新型コロナウイルス問題の長期化で、私たちの心理状態にどのような変化が起きているか。

harassment_measures1

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大への不安、在宅ワークや休校、外出自粛など、これまでと異なる生活リズムが続く中、疲れを感じている方も多いのではないでしょうか。最近は、インターネット上でコロナ疲れという言葉を目にすることもあります。

 

<臨床心理士プロフィール>

後藤 麻友(ピースマインド株式会社 コンサルティング部 統括マネージャー兼スーパーバイザー)公認心理師、臨床心理士、国際EAP協会認定 国際EAPコンサルタント

武田 英彦(ピースマインド株式会社 コンサルティング部 EAPコンサルタント)公認心理師、臨床心理士、国際EAPコンサルタント

渋谷 英雄(ピースマインド株式会社 ウェルビーイングラボ 所長)公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会 臨床心理士、公認心理師、国際EAP協会認定 国際EAPコンサルタント、日本スポーツ協会「公認スポーツ指導者」コーチ

 

・ 新型コロナウイルス問題の長期化により、ルーティンを崩されている

・ 対岸の火事から、自分事化した新型コロナウイルス問題

・ コロナブルーやメンタルブローなど、疲弊感や心理状態に名前をつける

・ ポジティブな面を見出したり、現実と想像を分けて整理することで対策する

・ 最後に


新型コロナウイルス問題の長期化により、ルーティンを崩されいてる

 

武田
新型コロナウイルス感染症の拡大が続き、長期化の不安がありますが、多くの人は緊張状態のピークが続かないで、どこかで緩みが出てきます。その影響として、先日の3連休は外出した人が多かったのではないかと感じています。

私が担当している企業様でも、1ヶ月近く在宅ワークが続き、社員に在宅勤務による疲れが出てきているようです。在宅ワークで一斉に全員が作業するため、ネットが重くなり作業が進まないことや、外出自粛による運動不足など、普段の生活リズムが変わった状況が続くことがストレスの要因になっていると思います。会社に行きたいという社員も出てきているそうです。

人事のご担当者が心配していることは、新型コロナウイルスの問題が終焉して通常勤務に戻ったとき、以前のように社員が元気に働けるかということです。

在宅ワークにより、通勤ストレスがなくなることは一次的には良いことだと思います。ただし、在宅ワークが1ヶ月も続いた後、以前のように通勤するとなると負荷がかかりそうです。また在宅ワークでの業務には限界もあって、オフィスでの通常勤務に戻ると仕事が溜まっている状況も予想されます。
通常勤務に戻ったときに、通勤ストレスや仕事の負荷など、環境の変化が一気に生じたときに、働く人へのストレスが増しそうなことが気になります。

 

後藤
私たちには、朝起きて、朝食をとって、電車に乗って、会社に行ってといったルーティーンがあります。ところが、今はルーティンを変えざるを得ない状態です。1週間以上いつもと違う生活を送って、また元の生活に戻るとなると、それなりに負荷がかかります。
あくまでも一例ですが、病気やケガで休職した方が、職場復帰するときと同じような感じでしょうか。休職した方は、混雑した電車に乗って通勤することに慣れることから始まります。

 

武田
休職からの復帰で難しい部分は、精神面や体調面の問題もありますが、ルーティーンを取り戻すことです。休職中は決められた時間に何かをやったり、どこかに行ったりする機会が少なくなります。ルーティンを繰り返しているときの健康状態は、割りと良かったりします。

対岸の火事から、自分事化した新型コロナウイルス問題

 

後藤
大型クルーズ船内での新型コロナウイルスへの集団感染について、2月に報道がはじまった頃から、コロナ関連の相談が少しずつ入ってくるようになりました。すべての小中学校や高校などに対して、政府が3月からの休校要請を出した直後、相談が増えることそれほどありませんでした。しかし、3月下旬の連休頃から、明らかに相談が増え始めました。

このように、出来事と反応にタイムラグが生じる原因は、自分事として捉えるタイミングが影響しているように思いました。

多くの人々の生活に、影響を及ぼす出来事として思い出されるのは、東日本大震災です。このときは、震災直後から先々への漠然とした不安、気分の落ち込み、めまい、また企業からは従業員の方へのクライシスケア(災害、事故等の緊急心理支援)に関する相談など、多くの問い合わせがありました。

震災では、多くの人が実際に体が揺れる、めまいが続く、といった身体的感覚を伴う体験を味わいました。当時、被災状況が繰り返し報道され、家でテレビ番組を観る機会の多い人に、不安や抑うつ的症状を訴える人が多くいることも話題になりました。実際に被害に遭わなくても、あたかも自分の身に起こったかのようなリアルな疑似体験が、繰り返し生じていたものと考えられます。つまり、多くの人が自分事としてこの震災を捉えていたことがわかります。

一方で新型コロナウイルスは、当初は「本日の感染者は〇名」といった匿名性の高い報道で、疑似体験するような具体的な情報が乏しく、対岸の火事ではないですが、問題を客観的に見ているようなところがありました。とはいうものの、心配だからと外出を控えたり、隣に座る人の咳に怯えたりと、ちょっとした不安や緊張が続いて、実は長期間に渡りじわじわと疲労が蓄積していたはずです。

そこにきて、日を追うごとに深刻さを増し、外出や営業の自粛要請により、多くの人々の日常生活に大きな影響が生じるようになりました。さらに、志村けんさんのような有名な方が亡くなったことで、誰もがこの問題を自分事と感じるようになったでしょう。

低温やけどのようにこれまで気付きにくかった疲労や不安への反応も、加速的に変化していくでしょう。

 

武田
誰にでも不安な気持ちはありますが、不安感がだんだん変化していきます。自分が知る人に感染した人がいない状況から、間接的な知り合いや有名人が感染したりすることで、問題が身近となって不安感が増してきます。