職場のハラスメント事案にどう対処すべきか? フォローアップと予防のポイント

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2020年4月に企業のパワハラ防止の義務化が予定されています。ハラスメントは当事者間の個人的な問題であると同時に組織課題として対処すべき問題であり、企業の命運を左右するリスクマネジメントの問題でもあります。
 
2019年8月27日(火)に開催したセミナー「『あぁ、ついにあの部長への訴えがあがってしまった!』起きてしまったハラスメント事案への対処法」では、弊社における豊富な対応事例や予防・再発防止策について、講師の吉野(ピースマインド株式会社 組織ソリューション部 EAPエグゼクティブコンサルタント)からお伝えいたしました。
 
講師紹介
吉野 学(よしの まなぶ)
ピースマインド株式会社 事業推進室 兼 組織ソリューション部コンサルタント/公認心理師 臨床心理士
大手不動産デベロッパーで長年経営企画業務を担当。ヘルスケア事業の立上げに携わったことを契機にメンタルヘルスケア業界に転身。経営コンサルティングファームにて医療機関の経営再建に従事したのちに、ピースマインド株式会社に入社。営業部長を経て、現職。100社を超える企業に対して職場改善支援を実施。
 
セミナー当日は、以下の内容をお伝え致しました。
 

0. 職場でますます注目されるハラスメント

1. ハラスメントが職場にもたらすダメージとは?

2. 発生してしまったらどうすればよいか? -フォローアップのポイントと対策例-

3. 起きないようにするにはどうすればよいのか? -予防のポイントと対策例-

4. どう備えればよいのか? -備えのポイントと対策例-

5. ハラスメント対応を支援するサービスのご案内

6. 質疑応答

 
今回のレポートでは、参加者の関心が特に高かった以下2つのテーマについてハイライトでお送りします。
・発生してしまったらどうすればよいか? -フォローアップのポイントと対策例-
・起きないようにするにはどうすればよいのか? -予防のポイントと対策例-
 
発生してしまったらどうすればよいのか? -フォローアップのポイントと対策例-
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ハラスメントが発生してしまったときのフォローアップのポイント4つについて、弊社がお客様をご支援した事例をもとにご紹介しました。
 
1. 方針・目標・戦略などの協議、決定
事案が発生した時に「何をしなければならないのか、誰が対応しなければならないか、どんな体制でどういう風に知王しなければならないか」について、早々に整備することの重要性をお伝えしました。

吉野:先ず法的な対応について顧問弁護士の先生へ相談するのはもちろんですが、同時に、会社関係者の皆さまで、とにかく早いタイミングで方針・目標・戦略等について協議・決定をする必要があります。情報を進める上では、法律の専門家や事案に関わったことがある弊社のような専門家をメンバーに加えていただくと効率的に動けるのではないかと考えています。

 

吉野:一番重要な視点は、企業にとってのダメージをいかに最小限にとどめるかということです。コンプライアンスや紛争・裁判に目が行くことが多いですが、仕事・会社・組織のパフォーマンスをいかに落とさないように維持するかについて意識を持って取り組むことが重要だと思います。

 
2. 相談者(被害者)に対する心理的支援
相談者(ハラスメントを受けた方)のケアも、非常に優先順位が高くなります。ハラスメント被害によって、メンタルヘルスの不調やより深刻な状態に繋がることも考えられます。ここでは、弊社が介入した相談者(被害者)に対するカウンセリングの事例をご紹介しました。

吉野:上司からの度重なるパワハラによって身体症状が発現し、医療的診断も出て休職された方がいらっしゃいました。医療的診断も出ていましたので、相談者の方が職場で働ける状態まで回復するということをゴールに設定しました。具体的な支援として、主治医と連携したうえでカウンセリングにより治療の側方支援を行いました。また、相談者の経過をウォッチしてご本人承諾の上で会社の関係者と連携しました。

 

吉野:ハラスメント行為をした上司は懲戒処分が決まっていましたが、相談者の気持ちが収まっていない状態でした。このままでは紛争かする可能性があったため、会社としてもその状況を円満に収めるという課題も抱えていました。そこで弊社が介入し、ご本人の気持ちをできる限り受け止めて、感情の発散の出口を「紛争」にもっていくのではなく、ご本人の今後の働き方や職場でのパフォーマンスをどのように回復していくかという「建設的な方向」に焦点を合わせてプランニングをしました。

関係者間で目標を明確にして足踏みの揃った一貫したサポートとご本人の気持ちや感情をしっかりと受け止めた丁寧な対応の結果、幸いにして紛争までに至らない円満な帰結となりました。

