庭でうまく仕事ができない」といった在宅勤務のストレス。次いで業務負荷のストレスが見られました。「対面ではうまく指示できていたのにオンラインだとできない」といった、コミュニケーションの問題もここに入ります。
もっと具体的にみると、「ずっとビデオ会議をつけっぱなしにするよう指示されストレスを感じる」とか、「ちょっとしたことを質問できない」などリモートワークにまつわる内容が目立ちました。そして当初は予想していなかったのですが、「自分のパフォーマンスが正しく評価されていないように感じる」という相談が多くありました。また将来不安も多かった。「海外転勤がなくなってしまった」「役職が上がる予定だったのがペンディングになった」など。

小島:リモートの場合は、コミュニケーションの取り方を工夫しないと、部下の方がプレッシャーに感じたり、過干渉に感じてしまったり、反対につながりにくさを感じたりするのかもしれませんね。私はリモートの場合、感情が伝わりやすいように、対面のときよりも少しだけリアクションを大きくしています。

渋谷:とてもいいですね。職場に通勤していれば会議でもめたとしても、その後に上司が笑顔だとほっとできます。在宅勤務だとそういうシーンがないので、これでよかったのか悪かったのか部下は分からず不安を引きずってしまいます。それが「自分のパフォーマンスが正しく評価されていないのではないか」という不安にもつながると考えられます。
したがって、別れ際や会議の終わり際は、ちょっと大げさに「ありがとう」などと表現し、部下がほっとできるようなメッセージを伝えていく必要がありますね。将来不安に関しても、できるだけこまめに会社の方針などの情報を伝える。「落ち着いたら海外転勤のことも話そう」など、希望を持てるような言葉がけができるとなおいいですね。

seminarr_report_7

【図4 コロナ関連相談事例】

 
短く頻回に接点を持ち、部下の状態を「波」でとらえる

小島:在宅勤務になると、上司も部下の様子を把握しづらく不安になると思います。

渋谷:個別のミーティングを頻回にすることが効果的だと感じます。長時間だとお互いに負担なので、5分程度でいいでしょう。システム化することが勧められます。

小島:他方で、在宅勤務になって長時間労働が増えたとも言われます。セミナーの参加者から事前に寄せられた質問にも、どうしても働き過ぎてしまうというご相談がありました。

渋谷:通勤がないとオンオフの切り替えが難しく気が休まらないというご相談は、多く寄せられています。まずは呼吸法やリラクゼーション法で体をオフにするなど、工夫する必要があると思います。ただ自分自身ではコントロールしづらいので、上司が社員にそういうことをサジェストする必要があると思いますよ。

小島:参加者からは、「コロナ禍で入社した社員に対する対応方法について教えてください」という質問もありました。

渋谷:職場の先輩を、何でも相談できるメンターとして付けてうまくいっている企業さんもあります。オンラインで新入社員歓迎会やランチ会を開催されている会社さんは非常に多いですね。できるだけ新入社員本人に話してもらう機会を設けるといいですね。

小島:「メンタル不調により休職経験のある部下に対して、在宅勤務中、どのように接することが適切なのでしょうか。その部下は、孤立したくない気持ちが強い。がんばりすぎてしまうところがあります」という質問もありました。その相談と関係しますが、周囲の反応を気にしながら自宅で1人で仕事をしていると、自分はやがてクビになるんじゃないかなど、ネガティブな想像が膨らんでしまうと思います。どうマネージしていけばいいでしょうか。

渋谷:企業トップが、プラスの未来像をきちんと提示している企業様は、社員の方々も前向きに働いているように感じられます。トップメッセージは大切ですね。
孤立感に関しては、やはり短時間でも頻繁に話す場を持つようにすることが有効です。ただ、ご相談のように、ご本人が孤立していると思い込んでいるとか、メンタルの不調が心配だという場合は、私たちのような専門機関とつないでいただくことが一番の近道です。

小島:オンライン上のやりとりの中で、「この人にはカウンセリングが必要ではないか」という兆候をつかむのは難しいのではないでしょうか。

渋谷:その時々の受け答えではなく、波として変化を捉えることが大事だと思います。「最近、どう?元気?」と聞いて、「普通ですよ」といっていた人が、「いや、まあ」と口ごもるようになったら、おかしいな、と。それができるのは直属の上司だと思います。メンタルの波はパフォーマンスの波に現れるので、パフォーマンスの変化を見ると分かりやすいかもしれませんね。

小島:専門家につなぐには、どのような言葉がけをすればいいでしょうか。

渋谷:「相談できる制度や機関があるから活用して欲しい」と、ご本人に明確に伝えること。遠回しに言わないほうがいいと思います。

小島:普段から会議をしているときなどに、「こういう時期だから不調を感じたときには、早めにカウンセリングを受けるのはいい方法だ」とメンションしておくのも有効でしょうか。これから寒くなるから風邪をひかないように、というのと同じようなノリで(笑)。

渋谷:すごくいいと思います。「また上司が言ってるわ」と思われるくらいがちょうどいいですね。
今回のコロナ禍は非常に大きな災害であり、影響は長く続くと思います。弊社としては今後も調査を続け、必要なサポートを提供する仕組みを作っていきたいと思います。

 

お問い合わせ