 
3. 相談者(被害者の職場)、周辺社員への教育・支援
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ハラスメントの被害者は心身や仕事、生活に深刻な影響を受けていますが、周囲の方々も様々な影響を被っているケースが見受けられます。職場のパフォーマンス維持の視点から、ハラスメントが起こった職場の周辺社員へのケアも優先順位が高くなります。

吉野:職場のパフォーマンスを維持するために、周辺の社員の方のサポートも非常に重要になってきます。周辺の社員へのご支援として、ハラスメントの実態を把握するための1on1のヒアリングが効果的だと考えています。ヒアリングを通して職場の実態やリスクを把握するだけでなく、場合によってはその方の心理的な状況等をアセスメントすることにより個別のリスクを早期に発見できるからです。

 

吉野:1on1のヒアリングを行うきっかけとして、ストレスチェックの結果を活用することも一つの方法です。ハラスメントが疑われるような組織があれば、ストレスチェックの結果データをもとにして1on1のヒアリングに繋げていくことができます。

 

吉野:周辺の社員へのヒアリング結果とストレスチェックの集団分析結果に基づいて、職場改善施策の提案を行うケースもあります。大義名分として職場改善施策と掲げることで、相談者への心理的支援やハラッサー(ハラスメントの行為者)へのコーチングなど個別性の高い課題へのアプローチも採りやすくなります。どこか一つのパーツだけではなく、パーツを組み合わせて総合的に支援を行うことで効果が高まると思います。

 
4. 行為者(ハラッサー)に対する行動変容支援
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ハラスメントしてしまった方(ハラッサー)への対応について、配置転換をするだけでよいか相談を受けるケースもあります。ハラッサーの中には仕事で成果を発揮している方も多く、その能力を維持して欲しいが、ハラスメント行為はやめてほしいという課題をお持ちの企業もいらっしゃるのではないでしょうか。
 

吉野:ハラッサーには問題行動についてご本人に気づいていただき、行動を変えていただくことが重要です。一方でハラッサーのほとんどが自身の行為について無自覚であり、行動変容を促すことが難しいという実態があります。そのような中で弊社へご相談をいただき、ハラッサーの行動変容のためのコーチングをご要請いただくケースが増えています。

 

吉野:弊社ではハラッサー・コーチングという、コンサルタントによる行動変容コーチングや心理サポートの取組みを行っています。ハラッサーに問題行動に気づいてもらうために、本人は良かれと思っていても、周囲の方が困っている行動について時間をかけて気づ いていただきます。

 
弊社がご支援させていただいた事例をふまえて、ハラッサーに対する行動変容支援の取組みをご紹介しました。
 

吉野:威圧的なふるまいが多い管理職の方で、誰も逆らえない状態で威圧的な行為がどんどんエスカレートしていった方のケースです。この方に1on1のコーチングを受けていただいたところ、4か月くらいで行動が激変しました。ポイントは、コーチングの前に実施した職場の社員全員からのヒアリング結果のフィードバックと、その受け止め方にありました。ヒアリング結果のフィードバックにより、部下からの生々しい声や職場の状況 をお伝えし、現にある職場の課題やリスクを提示しました。それらについてコンサルタントとともに吟味し、受け止めることができたことにより、自身が何をすれば良いのか理解されたのでしょう。考えて、その通りに行動をダイナミックに変えたのです。ただ頭では理解しても、長年の行動様式を根本的に変えることは至難であり、いつまた基に戻るかという懸念はありました。しかし、職場や社員のパフォーマンスの改善を目的とした場合には、当面の目標はクリアしたと考えられるのではないでしょうか。このように、劇的に行動が変容するというケースはまれかもしれませんが、ハラッサーが現状を受け止め、理解を進めることができれば、職場のパフォーマンを改善するための行動の変容を促すことは充分に可能なのです。

 

吉野:ただその一方で、一般的にハラスメントのコーチングをして行動が変容する方は、半分いるかいないかです。行動を変えられる方もいれば、最後まで行為を認めることすらしない方もいます。「私はそういうつもりで言っていない。」というループから抜けられない、半年経っても話が通じない方もいらっしゃいます。

 

吉野:ご本人は良かれと思ってやっている、その気持ちを受け止めてる必要があります。素晴らしいこと、熱心なことは受け止める。感情をしっかり受け止めながら、それをどのような行動で示していくかを共に考えていくことがコーチングのポイントだと思っています。

 

吉野:問題行動の改善には、ご本人が腹を決めて取り組むための会社の枠組みや強い動機づけがとても重要です。例えば、すごく仕事ができる方でしたら「あなたは行動変容しないと、このポジションに留まることができませんよ。」などとご本人に生じるリスクをお伝えします。

 
パワハラ防止の法制化に伴い何をすべきか、ということにも多くの方が関心をお持ちです。厚生労働省のホームページでは、予防と解決の2つのステップに分けて整備するように記載されています。今回は予防・備えとして何をすべきかをご説明しました。
 
起きないようにするにはどうすればよいのか? -予防のポイントと対策例-
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予防のポイントとして、最初にハラスメントの認識・教育の徹底についてご説明しました。
 

吉野:ハラスメントに関する認識 ・教育では、もちろん一般的な 教育研修も重要ですが、e-learningのような簡易な方法を取られていることもあります。集合研修をやってみても、なかなかハラスメントの件数が減らない、職場環境として集合研修を実施することが難しい、そういった中でe-learningによる教育を選択される企業も増えてきているようです。

 

吉野:社員の方に認識をもってもらうために最も重要と思われるのは、経営トップからのメッセージだと思います。
ハラスメントに対して、会社がどのように取組もうとしているか明確 に打ち出す必要があります。例えば、経営トップから「明日からハラスメントを0にする」と明言するなど、明確な方針表明がされないと、社内で徹底することは難しいでしょう。また、トップだけでなく経営層の方々全員にどう意識づけるかとういうことも非常に需要です。社員は経営層の方々の行動をしっかり見ていますから。

 

吉野:一般社員の認識 ・教育の徹底では、e-learningや集合研修の他に、パンフレットやマニュアルの整備があります。出来る限り目につく位置にポスターなどを貼って、日ごろからの意識づけが重要です。

 
次にコミュニケーションスキルや、早期発見・早期対応の仕組みづくりについてお話しました。
 

吉野:コミュニケーションスキルを学ぶことも重要です。ハラスメントの予防につながるスキルで代表的なものに、アンガーマネジメントとアサーションがあります。

 

吉野:アンガーマネジメントは文字通りだと「怒りをコントロールする」ということになりすが、この意味においては皆さんコントロールできていると思っておられます。でも、実際はコントロールされているはずの言動が、周囲の方から見ると怒っているように見えてしまうところに問題があります。そうした自分の認識と他者の認識のギャップに気づいていただくことも、アンガーマネジメントの目的の一つです。

 

吉野:リスクを早期発見するには、相談窓口の設置が有効です。ここで重要なことは、単に事案が発生した後の相談を受けるだけではなく、事案化する前の相談を受けることです。一般的には、事案化後の相談より事案化する前の相談のほうが数倍あるようです。事案化する前の相談を受ける窓口を設置することが早期発見による事案化の未然防止への近道といえるかもしれません。

 

吉野:相談窓口の利用の敷居を低くするために、窓口を社内と社外に分けて設置するが有効です。例えば、コンプライアンス部門の方には社内の通報窓口を担っていただき、私たちのような外部機関が社外窓口の役割を担うことで、相談窓口は利用しやすくなります。あるいは、事案化後の通報は社内で、事案化前の相談は社外へと役割分担することでコンプライアンス部門の方の業務負担の軽減にもつながります。
ただし、リスクが高い内容については、社内外で連携して対応出来るようにしておくことが有効です。連携をして対応する際には、ご本人の承諾を得るというプロセスが非常に重要です。リスクが高く、そのことを会社に知っていただいた方が解決につながるというケースでは、ご本人の承諾を得るために工夫が必要です。

 
ご参加者の感想ハイライト
今回のセミナーでは、職場でのハラスメント事案への対策や予防・再発防止策について、弊社での対応事例を踏まえてお伝えさせていただきました。
セミナーに参加された方からは、以下のようなご感想をいただきました。
 
「事例を交えて具体的にお話いただき、大変参考になりました。」
「発生後のフォローアップのポイントとして、パフォーマンスの維持という考え方は、今まで発想がなく、とても新鮮でした。」
「社内ではハラスメント防止の研修、規定の整備、外部通報窓口の設置を始めていますが、今後はコミュニケーションスキルなどの研修にも取り組んでいきたいです。」
 
弊社では今後もハラスメント防止に関する研修の開催を予定しています。職場でハラスメント対策に取組まれている、経営者・経営幹部、人事・労務ご担当者様のご参加をお待ちしております。

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